乳児と幼児「寝かしつけ」カオスを乗り切る「究極の塩対応」 〔東大医学部卒 3児のママ医師が解説〕
子どもの睡眠に関する悩みと向き合う医師で小児スリープコンサルタントの森田麻里子先生に聞く、子どものねんねトラブル連載2回目。今回は「幼児・きょうだいの寝かしつけ」についてです。
【図解➡】男児の “精巣・金玉・睾丸“を失う!? 「精巣捻転」の危険性を泌尿器科医が解説子どもの睡眠について悩みを持つ親は少なくありません。子どもの寝かしつけに手こずるあまり、親の方ほうが先に寝落ちしかけてしまう……なんて日もあるのでは?赤ちゃんの睡眠と健康をサポートする「Child Health Laboratory」代表の医師であり、小児スリープコンサルタントの森田麻里子先生(以下、もりたま先生)に聞く、子どものねんねトラブル。
連載2回目は、幼児の寝かしつけときょうだいの寝かしつけについて。もりたま先生の3人のお子さん(小2・年少・2歳)のエピソードを交えつつ、お話を伺いました。
森田麻里子(もりた・まりこ)
医師・小児スリープコンサルタント。1987年、東京都生まれ。東京大学医学部医学科卒業。長男の夜泣きに悩んだことから、睡眠についての医学研究を徹底的に調査、赤ちゃんの睡眠と健康をサポートする「Child Health Laboratory」を設立。
「きょうだいの寝かしつけに悩まれている保護者の方は多くいらっしゃいます」(もりたま先生)
睡眠が安定しない乳児と、寝かしつけが必須な幼児などのきょうだいがいる家庭では、寝かしつけは本当に大変な時間。同時に寝てくれるなんて奇跡に近い出来事で、カオスな状況が起こりがちです。
「上の子はすぐ寝るのに赤ちゃんがずっと寝てくれない、ようやく寝てくれたと思ったら、今度は上の子が赤ちゃんを起こしてしまった……など、きょうだい間の寝かしつけについてのお悩みもたくさん届きます。まずは、それぞれの子どもの就寝時間が、何時が適しているのかという見極めが必要です」(もりたま先生)
きょうだいで寝る時間が一致している場合には、親子で寝室に入り、みんなでゴロンと横になって寝かしつけをする、というパターンが一般的。この場合、ふたり(もしくはそれ以上)の寝かしつけに同時にコミットするのは難しいもの。
「きょうだいの入眠のタイミングがなかなか合わず、赤ちゃんが泣き始めたことで、上の子が気になって眠れないなんて状況は起こりがちですよね。その場合は、まず赤ちゃんを泣き止ませるしかないので、抱っこひもやスリングで抱っこしたり、授乳したりして落ち着かせます。赤ちゃんが落ち着いてきたら上のお子さんに絵本を読んであげたり、お話をしたりして、上の子のケアをしましょう」(もりたま先生)
きょうだいの寝かしつけはお世話に優先順位をつけて
ただ、赤ちゃんが泣いていても上の子があまり気にしていないという場合には、すぐに赤ちゃんのお世話をしないという選択肢もあり。
「ぐずっていてもそのまま横にならせておいて、上の子には『赤ちゃんも寝られるように頑張っているから、泣いているのは気にしなくていいよ』と伝えて、上の子の寝かしつけに集中してあげましょう。双子や、年の近いきょうだいだと、そういうふうに下の子が放っておかれるうちに、いつの間にか自分で寝られるようになっているということもありますね。上の子の反応を見て、赤ちゃんを優先すべきか、いったん置いておくのか考えましょう」(もりたま先生)
年齢差のあるきょうだい 寝かしつけ方法とは?
年齢差のあるきょうだいは就寝時間をずらして寝室へ
また、年齢差のあるきょうだいでは、赤ちゃんと上の子の寝る時間が合わないということもあります。
「時間差で対応をするために、就寝時間をズラして寝室へ連れて行きます。上のお子さんが1人でも待てるような年齢であれば、入浴や夕飯の後に少し待っていてもらって、『先に赤ちゃんを寝かせてくるね』と寝室に入って。赤ちゃんを寝かしつけてから戻ってきて、上の子と2人の時間を作ってから一緒に寝るというパターンが理想的かなと思います」(もりたま先生)
写真:アフロ
他にも、赤ちゃんは夕飯の支度をしながら抱っこひもなどで寝かせてしまってそのまま寝室へ連れていく、など時間差の対応をすることも。
「朝7時に起床する赤ちゃんだったら、夜8時までには寝ると思います。上のお子さんに合わせて9時台まで起きているとなると、赤ちゃんにとったら少し遅い。それがグズりなどの寝かしつけがうまくいかない原因になります。時間差対応をしなければならない期間は大変ですが、1歳を過ぎればきょうだい合わせて8時半に一緒に眠れる、というふうに時間が合ってきます」(もりたま先生)
きょうだいのベストな就寝時間の見極めと、優先順位をつけることがきょうだい寝かしつけのヒントになりそうです。
3人子育て中 もりたま先生の「リアルな寝かしつけ」を公開!
