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【夏でも旬と遜色ない味を】新潟県佐渡市産の新たな養殖牡蠣、来夏の一般発売目指す

にいがた経済新聞

試食会で提供された牡蠣のかんかん焼き

新潟漁業協同組合で行われた試食会の様子

日曜日に直近の記事をピックアップして再掲載します(編集部)

初回掲載:2024年8月28日

加茂湖漁業協同組合と佐渡水産技術センターでは現在、牡蠣の新たな養殖に取り組んでいる。加茂湖(新潟県佐渡市)で養殖した牡蠣を、冷たい海洋深層水で産卵を抑制、夏場でも旬の冬と遜色ない味を実現する。来年夏にも一般販売を目指すと同時に、研究をさらに進めてコストダウンと生食も目指す。

ぐつぐつと煮立った缶から取り出されたのは、大量の蒸し牡蠣。殻を開ければ真っ白い身が顔を出す。肉厚な身にはしっかりと塩味がついているため、ポン酢などの調味料なしでそのまま食べても美味しい。「牡蠣のミルク感はやや控えめだが、むしろ牡蠣が苦手な人でも食べやすく、万人受けする味」──8月27日、新潟市中央区万代島の新潟漁業協同組合で関係者向けに行われた試食会、参加したバイヤーの一人は、率直に味の感想を語った。

試食会で提供された牡蠣のカンカン焼き

今回試食が行われた「海洋深層水仕込 加熱調理用殻付カキ」は、昨年から研究が行われている新たな養殖牡蠣だ。加茂湖で養殖した牡蠣を、水温4度前後の海洋深層水かけ流しの水槽で保存している。本来牡蠣は夏場に産卵するため、その際に栄養を使い果たし味が落ちるが、この方法によって産卵を抑制し、冬場の実入りのよい状態を保持できる。

「北海道では水温が低く長期間牡蠣を出荷できると聞き、水温を下げれば夏でも産卵が抑制できるのではないかと考えた。また、佐渡は養殖場の近くに深層水施設があり、条件がよかった」と、新潟県水産海洋研究所佐渡水産技術センターの伊藤敏晃センター長は研究開始までの経緯を話す。

昨年から研究を開始。深層水は清浄な一方で、牡蠣の餌となるプランクトンが少ない。保存中に身痩せすることが課題だと想定していたが、研究の結果、8カ月ほど経過してもほとんど身痩せしないことが確認できた。

新潟県水産海洋研究所佐渡水産技術センターの伊藤敏晃センター長

加茂湖漁業協同組合の山本博文代表理事組合長

新たな養殖牡蠣は、来年6月から7月頃からの一般販売を目指す。同時に研究もさらに進め「今年からは採算性を研究する。また、深層水はきれいなので、生食もできないかと研究を進めている。2年間で成果を出したい」(伊藤センター長)という。

加茂湖での従来の養殖牡蠣は、殻付きではない剥き牡蠣で、出荷時期は10月頃から6月まで。加茂湖漁業協同組合の山本博文代表理事組合長は「(従来の)剥き身が終わったあとに、(今回の)新しい養殖牡蠣を出荷したい。夏場にも売れるようになれば漁師の収入アップに繋がる。各組合員がある程度の量を販売できる体制にまで持っていきたい」と期待を語る。

今回の試食に参加したバイヤーの一人、角上魚類ホールディングス株式会社(新潟県長岡市)の木村利博氏は「やはり『佐渡産』として販売できるのは、弊社としてもメリット」だと語る。角上魚類は関東でも人気の店舗、「日本海産の海鮮」として今回の牡蠣への視線は熱い。一方で「現状、加熱調理用のみという点はネック。今後の(生食用の)研究にも期待したい」と話した。

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