長峰由紀、石浦の断髪式で声をかけてくれたリスナーの言葉に涙
この番組の親方こと、大相撲を愛する長峰さんが、上半期の大相撲を振り返る「生活は踊る」の夏場所です。
愛知県体育館での名古屋場所は今年が最後
長峰:一昨日行ってきました名古屋に。名古屋は37度でした。もう新幹線降りた途端に熱風で歓迎されて。
スー:以前は長峰さんが何で遠くまで行くんだろう…という気持ちが無きにしも非ずでしたが、今、完全に自分がそうなっているんで。私、この間大阪の「エディオンアリーナ」行ってきたんですけど。
長峰:3月場所ですよ!毎年通ってます。
スー:ここに長峰さんが……と思いながら。名古屋はどこでやるんですか?
長峰:愛知県体育館ご存知?愛知県体育館は「ドルフィンズアリーナ」と呼ばれてるんですけれども、名古屋城の二の丸の中にあります。古い城壁があって、お堀も残っていて、そこにのぼりがはためいて、すごく風情がある場所として私の中で印象に残ってるんです。この愛知県体育館、1965年から名古屋場所が行われいて歴史があるんですよ。
大相撲の歴史としても、この場所がすごく皆さんの印象に残ってるんでけれども、環境整備とか老朽建物、トイレも狭かったりするんで、そういうのもあって、来年新築移転します。だから今年が最後の愛知県体育館での名古屋場所ということになります。
大相撲会の状況
長峰:大相撲会の状況がどうなってるかを簡単にお話しますと、去年の末この番組で「2024年の大相撲の番付は相当変わりますよ」と言ったら、あれから8ヶ月、とんでもないことになってます。
スー:お!どうなったんですか?
長峰:世代交代の過渡期と言われているんですけども、音を立てて動いていまして、3月場所、新入幕の尊富士が初優勝を果たしました。新入幕力士の優勝は110年ぶり。髪の毛が伸びてないから大銀杏は結えなかったんですが、今の写真はやっと結えるように。5月場所はこの番組でも紹介しました大の里が初土俵からわずか7場所目で初優勝。
スー:尊富士は25歳、大の里は24歳!?
長峰:その世代がもう最前線にいるという状況です。史上最速の優勝を果たした。この方も、今も結えませんちょんまげしか。昔、遠藤がざんばらで幕の内で大活躍しました。そんな状況で2場所連続でちょんまげ姿が優勝するという。もう世代交代は空気でも雰囲気でもなく記録として残った。
スー:いい言葉!「空気でも雰囲気でもなく記録として残った」。これ刻んでいきましょう。
長峰:ところが!その尊富士が怪我で優勝の次の場所、全休。十両に落ちてます。今場所は途中から出場して2勝したんですが、また休場。私もちゃんと治してから出てきてほしいと願ってます。では大の里はどうかっていうと、既に5敗しています。
スー:どうして!?
長峰:これは、みんなに研究されているから自分の相撲を取らせてもらえない。これが本当に強くなるための試練。だから稽古しかないの。じゃあそれ以外の上位陣はどうしてるかっていうと、これはなかなか番付上位の役割を果たしていない。本当に残念な状況。そんな中、横綱・照ノ富士が目を見張る活躍を見せています。10勝1敗で優勝争いトップ。照ノ富士はこの1年は休場するか、または出てきて優勝するかっていう本当に極端なことをしている状態です。毎場所「今場所はケガはどうなんだろう…」と心配されるような。だけど今場所の照ノ富士は冷静に相手に対応しています。
スー:皆さんどこを怪我されることが多いんですか?
