とてもポジティブなエネルギーにあふれた作品――冬アニメ『花ざかりの君たちへ』山根綺さん(芦屋瑞稀役)×八代拓さん(佐野泉役)×戸谷菊之介さん(中津秀一役)×梅原裕一郎さん(難波南役)が語る作品の魅力【インタビュー】
中条比紗也先生による名作漫画『花ざかりの君たちへ』が、連載終了から20年を経て待望のTVアニメ化、2026年1月4日(日)より放送中。
憧れの人・佐野泉に会うために、性別を偽って男子校へアメリカから転入した少女・芦屋瑞稀を取り巻く物語は、当時を知るファンはもちろん、初めて本作に触れる世代の心にも新鮮に響いていく。
本作で主人公・芦屋瑞稀を演じる山根綺さん、瑞稀の憧れの存在である佐野泉役の八代拓さん、ムードメーカー的存在の中津秀一役の戸谷菊之介さん、そして穏やかな眼差しで周囲を見守る難波南役の梅原裕一郎さんに役への思い、掛け合いの手応えなどを中心に話を聞いた。
【写真】TVアニメ『花ざかりの君たちへ』を彩る声優陣が語る作品の魅力【インタビュー】
「青春っていいな」改めて気づいた感情の機微
──『花ざかりの君たちへ』という作品について、皆さんはどのような印象を持たれていましたか?
芦屋瑞稀役・山根綺さん(以下、山根):私が最初にこの作品に触れたのは、2007年のドラマ版『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』でした。当時ちょうどリアルタイムで観ていて、クラスでもすごく話題になっていたんです。この作品を観ていないと会話についていけないくらい、本当にみんなが観ている作品でしたね。それから原作漫画も読むようになったんですが、最初はぶっ飛んだ設定だなという印象で(笑)。でも今回、オーディションのお話をいただいて改めて原作を読み返してみたら、当時は気づけなかった感情の機微といいますか。嫉妬や心の高まりなど、心の揺れ動きがこんなにも細かく丁寧に描かれていたんだということに気づいて。「恋っていいな」「青春っていいな」と、改めて感じました。
佐野泉役・八代拓さん(以下、八代):僕も学生の頃から漫画もドラマも有名でしたし、当たり前のように、みんなの共通ワードのように存在する作品でした。その偉大な作品がこの時代にテレビアニメ化されると聞き、純粋にワクワクしましたね。今この時代に改めてこの作品を描くというのは、すごく意味があるなとも思いました。というのも、『花ざかりの君たちへ』が扱っているテーマって、今だからこそより自然に受け取れる部分も多い気がして。そういう意味でも、このタイミングでアニメになること自体がすごく素敵だなと感じました。
実際に自分が佐野泉を演じることになったときは、正直なところ夢のようで。もちろん「受かりたい」という気持ちはありましたけど、まさか自分が、という思いもあって。改めて原作を読み返していく中で、青春のまぶしさだけじゃなくて、登場人物それぞれの心の揺れや成長が丁寧に描かれているなと感じましたし、そのポジティブなエネルギーをちゃんと届けられる作品にしたいなと思いました。
中津秀一役・戸谷菊之介さん(以下、戸谷):僕も当時ドラマ版を観ていて、すごく印象に残っていました。瑞稀が男装して男子校に入るっていう設定自体がインパクトありますし、「頑張れ!」と自然と応援したくなる感じがあって。オーディションのお話をいただいたときは、「え、アニメ化してなかったんだ!」という驚きがまずありましたね。ぜひ中津役に受かりたい!とは思ったのですが、関西弁なんですよね。
自分は関西出身ではないので、テープオーディションのときも自分なりの関西弁で挑んで。もちろんお芝居はしっかりやったつもりでしたが「受かりました」という連絡をいただいたときに「関西弁、大丈夫だったの!?」と(笑)。でも、おかげで気合いも入ったのでありがたいなとも思ったのですが、関西弁に対する不安は第1話のアフレコまでずっと続いていました。
難波南役・梅原裕一郎さん(以下、梅原):僕もドラマ版はリアルタイムで観ていた世代なので、作品の存在自体はずっと知っていました。オーディションのお話をいただいたときも、マネージャーと「どのくらいの年代のキャストになるんだろうね」と。
(年齢感を)合わせたほうが統一感は出るから若い方々が中心になるのかもしれないし、もしかしたら上の年代の方になるかもしれないね、などと話をしていたら、結果的に同世代の方……若い方もいるので同世代と一言で言っていいのか分からないですが、30歳前後の方々が集まっていて。そこに関われたことに、嬉しいなという気持ちがありました。僕としてはオーディションでは何役か受けさせていただいていて、(難波は)そのうちのひとりでした。最終的にこの役に決まったと聞いたときは、まだ座組も知らない状態だったので、どんな方々と掛け合いができるのか楽しみな気持ちがありました。
