「とにかく映像化したい」主演シアーシャ・ローナンが初のプロデュース業を兼任『おくびょう鳥が歌うほうへ』
大都会の夜の喧騒に飲み込まれた生物学者が、故郷で新たな生き方を模索する再生の道程を描いた、ノラ・フィングシャイト監督の長編映画『おくびょう鳥が歌うほうへ』が、2026年1月9日(金)より公開される。このたび、主演シアーシャ・ローナンのアザーカットが到着した。
いくつもの色で、私は私になっていく
ロンドンの大学院で生物学を学んでいた29歳のロナ(シアーシャ・ローナン)は、10年ぶりにスコットランド・オークニー諸島の故郷へと帰ってくる。かつて大都会の喧騒の中で、自分を見失い、お酒に逃げる日々を送っていた彼女は、ようやくその習慣から抜け出した。しらふの状態で、心を新たに生きるロナ。だが、恋人との関係に亀裂を生み、数々のトラブルも引き起こした記憶の断片が、彼女を悩ませつづける……。冷たい海と荒れ狂う風の中、逃れたい過去を抱きしめ、再び世界とつながるまでを描く——“わたし”に還る、はじまりの歌。
若手実力派俳優シアーシャ・ローナン、そして「ベルリン国際映画」祭銀熊賞に輝いた『システム・クラッシャー』のノラ・フィングシャイト監督が初のタッグを組み映像化した本作。原作は、イギリスで2016年に出版されるや否や多くの読者の共感を呼び、瞬く間に一大ベストセラーとなったエイミー・リプトロットによるノンフィクション回想録「THE OUTRUN」。スコットランド・オークニー諸島の厳しくも美しい自然を舞台に、著者自身の「再生の旅」を描いた本作は、PEN/アッカリー賞やウェインライト賞など複数の文学賞を受賞し、各紙誌の年間ベストブックにも選出されるなど高い評価を受けている。
主人公のロナはロンドンでの学生生活を経て、自由と刺激を求めて大都会の夜の世界へと傾倒。やがてその自由は制御を失い、アルコールへの依存に変わり、人間関係を壊し、心身をも蝕む日々を過ごすように…。恋人との別離、暴力的な体験、入院など、人生が限界を迎えた末に、彼女は依存症の治療施設に入所し、90日間のリハビリプログラムを経て断酒生活を開始。そんな彼女が向かったのは、かつて自身が育ったスコットランド北部のオークニー諸島。野鳥保護団体に勤務し、朝晩の決まった時間にフィールドワークへ出て、稀少種であるウズラクイナの鳴き声を聴き取るという地道な作業に従事することに。誰とも会話を交わさない孤独な時間の中で、彼女は少しずつ自らの内面と対話を重ね、自然と向き合いながら静かな再出発を図るのだが…。
今回、初めてのプロデューサー業も兼任したシアーシャ・ローナン。そもそものきっかけはパンデミック禍のロックダウン中に配偶者のジャック・ロウデンに薦められて読んだ原作「THE OUTRUN」だったと語る。異例の速さで読み終えた彼女は、プロデュース業は全くの未経験ではあったが「とにかく映像化したい」という強い想いをジャックと共に持ち、プロジェクトを発足(ジャック・ロウデンもプロデューサーの一人としてクレジットされている)。長年、俳優としてプロジェクトの初期段階から参加する機会の多かったシアーシャは、より創造的な関与ができる立場をと望んでいたので、今回の『おくびょう鳥が歌うほうへ』の初プロデュース業にも人一倍の意欲を見せた。「俳優としての仕事に完全に没頭するだけでは済まず、時に現実的な責任を負う必要があることが、私にとっては素晴らしいことだったのです」と、力強く語った。
主演は、『ブルックリン』『レディ・バード』『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』などで知られるシアーシャ・ローナン。主演でありながら、自身初のプロデュース業も兼任し、キャリア最高峰とも言える成熟した深みと圧倒的な内面性をたたえた演技を披露。本作でアイルランド映画テレビアカデミー賞(IFTA)で主演女優賞、ロンドン映画批評家協会賞でブリティッシュ/アイリッシュ演技賞ほか数々の主演女優賞を受賞した。
