「偏愛相乗化社会」とは? オカムラが4つのキーワードで提案する、2026年の働き方トレンド
オカムラ(神奈川県横浜市)は12月12日、日本国内の働き方に関する最新の潮流をまとめた「はたらき方のトレンド2026」を公表した。
同社は、未来の働き方をどのように見据えているのか。同リポートでは、同社ワークデザイン研究所が行ってきた調査・研究と社会情勢を基に、企業の経営課題を働く場から解決するための視点が提示されている。
2026年の働き方を読み解くキーワードとして掲げたのが「偏愛相乗化社会」だ。この概念を軸に、4つの視点から働き方のトレンドを分析している。
偏愛と相乗が生む新しい働き方「偏愛相乗化社会」
オカムラは、2026年の「はたらく」を考えるキーワードとして「偏愛相乗化社会」という概念を提示している。この言葉は、特定の対象に強く惹(ひ)かれこだわりを持つ「偏愛」と、その思いを他者と共有し、掛け合わせることで生まれる「相乗効果」の2つの要素で構成されている。
かつて「偏愛」は「かたよった愛情」として否定的に捉えられることもあったが、近年では「全身全霊で好きなものに打ち込む姿勢」としてポジティブに再評価されている。たとえば「推し活」に象徴されるように、強いこだわりが人の行動を突き動かす原動力となっていることがうかがえる。同社の調査では、推し活をしているときのテンションは、普段の仕事時と比べて平均で27.4倍高まるという結果が得られている。
オカムラは、こうした偏愛は働く場にも存在していると捉えている。道具へのこだわりや、理想とする仕事の進め方、ともに働きたい人、自分が果たしたい役割など、一見当たり前に思えることの中にも個々人の強い想いが込められているという。
さらに、個人の偏愛が集まるだけでは十分な成果を得られない。それぞれのこだわりや情熱をいかに結びつけ、相乗効果を生み出していくかが今後の企業にとって重要になる。同社の調査では、「自分の仕事に対するこだわりを他者と共有することで、よりよい仕事につながると思う」と回答した人が7割近くにのぼった。
こうした背景から、オカムラは個々の情熱やこだわり(偏愛)を起点とし、それを他者と結びつけて増幅させることで新たな価値を生む「偏愛相乗化社会」こそが、これからの働き方の鍵になると考えている。
4つのキーワード 「偏愛相乗化社会」を形づくる視点とは
オカムラでは、2026年の働き方のトレンドを考えるにあたり、はたらき方の4つの主要な視点である「成長」「健康」「組織」「効率」に「偏愛相乗化社会」の概念を掛け合わせ、4つのキーワードを抽出している。以下では、それぞれのキーワードが示す具体的な考え方や背景を紹介する。
越境学習 組織を越え、こだわりを強みに変える学び
「成長」のカテゴリーでは、「越境学習」というキーワードが選定されている。偏愛を相乗させることを念頭に、以下のような行動が重視されている。
・異分野に飛び込む
・こだわりを強化する
同社は、2025年を「ナレッジブローカー元年」と位置付けた。ナレッジブローカーとは、企業や組織の間に立ち、知識や経験を橋渡しする存在である。2026年は「人」から「行動」に視点を移し、越境学習の実践が重視されるという。
越境は、個人が「偏愛」を軸に自発的に行うことでこそ意味を持つ。興味関心に基づいて新しい領域に飛び込むことで、情熱が高まり、異なる業界・分野の人々との交流による視野の拡大も期待される。越境によって既存の肩書きや立場がリセットされ、学び直しの機会が得られることも成長を促す要因となる。
感覚多様性 働く場を「好みに合わせる」発想
「健康」のカテゴリーに対応するキーワードは「感覚多様性」である。同社は「一人ひとりの五感に焦点を当てる」という考えをこの言葉に込めている。注目されているのは以下のような視点だ。
・好みに合った環境の選択
・オフィスにおける「居場所」づくり
同社の調査によると、感覚が敏感だと感じる人の約8割が、「環境が自分の好みに合わないことが作業に影響を与える」と回答している。
明るさ、音、温度といった感覚的な快・不快には個人差があり、その日の気分や時間帯でも変化する。こうした多様性に配慮した空間づくりがオフィスにも求められており、自動調整が可能な環境技術の実用化も進みつつあるという。
スキルベース 偏愛が組織を強くする
「組織」のカテゴリーでは、「スキルベース」がキーワードとして掲げられている。
スキルベースとは、従業員一人ひとりの持つスキルを可視化し、職種や職階といった枠組みにとらわれずに、業務やプロジェクトに柔軟にアサインしていく考え方である。ジョブ型雇用が「職務」に適した人材を外部から採用するアプローチであるのに対し、スキルベースは「人の能力」に着目し、社内の既存人材の可能性を引き出す点に特徴がある。
この考え方は、次のような視点に基づいている。
・個人の強みを共有する
・個と組織をともに成長させる
日本では依然として、学歴や年齢などの形式的な要素が人材評価に影響を与える傾向がある。しかしオカムラは、実力に基づく評価や、スキルの開示・共有による組織全体の活性化が重要だとする。特に、個人の偏愛に根ざしたスキルや関心を組織内で可視化し、それらを結びつけていくことで、新たな価値を創出する相乗効果が期待できる。
同社の調査では、「社内他部門との交流の機会を増やす」が、スキルを結び付けるために有効な施策として最も多く挙げられている。
こうした部門間の連携を通じて、日常的なコミュニケーションが促進され、結果として組織の創造性や柔軟性の向上にもつながると考えられている。
パートナーAI 「相棒」としてともに働く存在へ
「効率」のカテゴリーでは、「パートナーAI」がキーワードに選ばれている。AIと人間が協働し、互いの強みを引き出すという視点である。
・AIを「相棒」として協働する
・お互いの強みを生かし、創造性を高める
AIはその知識量や判断スピードにおいて人間を超える領域に達しつつあり、オカムラはそれを単なる道具ではなく「一緒に成長する存在」として位置付けている。テキストベースから会話ベースへ、AIとの関係も進化しつつあるという。
個別のユーザーと対話しながら成長していくAIとの関係性は、今後の仕事において、人間同士のコミュニケーションと並ぶ重要な要素になると考えられている。
2026年に向けた「偏愛相乗化社会」の処方箋
オカムラが提唱する「偏愛相乗化社会」は、個人のこだわりや情熱(偏愛)を出発点とし、それらを他者と結びつけて組織全体で生かすというアプローチである。単なる個人主義や効率化とは異なり、内発的な動機を尊重しながら、相互作用によって価値を高めていくという思想が基盤にある。
本リポートでは、その概念を具体化するものとして、「越境学習」「感覚多様性」「スキルベース」「パートナーAI」の4つのキーワードが提示された。いずれも、従来の枠組みや評価軸にとらわれず、個人が自らの偏愛を起点に周囲と協働し、より高い成果を生み出す働き方を後押しするものである。
これらの視点は、人的資本経営や多様性の尊重、働き方の個別最適化といった近年のテーマとも重なり合う。同社は、2026年に向けてこうした潮流が一層重要になると見ており、「偏愛相乗化社会」というキーワードを通じて、個人と組織がともに成長していく未来像を提示している。
「はたらき方のトレンド2026」はオカムラの公式サイトからダウンロード可能。詳細は同社のリリースで確認できる。