──皆さんが演じられているキャラクターについての紹介もお願いします。まず瑞稀を演じられる山根さんから。
山根:大人になると、言うか言わないか、やるかやらないかなど、いろいろと考えすぎて、石橋を叩きたくなる瞬間が増えると思うんです。でも瑞稀は、そういう迷いや不安が“一旦”ない子なんです。とりあえずやってみる。ダメだったらその時に考えようという、いわゆる“石橋を叩いて渡る”じゃなくて、まず渡ってみるところからスタートするタイプ。もし橋が壊れたら、そのときに考えればいいっていうスタンスなんです。何か起きたときも全部をポジティブに捉えられる女の子で。
そこは自分とは全然違っていて、瑞稀みたいに生きるのってなかなか難しいと思うんですけど、彼女はそれを全力で生きている。「今この瞬間、自分がどうしたいか」「何をしたいか」にフォーカスしていて、そこがすごく尊敬できるポイントですね。あと、彼女の前向きな行動力のエネルギーが周りの人に伝わって、周りの気持ちや行動まで変えていくところも、すごく素敵だなと思っています。すごくパワーとエネルギーのある子だなって。
──山根さんのお声にもパワーがありますものね。では八代さんはどうでしょうか。
八代:佐野泉の印象は……最初はすごくクールで冷静なキャラクターなのかな、と思っていたんですけど、読めば読むほど印象が変わっていって。思ったことを口にする欲求があまりないだけで、実はものすごくいろんなことを考えているんですよね。周りの人のことも見ているし、人間関係もちゃんと見ている。だから僕の中では「すごく優しい子だな」という印象があります。無愛想に見える瞬間があるかもしれないけど、ふと出てくる言葉とか、手を差し伸べる瞬間とか、ここぞというときに場に入っていけるところとか……そういうことができるのって、やっぱり優しさを持っているからなんだろうなと思っています。ちゃんと人に矢印を向けられる人なんだろうなと。
──子どもっぽい一面も含めて深みのあるキャラクターですよね。
八代:そうですね。特に恋愛に関しては不器用だったりもしますし、そこは可愛いなと思うところでもあります。作品を見ていると感覚が麻痺してきますけど、やっぱりまだ10代なので、実際まだまだ子どもなんですよね。リアリティのある、子どもっぽさを持った魅力ある男の子だと思っています。
──では中津について、戸谷さんご自身はどんなところが魅力だと思いますか?
戸谷:めちゃくちゃ明るい人間ですよね。なんでこんなに明るいんだろう?って考えたときに、最近は「感情がすごく素直に表に出るタイプなんだな」と思うようになりました。文句もすごい言うし、その反面、瑞稀に言葉をかけるときは優しいところもあったりして。思ったことが全部口に出るタイプなんですよね。だからこそ、第1話で瑞稀に突っかかったりもするし、そういう“まっすぐさ”がある。嘘がないというか、すごく誠実な人間だなと思っています。
──人間くささがあるところも魅力的ですよね。一方、ちょっとミステリアスなところもある難波ですが……。
梅原:難波は言動も見た目もキザなので……なんていうんでしょうね。最初はいけ好かない人物と思う人もいるかもしれないんですけど、実際はノリが良かったり、楽しいことが好きだったりするんですよね。男子校という特殊な空間の中で、あれだけのカリスマ性があるのは頷けるというか、頼れるお兄さん的な存在なので。最初の印象よりは全然クセがなく、「本当にいい人なんだろうな」というところが、見ていくうちに徐々に分かってくるんじゃないかなと思います。
現場のチーム感を引っ張っていたのは山根さん
──キャストの皆さん同士の関係性についてもお聞きできればと思います。先ほど、梅原さんが「座組を知ったときの印象」についてお話しされていましたが、実際にそのメンバーがそろったとき、どんな印象でしたか?
梅原:八代くんとはもともと共演も多く、戸谷くんとも以前ご一緒したことがあって。山根さんとは今回が初めてがっつりご一緒する形だったんですけど、そこも含めてすごく楽しみでした。気心が知れている人たちが多くて、「これは楽しく収録が進むんじゃないかな」という期待がありました。
──山根さんはいかがでしょう?
