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「居住サポート住宅」は通常の賃貸住宅と何が違うのか。日本で2番目に認定を受けた大家にリアルを聞いてきた

LIFULL

はじめに

今回、お話を伺った、まごころアパート松葉台

居住サポート住宅と通常の賃貸住宅は、一体何が違うのだろうか。実際に居住サポート住宅の認定を受けた大家に話を聞いた。

2025年10月、住宅セーフティネット法の改正に伴い、新たな認定制度“居住サポート住宅”が開始した。高齢者の住まい探しにおいて、「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などの施設は窮屈そうだ。しかし、普通の賃貸では万が一の際が不安だ」という声は絶えない。その「間」を埋める存在として期待されているのが、この居住サポート住宅である。

今回は、日本で2番目に、関東圏では第1号の居住サポート住宅認定を受けた「まごころアパート松葉台」の大家である平川健司氏に、高齢者の賃貸仲介を行うR65不動産の私、山本が話を聞いた。

そもそも「居住サポート住宅」とは

居住サポート住宅(正式名称:居住安定援助賃貸住宅)は、高齢者、障がい者、低所得者などの住宅確保要配慮者に対し、居住支援法人と連携した賃貸人が日常的な見守り、安否確認、福祉サービスへの連携などを提供し、安心して暮らせる環境を整えた認定賃貸住宅制度だ。

不動産会社の目線で特徴を挙げると、以下の3点に集約される。

・安心の設計: 暮らしの変化を前提にした運用
・連携の仕組み: 大家1人で抱え込まない“居住支援法人”との連携が前提
・補助金の活用: 築古物件の利活用を後押しする国の支援

まず、賃貸住宅やサ高住と何が違うのかを整理したい。
賃貸住宅との決定的な違いは、住宅確保要配慮者の入居が前提となっている点だ。そのため、高齢者や障がい者が入居する場合の段差解消や手すり設置など、ハード面での改修が必要となる。

それだけ聞くとサ高住と同じようにも見えるが、居住サポート住宅は“支援の担い手が居住支援法人である”という点も大きな特徴だ。もちろん介護が必要になれば訪問介護等のサービスを受けられるが、居住支援法人はその手前、あるいは介護導入後も発生する「身寄りがないため、死後の残置物を代わりに処分してほしい」「日常の見守りなど生活支援をしてほしい」といった困りごとに対応する。居住サポート住宅は、こうした法人との連携が大前提の住宅なのだ。

補助金の活用

居住サポート住宅は、新築だけでなく既存物件の改修にも補助金が出ることが大きな特徴である。市街地の既存建物は、さまざまな理由から建て替えが難しい。しかし、築年数の経過したアパートなどで「1室だけ長期間空いているため、住宅に困っている方に貸したい」といったニーズは存在する。こうした築古物件に対して補助金が出ることは、大家が住宅確保に困っている方に貸し出すための強いインセンティブとなる。

【関連リンク】高齢の1人暮らしも安心?!国が始めた「居住サポート住宅」とは?

ここからは、実際に居住サポート住宅を登録し、提供を開始した大家である平川健司氏の声を詳しく紹介する。

1. なぜ居住サポート住宅として登録したのか:“施設”と“自宅”の間にこぼれ落ちるニーズ

キッチンは、部屋にあるが、安全を考えたIHコンロ。二口コンロ以上が、料理好きには嬉しい。

平川氏がこの事業を始めたきっかけは、本業であるMIKAWAYA21(ミカワヤ21)を通じて接するシニアたちの切実な願いだった。

「サ高住は立派な施設ですが、ご本人が望む暮らしとズレることが多い。一方で自宅は老朽化や独居の不安がつきまといます。自宅と同じくらいの金額感で、サポートを受けながら自由に暮らせる“第3の選択肢”が必要だと感じました」(平川氏)

データもそれを裏付けている。R65不動産の直近の引越し実績を見ても、賃貸へ転居した65歳以上の4人に1人が、元々は持ち家を所有していた。家が広すぎて管理しきれない、階段の上り下りが辛いといった“住まいじまい”のニーズは確実に増えているが、その後の受け皿が施設か一般賃貸の二択になっているのが現状だ。

2. 実務の壁:行政連携と「鶏と卵」のジレンマ

まごころアパート松葉台は、新築棟・リノベーション棟の2棟からなる。

認定を受けるまでの道のりは決して平坦ではなかった。平川氏は、初期のハードルとして“地域連携のタイミング”を挙げる。

・地域福祉との連携: 認定には居住支援法人や地域福祉との連携が必須。
・ジレンマ: 行政や福祉側は「建物が完成してイメージが湧かないと連携しにくい」となりがちだが、連携が決まらないと認定も進まない。

地域福祉との連携が先か、物件の建築が先か。この判断は非常に難しかったという。今後、居住サポート住宅を取得する際にも、この調整が肝となるだろう。

R65不動産にも同様の相談が寄せられる。例えば、同社が提供する見守りサービスで居住サポート住宅の要件を適用できるかという確認だ。ある自治体では問題なしとされたが、自治体ごとにルールが異なり、認定事例がない地域も多いため、明確な答えがないのが現状である。

平川氏がこのジレンマを突破できたのは、MIKAWAYA21を通じて施設建築に精通した建築会社を知っていたことと、シニア支援に強い居住支援法人「あんど」などとの早期連携があったからだ。
[注釈] 居住支援法人「あんど」とは
住宅確保要配慮者(高齢者など)と大家の間に入り、入居中の見守りや生活支援、緊急時の対応などを専門に行う法人。
また、行政手続きにおいても建築部門と福祉部門の両方が関わるため、自治体側も手探り状態であった。平川氏は自治体と一緒に制度を学習し、議論しながら進めていったと振り返る。「普通の大家なら、心が折れてしまいそうです」と語る通り、福祉と建築の両面にネットワークがあったからこそ、第2号という早いタイミングで認定を得られたのであろう。

