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密室育児やコロナ禍から心解き放つ絵本『そらをとびたい』空撮写真家・山本直洋インタビュー【前編】

ウレぴあ総研

山本直洋さん

「世界の果てまでイッテQ!」や「ザ!鉄腕!DASH!!」にも空撮フォトグラファーの第一人者として出演され、「林先生の初耳学」やNHKのドキュメンタリー等の撮影も任される山本直洋さん。

現在、世界初「七大陸最高峰空撮プロジェクト」にも挑戦している、一児のパパでもあります。

本日は『そらをとびたい』で文章を担当した育児ライター・ちかぞうが直撃インタビュー。

空を飛んで写真を撮るだけで満足だった僕が「空撮写真絵本」をつくったワケ

――まずは「空撮写真絵本」という、ちょっと珍しいスタイルの絵本を作ることになったきっかけについて聞かせてください。

山本直洋さん(以下、山本):僕はもともと「地球を感じる」写真をテーマに、モーターパラグライダーで自ら空を飛びながら撮影をする、空撮写真家として活動してきました。

写真家として写真集を作る、というのは写真家を目指し始めた頃から目標にしていて、昨年の個展に合わせて『Earthscape of Japan』という写真集も制作していますが、「写真絵本」というのは、実は空撮を始めた頃には考えたことはなかったんです。

でも2008年でしたっけ?mixiというSNSを通じた出版関係者のイベントで、ちかぞうさんに「山本さんの空撮写真で、写真絵本を作りませんか?」と声をかけていただいて。

「写真集じゃないけど、僕の写真を使って出版物ができたらいいな」って、軽い気持ちで「やりましょう」って答えたのが最初のきっかけですね。

――あんな不躾なお誘いに、山本さんもよく乗ってくれましたね(笑)。

山本:僕は小さい頃から「空を飛びたい!」という夢があって、それを実現したくて空撮写真家になったワケですが、自分がただ空を飛んで感動してシャッターを切れたら、当時はそれでよかったんです。

でもあの時、僕の写真を見て「子育てをしながら精神的に参っている時に、山本さんの写真で心が解き放たれた。

だからこの解放感を、写真絵本で子どもたちはもちろん、ママやパパにも届けたい」っていう風に言ってくださったんですよね。

――「密室育児」で辛かった頃、アラスカの大自然を撮影した写真家・星野道夫さんが著作『旅をする木』で書かれたフレーズがラジオから流れてきて、しばらく涙が止まらなくなってしまったことがあって。

私が東京であわただしく働いている時、その同じ瞬間、もしかするとアラスカの海でクジラが飛び上がっているかもしれない(中略)ぼくたちが毎日を生きている同じ瞬間、もうひとつの時間が、確実に、ゆったりと流れている。日々の暮らしの中で、心の片隅にそのことを意識できるかどうかは、それは、天と地の差ほど大きい。
旅をする木 (文春文庫)

――山本さんの空撮写真を拝見した時「アラスカのクジラに通じる力がある!」って思ったんです。

山本:僕は、僕が空で実際に感じる感動とは別に、自分が撮った写真でそういう風に感動してくれる人がいるっていうのが、すごいうれしかった。それを僕の写真で、写真絵本で表現できたらいいなって思ったんです。

パパになって実感した苦労の数々!子育てには助けが絶対に必要

山本:企画当初、僕はまだ結婚もしていなかったし、子どももいなかった。だから「子育てって大変だろうな」とは思っていたものの、実感っていうのはなかったんです。でもその後、自分もパパになって、子育ての大変さというのをやっぱりすごい実感しました。

娘は8歳になったんですが、自分的にはすごい、子育てをやっているつもりです(笑)。

0~1歳の時とかは、例えば娘が泣き始めると、僕が抱っこしてスクワットすると泣き止むので、それが習慣になっちゃって。子どもが泣いたらスクワット、するとミルクを飲みだすという……そんなスクワットしまくりな時期もありました(笑)。

2~3歳の時なんかはもうしょっちゅう、溶連菌とか、とにかくいろんな病気にかかって、保育園から電話がかかってくるんですよね。熱が上がるとすぐ電話がかかってきて、病院に連れて行って1週間登園できないとか。

保育園から連絡があると僕か妻、どっちかが迎えに行かなきゃいけないので、僕が行ける時は僕が行くし、僕がどうしても行けなかったら妻、というので、振り回されましたよね。

いつ呼ばれるか分からないから、3~4歳くらいまでは、写真家としての作品撮り、つまり仕事ではなくて自分の作品のための空撮ですが、その数年は割り切って、あきらめるしかありませんでした。

それでも例えば2018年と19年の5月にはそれぞれ1カ月、映画『くじらびと』の撮影でインドネシアへの出張が入ることもあって。

――『くじらびと』!映画『世界で一番美しい村』石川梵監督の最新作ですね!

