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新キャスト・福地桃子が10歳の少女の成長を見事に表現 『千と千尋の神隠し』ゲネプロレポート

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舞台『千と千尋の神隠し』

2022年に英国ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの名誉アソシエイト・ディレクター、ジョン・ケアード翻案・演出で舞台化した『千と千尋の神隠し』。10歳の少女・千尋の冒険と成長を描いた宮﨑駿監督の名作アニメーション映画をもとにした世界初の舞台は大評判となり、2023年名古屋・御園座での再演を経て、2024 年には東京・帝国劇場からスタートし、名古屋、福岡、大阪、北海道で上演される。また、全国ツアーと並行し、4月から8月までイギリス・ウェストエンドのロンドン・コロシアムで初の海外公演も行われることが決定している。

3月11日(月)に橋本環奈の千尋で幕を開けた本作。続く3月12日(火)には上白石萌音が登場、そして本日3月13日(水)には福地桃子が初日を迎える(川栄李奈は3月27日(水)に初登板)。本記事では、初日に先駆け行われた福地桃子のゲネプロの模様をお届けしよう。

千尋:福地桃子

この日のゲネプロでは千尋を福地桃子、ハクを増子敦貴(GENIC)、カオナシを中川賢、リンを実咲凜音、釜爺を宮崎吐夢、湯婆婆を羽野晶紀、兄役を大澄賢也、父役を吉村直、青蛙を元木聖也、頭を奥山ばらば、坊を坂口杏奈、アンサンブルを油屋チームが演じた。初出演のメンバーも多いが抜群のチームワークを感じさせ、あっという間に物語の世界に引き込んでくれる。

福地が演じる千尋は、あどけなさが全面に出ており、10歳の少女そのものといった雰囲気。見知らぬ土地への引っ越し、不思議な場所に迷い込んだことへの不安がひしひしと伝わってくる。引越し中の様子が丁寧に描写されることで父と母の性格がわかりやすくなり、千尋の不安に共感しながら物語の世界に入り込むことができた。

また、怖がりで少し鈍臭い少女が両親を助けるために必死に頑張り、様々な経験を通して成長している様子に、千尋を心から応援したくなる。透明感と子どもらしい素直さ、一生懸命さが、福地による千尋の魅力ではないだろうか。

ハク:増子敦貴(GENIC)

ハクを演じる増子は、千尋と二人でいる時の優しい声と油屋で働く時のクールな表情のギャップでグッと心をつかむ。まだ幼さの残る千尋を兄のように見守り助ける様子が温かさに満ちているぶん、湯婆婆の弟子として動く際の無機質な表情やダンスが印象的だ。

一緒に働く仲間として千尋を気にかけ、助けてくれるリン役の実咲、釜爺役の宮崎は、ぶっきらぼうなところもあるが面倒見のいいキャラクターを愛嬌たっぷりに演じる。千尋の身に次々と大変なことが起きる中、ハキハキしたリンの明るさと釜爺のお茶目さが和ませてくれた。

リン:実咲凜音

釜爺:宮崎吐夢

湯婆婆を演じる羽野は、恐ろしい魔女とやり手の経営者、坊を溺愛する母の3つの顔をチャーミングに表現。たおやかだかコミカルな動きが原作を彷彿とさせる。銭婆は落ち着いて凛とした魔女として演じ、双子の違いも明確に見せた。

中川はカオナシの不気味さと可愛らしさを身体表現で的確に伝える。面をつけているため顔は変わらないにも関わらず実に表情豊かで、ついつい目で追ってしまう。同じように人形を使って表現される青蛙(元木聖也)や頭(奥山ばらば)も、動きや声によってキャラクターの感情を丁寧に描き出して楽しませてくれる。

湯婆婆・銭婆:羽野晶紀

カオナシ:中川賢

忘れてはいけないのがアンサンブルキャストの活躍だろう。個性豊かな神様たち、千尋と一緒に働く仲間、自然や魔法と次々に姿を変え、作品の世界を表現するパワーが素晴らしい。物語中盤の見せ場である川の主のエピソード、カオナシの暴走などは、非常に迫力あるシーンに仕上がっていた。一方で釜爺の腕の表現、坊と湯バードが姿を変えられた姿などは非常にお茶目で愛らしい。アニメ的でコミカルな表現から不思議な世界の厳かさ・美しさまで、息のあった動きで形にしていく様子に圧倒される。

千尋を応援しているとちょっぴりいじわるで嫌な奴に見える兄役(大澄賢也)や父役(吉村直)、その下で働く従業員たちも、物語が進行する後ろで愛嬌のある動きをしていたり、一生懸命働いていたり、一人ひとりのキャラが立っているため憎みきれない。

アニメーション映画のように次々に場面が転換したり、ダイナミックな構図で魅せることは難しい。だが、大掛かりなセットや華やかな衣装、キャストの芝居、バンドによる生演奏で、舞台ならではの良さが詰まった作品として完成していると感じた。ファンタジーの生き物である龍など、三次元にするのが難しい部分を映像ではなく人形や小道具と人力で表現するのも面白い。

また、制作発表会見で「(演出の)ジョンから物真似はしないでと言われた」という話があったが、それぞれが個性を見せながらも、原作のキャラクターが持つそれぞれの“核”のようなものは守っているという印象を受けた。国内ツアーはもちろん、イギリス公演においても、多くの演劇ファン・ジブリファンを幻想的な世界に誘い、満足させられるのではないだろうか。

本作は2024年3月11日(月)より3月30日(土)まで帝国劇場で上演された後、4月に御園座、4月~5月に博多座、5月~6月に梅田芸術劇場、6月に札幌文化芸術劇場でツアー公演、4月~8月にロンドン公演が行われる。

取材・文=吉田沙奈

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