山根:すごく安心感のあるメンバーだったので、私はもう「皆さんについていこう」という気持ちでしたね。ただ、第1話は緊張していたこともあって、たくさん準備をしていったのですが、すぐに「あ、これは一人で頑張るものじゃないな」と思ったんです。皆さんが瑞稀の気持ちを引き出してくれる、そんな感覚がありました。今は「こう演じなきゃ」と固めすぎず、あえて練習もしすぎず、現場で感じたことを大事にしようと思っています。ただひたすら、キャストの皆さんに感謝ですね。
──山根さんの言葉を聞きながら、戸谷さんから「そんなことないですよ」という言葉が出ていました。
戸谷:むしろ山根さんが引っ張ってくれる現場だなと。
山根:えっ!
戸谷:瑞稀の気持ちが強く出るシーンで、山根さんの背中を見て「うわ、すごいな」って思うことが多くて。なんか自然と「自分も頑張らなきゃな」と思わされるんですよね。そういうチーム感を引っ張っていたのは山根さんだったように思います。
山根:泣けますね……(笑)
戸谷:泣ける!?(笑)
八代:僕もそういうイメージでしたね。佐野としては、瑞稀ってやっぱり特別な存在なんですよね。物語が進むにつれて、どうしても目で追ってしまう存在になっていくというか。そういう意味では、山根さんにも、瑞稀にも引っ張られています。座組的に言うと、セリフの物量もあるんでしょうけど、瑞稀、そして中津のふたりが引っ張っていってくれる印象です。そこに対して、梅原さん、福山潤さん(梅田北斗役)たちがパシっと支えてくれる。そのバランスがすごく良いなと感じています。ご本人たちのパーソナルも含めて、なんて素敵なんだろうなって。
山根:現段階ではまだ言えないのですが、今後、すごい演者さんたちがどんどん登場します。そこもぜひ楽しみにしていてほしいです。
──ではお互いのお芝居をご覧になったり、実際に掛け合いをされる中で感じた、それぞれの魅力について教えてください。
戸谷:2話のラストですね。瑞稀が「だから私はここをやめません」と(梅田北斗に対して)宣言する場面が良いなと思いました。
──2話では物語も大きく動きますよね。
戸谷:そうですね。中津が瑞稀のことを好きになってしまうのも2話ですし。
八代:確かに!
山根:あと、瑞稀と佐野がふたりきりになるシーンが結構多いんですよ。そのとき、佐野がセリフを言い終わっても、八代さんがマイク前からすぐに離れずに隣に立っていてくれるんです。本当は、もう自分の出番が終わったらはけてもいいのに、瑞稀が最後の言葉を言い終わるまで、ずっとその場にいてくれて。
八代:それに気づいてくれていたことが嬉しいです。
山根:確かに場面的に、そこで相手がいなくなってしまうと、役者的には一瞬雑念が生まれてしまうんですよね。それを八代さんが分かった上で、その場に残ってくださっているんだろうなって。それに気づいてから「今度から私もやろう!」と思って。佐野が喋るシーンでは、私もはけないでマイク前にいるようにしています。映像作品や舞台のように向かい合って同じ空間に立って芝居をするわけではありませんが、声優の現場にも、言葉以外で通じ合うコミュニケーションが確かにあるんだなと思いました。他の役者のこと、周りの人のことをすごく考えてくださっているんだなと。それが、人のことをよく見ている佐野にピッタリだなって。
──いいお話です。
八代:いや……
戸谷:ガチ照れしている(笑)。
八代:いや、本当にありがたいですね。逆に言うと、僕もそういう空気を感じながら演じられているので、すごく助けられています。自分が逆(瑞稀役)だったら、「喋っているときに、相手役がいなくなってたら嫌だな」って。
山根:本当に、すごく感謝しています。はけることが決して悪いわけではなくて、喋らない場面なのでむしろ(はけるのも)全然ありなんですけど、自分がそういった気遣いを受け取ったことが初めてで。これまで気づいていなかっただけかもしれないんですけど、「お芝居ってこういうことだよな」って。
──すばらしいことですよね。梅原さんは掛け合いについてはいかがでしたか。
梅原:慣れている方が多かったので、僕自身もとてもやりやすかったです。テストでうまくいかなかったときも、その場で言葉を交わさなくても、本番では「ここだ」というところでバシッと噛み合う感覚があって。さきほどのふたりの話もそうですけども、阿吽の呼吸というか。そういうところでの掛け合いができる方が多いんじゃないかなと、個人的には思いましたね。なにより、ギャグからドキドキするシーンまでと幅が広い物語なので、収録中は皆さん楽しそうですね。
──お芝居の幅が広いからこそ、和気あいあいとされている現場といいますか。
戸谷:学校が舞台の物語なので、生徒役、部員役等、いろいろな役の方がいらっしゃって、皆さん楽しそうにやってくださっているのがすごくうれしくって。そういう空気感を読み取ってくださっているんでしょうし、この空気感は間違っていないんだろうなと。それはスタッフさんも含めて、いろいろな方がつくってくださっている空気感ですけども。それも含めていいなと思っています。
関西弁を“楽譜”のように捉える、戸谷菊之介の感性
──戸谷さんは関西弁で意識されたことはありますか?