監督は、ノラ・フィングシャイト。施設を転々とする9歳の少女を描いた初監督作品『システム・クラッシャー』で2019年の「第69回ベルリン国際映画祭」で銀熊賞を受賞、「ドイツ映画賞」では最優秀作品賞、監督賞、脚本賞、俳優賞、女優賞を含む計8部門を受賞し、「アカデミー賞」長編国際映画賞ドイツ代表作品としても選出された期待の監督だ。事実に基づいた圧倒的な取材力をベースにした作品群に定評のあるノラ監督の最新作である本作は、スコットランド・オークニー諸島の雄大な自然を舞台に主人公ロナの断片的で混濁した内面世界を繊細な演出で丹念に描き出し、「英国インディペンデント映画賞(BIFA)」で9部門(作品賞、脚本賞、監督賞、主演俳優賞、撮影賞、編集賞、ヘアメイク賞、音楽賞、音響賞)、「英国アカデミー賞(BAFTA)」で2部門(英国作品賞、主演女優賞)にノミネートされるなど高い評価を受けた。日本でもミニシアターながら大ヒットした『システム・クラッシャー』でも撮影を担当したユヌス・ロイ・イメール、編集のシュテファン・ベヒンガーとの再タッグが話題を呼ぶ。静かでありながら、力強い表現が観る者の心を深く揺さぶる“再生の物語”がここに誕生した。
<シアーシャ・ローナン/インタビュー>
——あなたはいつこのプロジェクトに参加したのですか?そしてなぜロナの役を演じたいと思ったのですか?
2020年、パンデミックの最中に参加しました。あの頃は、もともと熱心な読書家ではなかった人も、ロックダウン中に皆熱心に本を読むようになった時期だったと思います。それでジャック・ロウデン [訳注:シアーシャ・ローナンの配偶者で、本作にはローナンとともに、プロデューサーとして参加している] と私は週に1冊の本を読むようにしていたのですが、ジャックはこの本を以前から知っていました。知り合いが「一番好きな本だ」とよく話していたらしいんです。なぜ彼が突然、私に「これを読んでこの役を演じるべきだ」と思ったのかはわからないけど、興味をそそられました。2~3日で読み終えたのですが、これは私にしては異例の速さです。当時は権利所有者すら不明で、映画製作におけるプロデュース業務はまったくの未経験だったけど、とにかく映像化したいという思いは一致していました。私とジャック、同じくプロデューサーのドミニク・ノリスによる満場一致の決断でした。その後、サラ(・ブロックルハースト)が権利を保有しているとわかり、すべてがうまくまとまりました。
この本は感情的で、壮大な叙事詩的な情感に満ちていて、その点で非常に映像的な作品です。しかしそれをスクリーン表現するうえで、どこから手をつけたらよいのか、誰にもわからなかった。ノラ(・フィングシャイト)はそれを成し遂げたんです。製作の初期段階から関わり、ノラと共に作り上げていけること、それからノラがエイミーの原作や彼女の人生だけでなく、私自身から、ロナというキャラクターを造形するための要素を引き出そうとオープンであったことは、私にとって新たな経験となりました。
——本作はプロデューサーとして初めてクレジットされた作品でもありますね。その役割を担うことは、あなたにとってどのような意味がありましたか?
ここ10年ほど、私は幸運にも俳優としてプロジェクトに初期段階から参加する機会を得てきました。その初期の開発段階や経験はいつも本当に楽しいものでしたので、もっと創造的な関与ができる立場になりたいと感じていたのだと思います。多くの人が渇望しているのは、プロデューサーとして踏み込めるその一歩だと思います。主演として最初から最後まで演技の面から作品を牽引する場合は特に、プロジェクトそのものを形作る手助けができるのです。また長年、数多くの素晴らしいスタッフ、特に各部門の責任者たちと仕事をしてきました。だからこそ、チームの一員となる人物を決める過程に関われることが、私にとって非常に刺激的でした。
現場での演技においては、その追加的責任は非常に健全なものになりました。俳優としての仕事に完全に没頭するだけでは済まず、時に現実的な責任を負う必要があることが、私にとっては素晴らしいことだったのです。
『おくびょう鳥が歌うほうへ』は2026年1月9日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開