つづきの絵本屋10周年 〜 一年一年積み重ねて2026年4月で10年。開業当初から大切にしてきた思い/倉敷市
倉敷駅から徒歩約8分の住宅街に、ひっそりとたたずむ一軒のお店があります。
店内には壁一面に絵本が並び、木の温もりを感じる空間が広がっています。
一歩足を踏み入れると、まるで絵本の世界に入り込んだようです。
絵本専門店「つづきの絵本屋」は、2016年4月のオープンから、2026年4月で10周年を迎えました。
店主の都築照代(つづき てるよ)さんは、一冊一冊の絵本を大切に選び、一人一人のお客さんと向き合い続けてきたのです。
10周年を迎えたつづきの絵本屋の歩みや、大切にしてきた思いについて、話を聞きました。
絵本と人をつなぐ場所
つづきの絵本屋には、さまざまな人が訪れます。
絵本を探しに訪れる人はもちろん、ゆったりとした時間を過ごしたい人や、大切な人への贈り物を選びに来る人など、幅広い世代が足を運んでいます。
つづきの絵本屋とは
つづきの絵本屋は、倉敷市川入にある絵本専門店です。
店主の都築照代(つづき てるよ)さんは、元司書・司書教諭として公共図書館や大学、小学校の図書館で長年勤務した後、2016年4月につづきの絵本屋を開業しました。
現在は、お店を営みながら、読み聞かせ講座や絵本専門士の講師を務めるなど、絵本に関わるさまざまな活動を行っています。
店内に並ぶ絵本は、全て都築さんが読んで、手渡したいと思った絵本ばかりです。小さな出版社とも直接取引を行い、大型書店ではなかなか出会えない絵本も数多くそろえています。
また、都築さんはティーインストラクターでもあり、店内では都築さんが選んだ紅茶や、手作り焼き菓子が楽しめます。絵本を読み、紅茶を味わいながら過ごせる空間には、「ここが私のオアシスです」と話す方もいるそうです。
店名の由来
店名の「つづき」は、都築さんの苗字に由来するものではありません。
絵本を探しに来たお客さんから相談を受けると、都築さんはいくつかの絵本を選んで紹介します。その中からどの絵本を選ぶか決めるのは、お客さん自身です。
自分で選んだからこそ、「この本、私にぴったりだった」「もっと読んでみたい」と感じてもらえます。
続きを読みたくなる一冊との出会いを届けたいという思いが、「つづきの絵本屋」という名前に込められています。
一年一年積み重ねてきた10年
開業当初は、全ての絵本の表紙が見える「面出し」という並べ方をしていたそうです。しかし、今では棚いっぱいに絵本が並び、縦に差し込む置き方も増えました。
絵本作家の原画展やトークイベントも、つづきの絵本屋ならではの魅力です。
毎月1回開催している大人向けの読書イベント「えほん夜会」は、2018年のスタートから2026年9月で90回目を迎えます。
「絵本は、読んでもらってこそ絵本なんですよ」と都築さんは話します。
自分で読むと文字を追うことに意識が向きますが、大人も誰かに読んでもらうことで、絵をじっくり味わえるのだそうです。
子どもだけでなく、大人にも絵本の魅力を届けたいという思いは、一冊一冊の絵本選びやイベント、お客さんとの関わりにも表れています。
都築照代さんにインタビュー
10年の歩みや変わらない思いについて、つづきの絵本屋店主の都築照代(つづき てるよ)さんにお話を聞きました。
10周年を迎えて
改めて、10周年を迎えた今のお気持ちを教えてください。
都築(敬称略)
あっという間だったなって思います。
作家さんや出版社の方に「すごいね」「よく頑張った」と言っていただくのですが、自分では、一年一年積み重ねたら10年経っていた、という感じなんです。
開業当初から、穏やかな時間を過ごせる場所でありたいという思いは変わっていません。親子の読み聞かせの時間も、紅茶を飲みながら絵本を手に取る時間も、忙しい毎日の中でほっとできる場所であってほしいと思っています。
絵本屋としてのよろこび
お店を続けていて、特にうれしかったことは何ですか?
都築
お客さまが後日、絵本の感想や出来事を報告しに来てくださることです。
いろいろなものに「ふーっ」と息を吹きかける絵本があるんです。
その本を買われたお客さまが、「桜が散る中を歩いていたら、子どもが花びらを集めてふーってしたんです」と動画を送ってくださったことがありました。
その動画を作家さんにお見せすると「まさに、こういう体験をしてもらいたかったんです」と喜んでくださいました。
絵本の中のできごとが、実際の暮らしの中で子どもの体験になっていくのです。
その瞬間を知ることができるのは、絵本屋冥利(みょうり)に尽きますね。
えほん夜会について
「えほん夜会」は、2026年9月で90回目を迎えるそうですね。
都築
えほん夜会について、1つだけ決めていることがあります。常連さんだけの会になったらやめようと思っているんです。毎回、初めての方のご参加があるので、一期一会。良い意味で新しい風が吹きます。
絵本の紹介の仕方も自由です。
最初は「話せるか不安です」と言っていた方が、一番長く話をされたこともありました。好きな本のことは、誰でも話せるんですよね。
これからの10年
次の10年に向けて、挑戦したいことを教えてください。
都築
2つあります。
1つは絵本の出版をしてみたいこと。もう1つは、絵本屋を始めたい方に向けた講座を開くことです。
最近は営業中に、絵本専門店をしてみたいという方から相談を受けることも増えてきました。きちんと時間を取ってお伝えできる場をつくれたらと思っています。
倉敷市で続けてこられた理由
知り合いのいない倉敷市で開業されましたが、10年続けてこられた理由は何だと思いますか。
都築
倉敷市って、本当に温かい街なんです。
私は愛知県出身で、倉敷市には知り合いも親戚も誰もいませんでした。しかし、イベントを手伝ってくれる仲間が自然と集まってくれたのです。
人のつながりや温かさがあったからこそ、10年続けてこられたと思っています。
おわりに
取材を終えて印象に残ったのは、絵本だけでなく、人とのつながりも大切にしている都築さんの姿でした。
一人一人に寄り添い、絵本を手渡す。その積み重ねが、10年間愛され続けてきた理由なのだと感じました。
つづきの絵本屋は、絵本の魅力に改めて気づかせてくれる場所です。そして、人と絵本、人と人をつないでくれる場所でもあります。
ぜひ一度、つづきの絵本屋で、絵本と紅茶とともにゆったりとした時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。