3. 設計の葛藤:“限りなく施設”かつ“施設っぽくない”

水回りは二方向から入室可能で、車椅子になっても介護のしやすいデザイン。

ハード面での最大の特徴は、「介護前提の安全性」と「自分らしいデザイン」の両立だ。

施設基準の安全性をアパートに落とし込む


居住サポート住宅の基準を満たすには、手すりの配置、段差の解消、ヒートショック対策としての温熱環境など、施設並みの仕様が求められる。「施設基準での施工経験がある建築会社と組めるかが、コストとクオリティを左右します」と平川氏は指摘する。

一般の建築会社に依頼する場合、高齢者への配慮をゼロから検討しなければならない。段差の高さ、玄関や水回りの動線、避難時の開口部の確保など、課題は山積みだ。平川氏は、施設建築のノウハウを持つパートナーがいたことを「幸運でした」と語る。

「暮らし」を演出するデザインの力


一方で、あまりに白一色の施設然とした空間では、住み替える喜びが薄れてしまう。平川氏は以下の点に配慮したという。

・カラーバリエーション: 既製品をうまく活用し、色彩豊かな空間を創出。
・入居者の余白: 持ち家から持参したお気に入りの家具を置き、暮らしを演出できる設計。
・共有空間: 季節感を感じる中庭を設計。認知症予防の効果も期待。
・適度なつながり: 開口部をあえて目線の高さにし、コミュニケーションのきっかけを作る。

平川氏は特に「いかに施設感を出さないか」というデザインに注力したという。
R65不動産でも多くの大家や不動産会社と接するが、難しいのは「どこまでハードを高齢者に寄せるか」という点だ。本来、私たちは一般の賃貸住宅でも高齢者を受け入れられる社会を目指している。一部の顧客には「過度に高齢者扱いされたくない」というニーズもあり、自由度を奪われることにストレスを感じる人もいるからだ。

大家としては「この段差で生活を続けられるか」と不安になることも多い。同社では、一般賃貸を貸し出す場合は「介護保険の範囲や本人の希望に応じてリフォームを検討しましょう」と伝えている。今回の制度開始により、将来の住み替えリスクに備えて「入居者に合わせて居住サポート住宅化していく」という新たな選択肢が生まれたといえる。

運用のキモ:審査で見立てる「生活の継続性」とコミュニティの再定義

高齢者の入居は、一般的に入居期間が長くなる傾向があるため、審査は慎重に行われる。平川氏の場合、通常の賃貸とは異なる視点で審査を行う。年収や年齢といった属性だけでなく、居住支援法人と連携して以下のポイントを確認する。

・家族との関係性: 万が一の際の協力体制。
・心身の状態: どの程度のサポートがあれば住み続けられるか。
・介護サービスの利用意向: 地域のケアマネジャー等と連携できるか。

単に貸して終わりではなく、「最期までここで暮らせるか」を最初に見立てることが、大家・入居者双方の安心に繋がる。

コミュニティの再定義:「活動」から「役割」へ


平川氏とMIKAWAYA21が、地域の中で役割を持つことを目指している点は非常に印象的だった。まごころアパートが目指すのは、単に高齢者が集まり交流することではない。平川氏が提唱するのは“お仕事コミュニティ”だ。

「見守られるだけの存在ではなく、地域やアパート内で何らかの役割を持ち、社会貢献を通じて喜びを感じていただきます。これが、施設ではない自宅としてのプライドを守る鍵になります」(平川氏)

これからの大家さんに求められる役割

今回の取材を通じて、居住サポート住宅は単なる福祉ではなく、“持続可能な賃貸経営”の一つの解であることが示された。

・大家の役割: 居住支援法人と組み、生活相談の隙間を埋める(まごころサポート等の活用)。
・ビジネス視点: 経済的に持続可能な賃料設定と、居住支援法人の実務コストのバランス。

平川氏は、不動産会社に向けてこう締めくくる。「高齢者へのサービス提供は、もはや社会的義務です。一人で抱え込まず、誰と組むかを決めて、とにかく一歩踏み出すべきです」

なお、MIKAWAYA21では、居住サポート住宅の認定取得サポートも行っている。視察なども受け入れているため、併せて相談してみてはいかがだろうか。

<まごころアパート松葉台の概要(2025年10月認定)>
家賃75,000円+共益費5,000円(9室) / 140,000円+共益費10,000円(1室)
特徴「まごころサポート」による介護保険外の民間生活支援、居住支援法人による専門的サポート
ブランドMIKAWAYA21が提供するシニア向けアパートブランド

【関連リンク】まごころアパート松葉台公式サイト

今回の話を伺い、私たちR65不動産としても居住サポート住宅の普及に向けた取り組みをさらに深めていきたいと感じた。

山本 遼
株式会社R65 代表取締役
山本 遼(株式会社R65 代表取締役) 1990年広島県生まれ。広島大学卒業後、愛媛県の不動産会社に入社。80代での賃貸住宅への入居が困難な現実に直面し、高齢者向け不動産事業の必要性を痛感する。2015年に独立し、2016年に株式会社R65を設立。「いくつになっても、好きな場所に住める社会」を目指し、65歳以上専門の不動産サイト「R65不動産」を運営。

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