太地喜和子、原田芳雄、地井武男、前田吟らとともに劇団俳優座〝花の15期生〟には栗原小巻もいた
◆特集コラム 劇団俳優座80年の役者たち Vol.5◆
2024年2月10日に創立80周年を迎えた「劇団俳優座」。劇団俳優座で活躍した名優たちをクローズアップしてお届けする。第5回は栗原小巻(1945年3月14日~)。
吉永小百合のファンが「サユリスト」と呼ばれたのに対し、栗原小巻ファンは「コマキスト」と呼ばれ当時の男性ファンを二分させた。奇しくも二人は生年月日が一日違いの同年齢である。
父は演出家、児童劇作家の栗原一登。バレリーナをめざした栗原は、1963年東京バレエ学校を卒業すると、表現力の勉強のため俳優座養成所に第15期生として入所した。同期には、太地喜和子、原田芳雄、地井武男、夏八木勲、林隆三、小野武彦、村井國夫、前田吟らがおり、〝花の15期生〟と呼ばれている。
俳優座養成所在籍中にテレビドラマ「虹の設計」でデビューし、67年NHK大河ドラマ「三姉妹」で三女・お雪役で脚光を浴びた。その後の大河ドラマ「樅ノ木は残った」(70)では、悲運の恋人たよを演じ、「新・平家物語」(72)では北条政子役、「黄金の日」(78)にも出演。大河ドラマでは欠かすことのない女優になっていった。
一方、映画女優としても活躍し、『忍ぶ川』(72)では主演の加藤剛の相手役として大胆なシーンを見せ、世のコマキストに衝撃を与えたが、本作で毎日映画コンクール主演女優賞を受賞した。『戦争と人間 第一部 運命の序曲』(70)『戦争と人間 第二部 愛と悲しみの山河』『いのちぼうにふろう』(71)『サンダカン八番娼館 望郷』(74)『八甲田山』(77)などのシリアスな作品の出演も多いが、シリーズ第4作『新・男はつらいよ』(70)、シリーズ第36作『男はつらいよ 柴又より愛をこめて』(85)ではマドンナ役も演じている。
仕事の中心である舞台では、68年に日生劇場でのチェーホフ作『三人姉妹』のイリーナ役で初舞台を踏んだ。71年『そよそよ族の叛乱』で紀伊國屋演劇賞・個人賞を受賞。『ルル』はじめ、千田是也演出作品に多く出演。81年には木村光一演出『ロミオとジュリエット』のジュリエット役で芸術祭賞優秀賞を受賞した。『欲望という名の電車』(95~00)、ミュージカル『マイ・フェア・レディ』など数々の出演作がある。
▲『三文オペラ』『肝っ玉おっ母とその子どもたち』などと並ぶベルトルト・ブレストの代表作と言われる寓話劇『セツアンの善人』。1986年には、千田是也演出、栗原小巻主演で上演された。89年にも同コンビで、劇団俳優座創立45周年記念として上演されている。また、61年には『セチュアンの善人』のタイトルで、市原悦子、井川比佐志、田中邦衛らの出演で上演されている。演出は小沢栄太郎だった。
演劇を通して栗原はロシアとの関係も深く、日ソ合作映画『モスクワわが愛』(74)、『白夜の調べ』(78)、81年ソ連の演出家・アナトーリイ・エーフロスを招いた舞台公演『櫻の園』にも出演。また、中国との関係では、中国残留孤児を題材にした中国映画『乳泉村の子』(91)にも主演、日本中国文化交流協会副会長を現在も務めている。2013年に、50年所属した劇団俳優座を退団した。