山本:素晴らしい作品なので、ぜひご覧いただきたいのですが(笑)。

僕が海外出張の時には妻の母親の手も借りたのですが、子育てにはやっぱり助けが絶対に必要ですよね。僕がいる時もそうですが、いない時にはなおさら、妻が本当に苦労しているのを見てきました。

僕自身は仕事で外へ出たりしていたので、そこまでのストレスはたまっていなかった。でも限られた空間でずっと子育てのことだけやっているお母さんとかは、世界が狭くなってきちゃう。

まったく周りが見えなくなっちゃって、逃げ場がなくなってしまって、閉じこもっちゃうというか。

でも、実際に子育てをやっていて感じるのは……

忘れないで、苦しい時は永遠ではない!プレママ&プレパパにも伝えたい

山本:子育てで、本当に大変な時期っていうのはそんなに長くない。人生の中で考えたら、本当に、本当に一時期で短いんですけど、だけどその時は、いまの苦痛が永遠に感じるようになっちゃうんじゃないかな、と思うんですよ。

そういう時に、僕の空撮写真を見て、ちょっとでも外に目を向けてもらえるきっかけになるのであれば、それはすごいありがたいです。自分が父親になったから余計に「すごいうれしいな」って思いますね。

――山本さん、育児サイトの取材には、迷いもあったとか?

山本:これは妻から聞いた話なのですが、子育てサイトとか相談サイトみたいなのを見ると、みんな「子育て大変!」って書いてあり、それを子どもを産む前に見ると「そんな大変なのか」ってビビっちゃって「産むのやめようかな」「子どもいらないかな」って思っちゃう人が、結構いるらしいんですよね。

だけど……大変な時期って長い人生のうちの本当に短い時間だから、その短い時間のために子どもをあきらめるっていうのは、妻とも「違うんじゃないかな」と話しています。少しでも「子どもを産みたい」って気持ちがあるんだったら「子育て大変なのが心配」とか「お金が心配」とか、そういう心配は考えないでほしいなって。

子どもって3歳くらいまでかわいくて、その後は生意気になって「親孝行も3歳までに終わるよ」って言われていたから僕も覚悟していたんですけど、娘は8歳になっても、メチャメチャかわいいですよ!

子育て、大変だけど楽しいですよ!だから、心配し過ぎないでほしい。

スクワットだって、僕、楽しんでやっていましたよ!ちなみにいまも、背中に乗せて腕立て伏せしてます!

――8歳、となると……いいトレーニングになりそうですね(笑)。

それにしても10年余り前の企画のスタートから、山本さんは結婚して、いまや小学生のパパになって。出版まで、長かったですね(笑)。

山本:カタチになるまで、本当に長かったですね(笑)。

「僕自身が空を飛んだからこそ感じたこと」を絵本に!名編集者との出会い

山本:写真絵本を作り始めた最初の頃、僕は「写真絵本」とか「子ども向けの絵本」って全然分からなかったので、完全にちかぞうさんにお任せで、作ってもらった子ども向けの文章に合うように僕の写真を選んでいたんですよね。

まったく分からない状態で、無理やり写真を当てはめて。

でも昨年、小学館の児童書編集者・喜入(きいれ)さんにお会いしてからは、写真をまず決めて、僕がその写真を撮った時に何を感じて、どう思ったのかというのを説明して、それを子ども向けの文章に直してもらうようになった。

僕が何を思ってその写真を撮ったか、その景色を見た時に何を思ったかっていうのが一番、重要になりました。

例えば『そらをとびたい』にも出てきますが、富士山の上まで行って、この場所に僕がいる時に何を感じたか、それを伝えられるような文章を考えてもらう。そういう作り方になって、一気に、変わりましたね。

――「山本直洋の写真世界」を伝えられるものになりましたね。山本さんのお話はご自身で飛んでいるから、言葉が作り物じゃない。

喜入さんからは「言葉に写真を当て込むと、やっぱり作ったものになっちゃう。」「読者に『そらをとびたい』という気持ちを伝えるためには、写真を撮った写真家が『なぜこの写真を撮ったのか』という想いが伝わらないと、いい絵本にはならない。作家性が必要」と言われて「あぁ、そうか!」と。

山本:僕もそこから、写真の選び方が変わってきて。自分が感じたことを中心に写真を選べるようになりました。

――「この空の向こうには何がある?」とか「この時はこの後!」とか、そういうワクワク感というのは、それこそドローンではなく山本さんご自身が飛んで、生身で感じているからこそ、のストーリーなんですよね。

私も「山本さん自身が生で感じてきたことを子どもに語りかけるのであれば、どんな風かな」「読み聞かせるなら、どんなリズムならドキドキが伝わるかな」と、言葉を置き換えながら、すっごい楽しかった!