長峰:膝です。前十字靭帯の断裂とか損傷とか、あとは肩。小兵は首、体当たりしていきますからね。それがなかなか治らないと。でも今優勝争い単独トップ。ところが!その照ノ富士はきのう、大の里に敗れました。
スー:え、だって5敗してたんでしょ。
長峰:5敗の大の里が全勝の照ノ富士に土をつけた。やっぱり逸材であることに間違いはないけど、相当研究したんだと思いますよ。照ノ富士の意表を突くような相撲を取って勝ったわけです。とはいえ照ノ富士は1敗で単独。その下を行くのが3敗の5人なので、私の(優勝)予想としては、照ノ富士がいくんではないかと思ってます。
長峰:もう1人この場所を紹介したい人がいます。覚えてますかね炎鵬。1年以上前に脊髄損傷の大怪我をして、今一番下の序の口にいます。
スー:石川県だからスナック(ビーバー)のまわしの力士ですね。
長峰:7場所連続の休場から今場所復帰してようやく勝ち越したんです。不屈の精神で土俵に上がってますよ。プロレスもそうだけど怪我との戦いの連続なんですよ。こういった怪我で炎鵬は復活したけれども、引退を余儀なくされたのが石浦さん。私が心で育ててきた力士です。
心で育てた石浦の断髪式に参加
長峰:6月1日に行われた断髪式の報告をさせていただきますけれども、スーさんはご存知ですかね。所属する宮城野部屋があってはならない暴力問題で閉鎖されてしまったんですよ。暴力問題は次から次へと起きている状況で、これは本当に何とかしなきゃいけない深刻な問題なんだけど、部屋まで閉鎖されるっていうのはちょっと異例の事態。だから断髪式という引退興行もできるかどうか本当に大変だったんですよ。チケットのキャンセルもあって、苦労があったっていうふうに私も聞いてます。当日は本場所と全く変わらないほどの盛況ぶり。鳥取はもちろん、全国から人が集まって、もう国技館は身動きできないぐらいでした。
スー:長峰さん、まげにはさみを入れたと聞きました。
長峰:はさみ入れさせていただきました。
スー:(涙しながら)泣いちゃうでしょそんなの。
長峰:到着したときにリスナーの方から声かけていただいたんですよ。「今日は万感胸に迫る一日ですね。こんな大事な日に声をかけてしまってすみません」って言われたの。そのときにもう涙しちゃったんです。断髪式は200人がはさみを入れて、私もその1人として名前を呼ばれて。司会が元NHKの大ベテランアナウンサーだった藤澤武さんという相撲実況でも有名な方で、その方に紹介してもらったんですが、そのときの紹介文が「石浦が休場中もラジオで励まし続けました」って言ってくれたんですよ。
スー:そんなの泣いちゃう。
長峰:ラジオの皆さんのおかげなんですよ。断髪は200人の方がはさみを入れた後、女性はまた別枠として行われまして、私は下の方をチョキっと金色の大きなはさみで2ミリぐらい入れて、石浦に「相撲をありがとうございました」って背中から後ろから声かけたら、振り向いてお辞儀をしてくださいました。
スー:考えただけでも…せりあがってくるものがある。
長峰:印象に残ったはさみ入れっていうのは、やっぱりご家族。特にお父様とお母様はどんな思いだろうと。育てた息子がねと思って。あとは入門したときからずっと一緒に過ごしてきた元白鵬(宮城野親方)。その親方がハサミを入れたとき、大きな手で石浦さんのほっぺをを包んでほっぺにキスしたの。これはやっぱり師弟関係って言ったらそれで終わりだけど、それでは済まされない、もう苦楽を共にしてきたこの2人にしかわからない間柄がみえました。このとき私も本当に涙が止まらなかった。
育てられていたのは自分だった
これまで心で育てるって言ってきましたけれども、私ね断髪式に参加させてもらって気がついたことがあって。「いやいや、私が育ててもらったんだ」って本当にそう思った。縦横無尽に土俵を駆け回ったあの小兵力士から、マイナスをプラスに変える、個性を生かすってことを教えてもらった。間垣親方、ありがとうございました!
スー:私からもお礼を申し上げまして、ありがとうございました!
長峰:そして、名古屋場所まであと4日あるから、間垣親方(石浦)も一生懸命勤務してますから、皆さん応援してください。
スー:優勝は誰!?
長峰:…………照ノ富士。
(「ジェーン・スー 生活は踊る」より抜粋)