ものづくりと交流の拠点・要町のシェア工房『11-1studio』へ。“要長千(かなせん)”で育まれるクラフト文化
町工場が点々と残る要町。その一角の『11-1studio』は、地域に根差したものづくりと交流の拠点。“要長千(かなせん)”で育まれるクラフト文化を牽引(けんいん)するシェア工房は、参加者が考え、調べ、手を動かす“本来のDIY”を実践する。
つくる、つながるみんなの広場。考えながらつくるから楽しい
池袋駅から西へ歩いて15分。雑然とした街並みを抜けて住宅地に差し掛かると、町工場が点々と残る一角にたどり着く。『11-1Studio』も、もともとはオーナーの砂越陽介さんの実家の工場だった。建築設計事務所勤務を経て独立した砂越さんは、この場所を自身の事務所にしようとリノベーションに着手したが、使われなくなった大工道具を前にして、ある種の直感を抱いたという。「設計事務所を兼ねた、ものづくりの空間をつくりたい」と。
当初はキットを使ったワークショップが中心だったが、やがて砂越さん自身が「これでは物足りない」と感じるようになった。そこで始まったのが「プロジェクトシリーズ」だ。参加者と共に調べ、考え、手を動かし、ゼロから何かを作り上げる——本来的なDIYのあり方を追求する試みである。また、街の入り口であり止まり木となるシェアカフェも、各出店者がコンセプトからメニュー、接客スタイルまで、毎回試行錯誤し、形にしている。そのあり方にもまた、DIY的なものを感じるのだと語る。
「一時的な体験ができる場ではなく、文化が残っていく場所にしたい」と砂越さんは語る。町工場の記憶を受け継ぎながら、『11-1Studio』は新しいカルチャーを生み出す実験の場となっている。
要町、東長崎、千川の3エリアを合わせて“要長千(かなせん)”と呼ぶらしい。池袋西側に広がるこのエリアで、クラフト文化が芽吹き始めているのを感じた。
編集部・守利が工房でDIYに挑戦!
まずは採寸。図工の授業を思い出す。
思いのほかけたたましい音がするホールソー。怪我をしないようご注意を。
「ビーカーたて型メガネ&ペンスタンド」ができた! メガネの穴のみ直径55mm、ほかは直径45mmという、編集・守利のしつようなこだわり。「デスクで使うつもりですが、メガネを外す機会は少ないです」。
11-1Studio(じゅういちのいちすたじお)
住所:東京都板橋区南町11-1/営業時間:10:30~18:00(カフェは出店者により異なる)/定休日:原則月~水/アクセス:地下鉄有楽町線・副都心線要町駅から徒歩9分
取材・文=重竹伸之 撮影=逢坂 聡
『散歩の達人』2025年11月号より