【茅ヶ崎 イベントレポ】"修理してみたい人のための"リペア相談カフェ by リペアカフェ茅ヶ崎 - 壊れたモノが、人をつなぐ。
海風が通り抜ける茅ヶ崎の街を、コーヒー片手に歩く午後。2026年5月3日・4日の2日間にわたり高砂緑地を中心に開催されたTakasuna Greenery Coffee Festival vol.5 茅ヶ崎とコーヒー。その会場のひとつ、アトリエ KONGEN(茅ヶ崎にある築60年の古民家施設)へ向かうと、どこか懐かしさを感じる建物の中に、ゆるやかな人の輪が生まれていました。
海風の中で出会った、小さな循環のかたち
画像出典:Kazuto Ishizuka
写真向かって右、リペアカフェ茅ヶ崎 主催者の一人、石塚和人さん
テーブルの上には、使い込まれた衣類や道具。誰かが手を動かし、誰かが覗き込み、また誰かが「それ、どうやって直すんですか」と声をかける。そこにあったのは、ただ壊れたモノを修理する場ではありません。モノとの関係を見つめ直し、人と人との距離を少し近づける、小さな入口のような場所でした。
今回訪れたのはリペアカフェ茅ヶ崎。リペアカフェとは、壊れたものを市民同士で持ち寄り、一緒に直すことを目的とした活動です。オランダ・アムステルダムから世界へ広がったこの取り組みが、茅ヶ崎という街でどのように根づこうとしているのか。主催者の一人石塚和人さんに、その思いを伺いました。
壊れたものを持ち寄り、共に直すという選択
画像出典:Kazuto Ishizuka
写真向かって右、自転車を修理するリペアカフェ茅ヶ崎 発起人の一人、小川透さん
リペアカフェ茅ヶ崎では、メーカーや修理店で「直せない」「買い替えた方がいい」と言われてしまうようなものでも、もう一度手をかけてみます。修理はボランティアベースで行われ、基本は無償。必要に応じて部品代のみがかかります。持ち込まれるのは、洋服のほつれや破れ、自転車、小さな生活用品など、「専門の修理店に頼むことは難しいけれど、このまま捨てるのはもったいない」と感じるものが中心です。
きっかけは一本のドキュメンタリーから
画像出典:Kazuto Ishizuka
この取り組みが始まった背景には、リペアカフェを題材にしたドキュメンタリー映画「The Repair Cafe」の存在がありました。上映会を茅ヶ崎で開催したところ、「自分たちでもやってみたい」という声が集まり、有志によってリペアカフェ茅ヶ崎が立ち上がったといいます。物を大切にする文化や、環境への意識が根付いている茅ヶ崎という土地だからこそ、この活動が自然に受け入れられている側面もあるようです。
KONGENで生まれる、ゆるやかな出会い
香り豊かで、ふくよかな味わいのコーヒーが美味しい、辻堂拠点のing coffeeさん
米粉のもっちりとした食感と、香ばしいガレットにリピーター続出Yume Sora Kitchenさん
会場となったアトリエKONGENは、ふらりと立ち寄った人が自然と足を止めたくなるような、どこか懐かしく開かれた空気を持つ場所です。縁側でコーヒーを味わう人、ガレットを頬張る人、自転車修理を見守る人、そして実際に手を動かす人、それぞれが同じ空間に重なり合うことで、リペアカフェの魅力がより自然に立ち上がっていました。
リペアカフェ茅ヶ崎には、修理やお直しを得意とするリペアラー(修復する人)という頼もしい存在がいます。参加者は、刺繍やDIYが好きな人や、自分のペースで関わりたい人たち。決まった形に縛られることなく、それぞれのスタイルで関われるのも、この活動の特徴です。また石塚さんは、茅ヶ崎らしさについて「一箇所に集まるのではなく、街のあちこちに小さく広がっていくスタイル」と語ります。一つの拠点に集約するのではなく、それぞれの場所、それぞれのペースで活動が生まれていく、そんな広がり方が、この街には自然に馴染んでいるのかもしれません。
「直す」を一緒に分かち合うという考え方
画像出典:Kazuto Ishizuka
リペアカフェ茅ヶ崎では、修理は誰かに任せるものではなく、持ち込んだ人自身も手を動かしながら、分からないところをボランティアに教わり、一緒に直していきます。その根底にあるのは、「責任も楽しさも分かち合う」という考え方です。完璧に直すことやサービスとしての品質を追求する場ではなく、「直す過程そのもの」を共有することが大切にされています。当日は、日本在住の外国籍の方が、10年間使い続けているレジャーシートのほつれを、リペアラーに教わりながら丁寧に直している姿も見られました。ほつれの直し方にもさまざまな工夫があり、修復を経たモノには、新たな個性が生まれていました。
モノを通して、人がつながる場所、これからの広がり方
画像出典:Kazuto Ishizuka
リペアカフェ茅ヶ崎の魅力は、モノを直すことだけにとどまらず、修理をきっかけに自然と会話が生まれ、年齢や背景の異なる人同士がつながる場となっています。また、愛着のあるモノに手をかけることで、それを長く使い続けようとする気持ちも育まれます。「直す」という行為が、人と人、そして人とモノの関係をつなぎ直していく、そんな側面も、この活動の大きな魅力です。
今後については、「大きく広げる」のではなく、共感した人がそれぞれの場所で活動を始めていくことを大切にしたいと石塚さんは語ります。街の中に点のように生まれた活動が、やがてゆるやかにつながり広がっていくことが、リペアカフェ茅ヶ崎らしい未来のかたちです。さらに、修理を得意とするリペアラーの参加も、今後増やしていきたいとのことでした。
暮らしを少しだけ変える、小さなきっかけ
画像出典:Kazuto Ishizuka
「壊れたものを直す場所」と聞くと、少しハードルが高く感じるかもしれません。けれどリペアカフェ茅ヶ崎は、そのイメージをやわらかくほどいてくれます。誰かがコーヒーを飲み、誰かが手を動かし、誰かがそれを眺めている。そんな時間の重なりの中で、自然と会話が生まれていく。完璧に直すことではなく、モノや人に関わり続けること。茅ヶ崎の街に広がりはじめたこの取り組みは、私たちの暮らし方をそっと見つめ直す、小さなきっかけになるのかもしれません。
取材にご協力いただき、ありがとうございました。
"修理してみたい人のための"リペア相談カフェ by リペアカフェ茅ヶ崎
開催日時
2026年5月4日 10:00〜16:00
開催場所
アトリエ KONGEN
住所:神奈川県茅ヶ崎市東海岸南1-15-2
駐車場:なし
参加費
無料
主催
リペアカフェ茅ヶ崎