戸谷:監修を入れてもらっているんです。 プロダクション・タンクの小泉達哉さんという方が、すごく丁寧に指導してくださっているのですが、関西弁に気を取られすぎないようにというのは意識しています。やっていることはお芝居なので、イントネーションに気を取られすぎて、セリフを読んでいるだけにならないようにしないとなと。
──戸谷さんはお笑いがお好きというお話も伺っているのですが、そのあたりは影響していますか?
戸谷:意外とそれが役に立たないというか、むしろ悪い方向に行くこともあって。自分のイメージの関西弁でやってしまうと、それが間違いになってしまうので、今回は本当にほぼゼロから学びました。
──戸谷さんの関西弁、すごく良いなと思っていました。
戸谷:本当に耳が良くて……って冗談ですけども(笑)。
山根:本当に戸谷くん、耳がすっごく良くて。台本の余白に、関西弁のイントネーションのメモを書いているんですよ。うまく説明できないのですが、イントネーションの高さの上下を3列ほどの点で表していて、まるで楽譜のような感じ。それを見たときに、「音楽家なのかな」と。音の捉え方も戸谷くんならではで、すごい感性を持った人だなと思っていました。
八代:(関西弁で)詰まってるの見たことないもんね。
戸谷:ありがとうございます。そんなに褒めてもらえるとは思わず、しかもそこまで見ていただけているとは思わず(笑)、すごく嬉しいです。でも、とはいえミスることもあるのですが……。
山根:制作の方が求める通りのものをピッタリ出しているイメージです。この現場、本当にリテイクが少ないんですよ。本当にプロの現場だなって感じました。
戸谷:いやいや、それは瑞稀に対しても感じています(笑)。あのワード数であのリテイク数の少なさ、マジですごいなと思います。
八代:確かに。めちゃくちゃ喋ってるもんね。
戸谷:ひとりだけ桁が違うっていう。
──アニメイトタイムズでは山根さんに連載をしていただいていました。学生時代のお話もピックアップされることがありましたが、もし今回、学生時代のことで意識されていることなどありましたら教えてください。
山根:瑞稀たちが高校生なので高校時代の話をすると、楽しかったけど、しんどかったという気持ちの方が強かったですね。というのも将来の夢と現実のギャップに悩んだり、周りと自分を比べてしまったり……高校時代って思春期の中でも特に揺れ動く時期だと思うのですが、自分もそれに当てられていました。私は声優になりたいのに、なんでここにいるんだろう、とか。でも瑞稀は真逆で、「佐野に会いたい」という気持ちひとつで、海を越えて、さらに性別を偽ってまで行動してしまう。とにかくまず行動して、ダメだったらその時考える。その不安に引っ張られない強さが、彼女の魅力だと思います。それは私自身にはなかったところだなって。その一方で、瑞稀の気持ちを理解できないということはなかったので、そういう意味では近しいところはあるのかなとも思ってもいて。もしあの頃、瑞稀みたいに明るくポジティブに過ごせていたら、もう少し楽しい高校生活だったのかもしれないな、と思うことはありますね。
瑞稀の哲学は人間関係を円滑に進めていくための指標
──放送開始は新学期前、そして最終回を迎える頃には新しい環境に踏み出している人も多いと思います。そんな“花ざかりの君”に、本作を通して伝えたいことはありますか?