プレッシャーは大きかったですけど(笑)。

山本:絵本の中に「モーターパラグライダーが飛んでいる写真」があるんですが、それを入れるかどうか、という葛藤もありましたよね。

最初は「鳥が飛んでいるイメージ」で作りたかったから、実際に飛んでいるところの写真は、全然選んでいなかったから。

でも喜入さんから「モーターパラグライダーが飛んでいる絵」を「すごいおもしろい!」って言っていただいて「鳥が飛んでいる」んじゃなくて「僕が飛んでいる」っていうのを分かってもらえればいいんじゃないか、という話になって。そこからまた、選び方が広がったという部分もありますね。

まさか表紙に、モーターパラグライダーで飛んでいる写真が使われることになるとは思ってもみませんでしたけど。

――風景だけでなく「飛んでいる人」の写真が加わったことで、子どもたちにも「何が飛んでいるんだろう?」と伝わりやすくなって、読んでいただいたお母さんお父さんから「子どもが山本さんに自分を重ねて飛んでいる」という声も届いているんですよ!

山本:うれしいですね!反響は、やっぱり気になるなぁ(笑)。

気になる子どもたちの感想は?コロナ禍の大人たちから「心が晴れた」とも

――ところで、娘さんのご感想はどうでしたか。

山本:いやぁ、うちの子は僕と一緒にタンデムで空を飛んだことがあったので、「飛んでいる感覚の感動」というのはたぶん、なかったと思うんですけど(笑)。

でも地上にある自然や人工物の、不思議なカタチを集めたページは「おもしろい!」と言ってくれたり、富士山の写真には反応してくれたり。あとは「これ、一緒に飛んだところの近くだよ!」というような楽しみ方はしてくれました。

娘が通っている学童にも1冊差し上げたんですけど、子どもたちの第一印象は「怖い」だったみたいで。すごい高いところからの写真が多いんで「飛んでいる感覚になってもらえたのかな」と、僕はポジティブに受け取っています(笑)。

「怖い怖い」と言いつつ、みんな見てくれているので。

――我が家にも山本さんのお子さんと同い年の双子がいますが、富士山上空、高度4000mからのページを開いた時には子どもが「ママ……」って、私の腕にギュッとつかまってきて。

子どもがこれだけリアルに感じてくれるのであれば「この絵本、イケるな」って思ったんですけど(笑)。

怖さが落ち着いてからは、腕を翼のように広げて「飛ぶんだ飛ぶんだ」って、部屋の中でグルグル、飛んだ気になっていました

山本:大人の方からは、コロナ禍で外出できなくなってから、この写真絵本や僕の写真を見て「すごい気持ちが晴れた」って言っていただくことが結構多かったですね。

そういう意味では僕の写真も役に立っているというか、感動する以外のところで、意味のあるものになれるんだなぁって感じました。「お見舞いに差し上げたい」と言ってくださる方もいらして、うれしかったです。

『そらをとびたい』は子ども向けの写真絵本ではあるのですが、そういう見方をすれば、大人の方にもぜひ見ていただきたいな、というのはありますね。

空撮写真絵本『そらをとびたい』の写真家・山本直洋さんに、写真家として、パパとしての想いを伺った今回のインタビュー、いかがでしたか。

【後編】では世界初となる「七大陸最高峰空撮プロジェクト」に挑戦中の山本さんに、息子として、父として、また夫として、「子育て」と「夢を追うこと」について語っていただきます。ご期待ください!

※『そらをとびたい』の売上の一部は、医療・災害現場の最前線で「ささやかで偉大な活動を行う人」を応援している【公益財団法人 風に立つライオン基金】に寄付されます。

山本 直洋 さん

1978年東京生まれ。ニューヨークのフォトスタジオに勤務後ファッションフォトグラファー、風景写真家に師事。2008年に独立し、フリーランスフォトグラファーとして活動する。モーターパラグライダーによる空撮を得意とし「Earthscape」と題して“地球を感じる写真”をテーマに作品制作を行う。現在、世界七大陸最高峰を全てモーターパラグライダーで飛行しながら空撮する 世界初「七大陸最高峰空撮プロジェクト」を計画中。

(ハピママ*/ちかぞう)

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