また、1歳以降にも「寝ない」というお悩みが出てきやすくなる、ともりたま先生。
「1歳から1歳半の間は、精神的な発達が目立つ時期です。後追いや分離不安の時期が生後10ヵ月ごろからあるのですが、1歳過ぎにそれがまた強くなる時期が来るんですね。このころに『今までは1人で寝てくれていたのに、急に寝られなくなってきた』、『これまではおやすみと声をかけて寝室を出ていけていたのが、行かないでと泣かれるようになってしまった』などという声が増えてきます。
体力がついてきて、日中の過ごし方次第ではなかなか寝つかないという子も。そのため、別の寝室で寝ていた子でも、このぐらいの時期を境に家族で川の字で添い寝することになったというケースもあります」(もりたま先生)
現在小2、年少、2歳の三人3人のお子さんを育てるもりたま先生ですが、「私は、今の状況が一番大変かも!」と苦笑い。3人きょうだいの寝かしつけは想像がつかないですが、一体どうしているのでしょう。
「一番下の子が赤ちゃんだったときは、まず末っ子を夜7時に私たち親の寝室にあるベビーベッドで寝かせて、上の子たちと少し過ごしてから、子ども部屋で上の二人を夜8時半に寝かしつけるという時間差パターンだったんです。末っ子がなかなか寝てくれなくて手のかかる時期はもちろん大変で、上の子たちには『ちょっと絵本でも読んで待ってて』とか、本当はやりたくなかったですけど、DVDを観ていてもらったりしたこともあります。30分ぐらいかけて赤ちゃんを寝かせて『ふぅ~』っと寝室を出てきてから、上の子たちの寝かしつけをスタートしていました」(もりたま先生)
下の子が1歳を過ぎたころには、子どもたち全員の就寝時間を揃えることに。そして、2歳を過ぎた今では、子どもたちの寝室を全員一緒にしたと言います。
「3人同時の同室での寝かしつけをし始めた今が一番大変かも。本当にそれぞれのコンディションや、疲れ具合によって、全然寝てくれない時ときとかもあって。いくらトントンしても、絵本を何冊読んでも全く寝ないなんてこともあります」(もりたま先生)
そんなときにはもりたま先生、「寝かしつけは潔く諦めていい」と言いますが、どういうこと?
夜更かしする子に報酬は与えない
「私の場合、ある程度寝かしつけをしても子どもたちに全く寝ようとする気配がなかったら『お母さんはお皿洗ってくるから、静かに待っていてね』と言って、いったん一緒にリビングに引き上げます。様子がわかるようにキッチンから遠目に見てはいるんですけど、部屋はかなり暗くして、そばを離れるんです」(もりたま先生)
寝かしつけにトライするのは、30分くらいまで。「お母さんがいつまでも構ってくれると思うと余計に寝なくなるため、お話をしたり、一緒に遊ぶことはしない」と、もりたま先生。
「おもちゃや絵本を引っ張り出してきて遊ぼうとしても、『今は夜だから使わないよ』と冷静に制して、片付けて。それでも泣いたりぐずったりするのですが、どんなに誘われてもそこは塩対応を貫きます(笑)。自然に眠くなるまではあまり構わず、自分からそろそろ寝ようかなと思ってもらえるまで待ちます」(もりたま先生)
夜更かしの習慣をつけないないためにも、夜遅くまで起きていたときになるべく報酬を与えないことが大事。ブレずに強い心で寝かしつけに挑めば、子どもは「夜は寝る時間」と理解してくれるようになるのです。
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次回3回目は、パパママたちが恐れる子どもの夜泣きについて。突然訪れる夜泣きにはどう対応したらいいの? また、怖い夢をみる子どもへの対処法は? 睡眠時のねんねトラブルについて伺います。
取材・文/遠藤るりこ
撮影/神谷美寛