戸谷:アニメを観ていて「学生っていいな」とすごく思いました。特に序盤は学生時代を思い出してワクワクしましたし、今学生の方には、ぜひ自分と重ねて楽しんでほしいし、大人の方には懐かしみながら楽しんでもらえたら嬉しいですね。自分は学生時代を振り返ると、やりたいことを全部やっていたんですよね。お笑いもやっていましたし、部活もやっていましたし。瑞稀じゃないですけど、「これがやりたい」「あの人に会いたい」みたいな気持ちが当時から強くて、今振り返ると結構無鉄砲だったな、と。その感覚をこの作品を通して思い出しましたね。
八代:学生時代って、どうしても閉鎖的な世界にいる感覚があると思うんです。当時はすごく大きな悩みだと思っていたことも、今振り返ると「そんなことで悩んでたな」と思うようなことだったりする。でも、その小さな悩みに全力で向き合っている時間って、すごく青春だなとも思うんですよね。『花ざかりの君たちへ』では、学生ならではの壁にぶつかったときに、それぞれが違う向き合い方をするシーンがたくさん描かれています。観ている方が少しでも背中を押されたり、元気づけられたりしたら嬉しいなと思います。
梅原:瑞稀のように、新しい環境に飛び込んでいく方は多いと思うんですが、やっぱり一人ではどうにもならないことも多いですよね。だからこそ、周りに助けてもらうことをいとわないことが大事なんじゃないかなと思います。そのためには、正直でいること、まっすぐでいることが必要条件だと思っていて。
八代:確かに……。
梅原:そうすれば自ずと、周りが助けてくれるんじゃないかなと。この作品でも、最初は瑞稀と敵対するような立場だったキャラクターたちが、きちんと対話することで誤解が解けたり、仲良くなったりすることがあります。瑞稀の哲学は、人間関係を円滑に進めていくための指標にもなるんじゃないかなと。
山根:正直、瑞稀のように生きるのは簡単ではないと思います。でも、「瑞稀だったらどうするかな?」と、自分の思考の中に瑞稀を入れると、不安になったり、くよくよしてしまう自分から少し距離を取れる気がするんです。実際、やってみないと分からないことってたくさんありますし、彼女の考え方を一つの思考の軸として持っておくだけで、冷静になれるように思います。
この作品をご覧いただき「瑞稀のこういうところが好きだな」「このキャラクターのこの部分がいいな」と感じてもらえたら、その気持ちを日常の中に少しだけ持ち帰ってもらえたら嬉しいです。生活が少しでも彩られたり、明るい方向に進んだりするきっかけになったら、それが一番幸せだなと思います。とてもポジティブなエネルギーにあふれた作品なので、そのいい影響が広がっていったらいいなと思います。
──では最後に視聴者にメッセージをお願いします。
山根:『花ざかりの君たちへ』が令和の今、アニメ化されるということ自体に、とても大きな意味があると思っています。当時原作を読んでいた方、ドラマを通してこの作品を好きになってくださった方にとっても、アニメになることで、新しい作品として楽しんでいただけるのではないかなと。そして、これまで本作に触れたことのない今の10代の方々、恋をしている学生のみなさんにとっても、今の恋愛作品や少女漫画ではなかなか見られない設定や、個性的なキャラクターたちがたくさん登場します。いろいろな世代の方に楽しんでいただける作品だと思っていますので、ぜひ最後までご覧いただけたら嬉しいです。
八代:言葉遣いやシーンなど、原作にとても忠実に作っていただいているので、原作がお好きな方には、ぜひ当時の気持ちと一緒に楽しんでいただきたいなと思います。そして、まだ『花ざかりの君たちへ』に触れたことがない方にも、今のこのジャンルの文化を支えた作品とも言える偉大な存在なので、ぜひ一度触れてほしいなと。作品自体が持っている色味もすごくカラフルで、素敵で、エネルギッシュで。観終わったあとに「いいものを観たな」と自然と思えるような、肩肘張らずに楽しめるエンターテインメントが詰まっている作品だと思います。どんな楽しみ方でもいいので、「面白かったな」と感じてもらえたら嬉しいです。どうぞ、よろしくお願いします。
戸谷:この作品の一番の魅力は、佐野と瑞稀の気持ちが少しずつ育まれていくところだと思っています。最初は佐野が少し突っぱねるところから始まって、そこから苦しい場面もありつつも、少しずつ関係が変化していく。その中に、高跳びのシーンや、瑞稀の想いが込められた熱い場面もあって。もちろん感動するシーンも本当にたくさんあります。中津も少しずつ揺れ動いて、ターニングポイントもありますので、そこにも注目していただけたら嬉しいです。
梅原:恋愛のワクワク感はもちろんこの作品の大きな魅力なんですが、それと同時に、主人公・瑞稀の魅力がとても大きい作品だと思っています。このさき、物語の中ではいろいろな問題が起こりますが、それに直面したときの瑞稀のまっすぐさや、負けん気の強さが、観ている人を勇気づけてくれるんじゃないかなと。瑞稀のセリフの中にも、印象に残る言葉がたくさんありますし、「こういうふうにまっすぐ生きられたら、きっと周りの人もついてきてくれるんじゃないか」と思わせてくれる力を持った主人公だと思います。いろいろな側面から楽しんでいただけたら、と。
[インタビュー・逆井マリ]