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<特集>帰ってきた日本文化の粋 ─ 今、時代劇が熱い!

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<特集>帰ってきた日本文化の粋 ─ 今、時代劇が熱い!

~伝統を受け継ぎ飛躍を遂げてきた
時代劇の職人たちによる見事な仕事~

火花を散らすような見応えたっぷりの実(じつ)のある俳優たちの芝居の競演、
撮影、照明、大道具・小道具といった美術、音楽、劇中の料理など
細部にまで神経が行き届いた、撮影所育ちの職人たちによる熟練の技。
時代劇専門チャンネルのオリジナル時代劇には、季節感、立ち込める匂い、舞う風の音、風情、情感といったものが映し出される。
職人たちの矜持、良心といったものを見せられている思いがする。
武家社会のしがらみや理不尽さ、市井の人々の喜怒哀楽、裏の世界で生きざるを得ない人間のもがき、
義理と人情とのはざまでの苦悩、男女の情愛や純愛、行き違いやすれ違い……。
オリジナル時代劇の世界は、そんな人間の懊悩に光を当ててくれる。
まさに、見応えたっぷりの正統派時代劇の味わいがある。
時代劇は日本文化の財産として時と空間を超えて永遠である。

時代劇専門チャンネルオリジナル時代劇の世界

 今から30年ほど前、まだ50歳になる手前の二代目中村吉右衛門にインタビューをしたことがある。そのときの言葉は今も記憶に残っている。

「すでに完成された総合芸術である歌舞伎が大きく飛躍するためには、天才が必要です。次の天才が現れるためにも、歌舞伎のこれまでの流れを絶やしてはいけない。歌舞伎を絶滅してしまった恐竜にしないためにも、ぼくはその伝統をいじらず、次へとつなげたい」(『JAPAN AVENUE』1993年6月号より)

 この発言の「歌舞伎」という言葉を「時代劇」に置き換えても、違和感はない。時代劇もまたその伝統を受け継ぐことで飛躍を遂げてきたのである。中村吉右衛門は自身の役割を「つなぎ」と謙虚に語ったが、歌舞伎においては天才と評された初代吉右衛門をしのぐ演技を見せ、人間国宝(2011年)にも認定された。そして、時代劇においても大きな足跡を残した。

 そう、池波正太郎原作の『鬼平犯科帳』の主人公・長谷川平蔵役である。

 インタビューをしたのは中村吉右衛門がテレビで鬼平を演じるようになって4年が過ぎようとしていた頃。ここから2016年12月まで全150本を演じきった。それまで鬼平は初代松本白鸚(当時は松本幸四郎)、丹波哲郎、萬屋錦之介が演じてきたが、中村吉右衛門によって完成されたというのは衆目一致する見方だった。

 鬼平は身を挺して悪と徹底的に闘う。しかし、ただの善玉ヒーローではない。若い頃には放蕩無頼の日々を過ごし、市井の人たちの人情の機微に通じた繊細な優しさを持ち併せている。洒脱で、食道楽でもある。配下や密偵、ときには盗賊にも慕われる。そんな鬼平に扮した吉右衛門は絶品だった。「長谷川平蔵=中村吉右衛門」は時代劇ファンの共通認識となった。だから、彼が鬼籍に入ったことで、もう2度と新しい鬼平作品は見られないものと多くの人が思ったものだ。

 ところが、である。

 長谷川平蔵は颯爽と帰ってきた。演じるのは十代目松本幸四郎。これがすこぶるいいのだ。快活で、色気があって、声に艶がある。凄みや迫力という分かりやすい個性だけでなく、とっぽくてお茶目な気配も画面から立ちのぼってくる。

 松本幸四郎主演「鬼平犯科帳」SEASON1の第一弾となったテレビスペシャル「鬼平犯科帳 本所・桜屋敷」では、火付盗賊改方長官に就いたばかりの平蔵が「本所の銕」と呼ばれた青春期の思い出とつながる事件に向き合う。若き日の鬼平を演じるのは幸四郎の長男・市川染五郎。言うまでもなく幸四郎の祖父は松本白鸚であり、中村吉右衛門は叔父。冒頭の吉右衛門の言葉を借りれば、「鬼平犯科帳」の伝統は4つの世代にわたってつながったのである。

 鬼平の周辺に配されたおなじみの人物も、演じる役者は様変わりした。本宮泰風(筆頭与力・佐嶋忠介)、浅利陽介(同心・木村忠吾)、火野正平(密偵・相模の彦十)、中村ゆり(密偵・おまさ)ら、個性も実力もある脇役が鬼平の周辺を惑星のように動き、話は重層的に展開する。第二弾の劇場版「鬼平犯科帳 血闘」では屈指の人気キャラクター、おまさの存在がクローズアップされる。色香の奥に一途さや切実さを漂わせ、中村ゆりの当たり役になりそうだ。

「血闘」では鬼平を激しく憎む残忍な盗賊、網切の甚五郎(北村有起哉)が現れ、鬼平を罠にはめようと暗躍する。物語は前作以上に緊迫し、鬼平の感情も揺れる。躊躇と果断。憂慮と豪胆。冷徹と慈愛。対立する要素が瞬時に入れ替わりながら、鬼平は鬼平らしさを増していく。

 山下智彦監督以下、撮影、照明、美術、小道具に至るまで、時代劇をつくるうえで最高水準の職人が揃い、見事な映像を紡いでいるのも本シリーズの美点だ。とりわけ障子や襖を生かした日本家屋の端正な構図。差し込む光や影が画面に陰翳をもたらし、軍鶏鍋から立つ湯気一つにも風情が漂い、物語に深みを運び込む。

 もちろん、クライマックスには時代劇の醍醐味である殺陣が待っている。精緻な構図を壊さんばかりに剣と剣が激しく交わり、活劇の血管が脈を打ち始めるのだ。その中心にいる松本幸四郎のしなやかな剣さばきを見ていると、新しい鬼平による、新しい時代劇が幕を開けたことをあらためて実感させられる。

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 そもそも日本映画は時代劇とともに始まり、1920年代に最初のブームが訪れた。現代劇の巨匠・小津安二郎でさえ1927年の監督デビュー作『懺悔の刃』(フィルムは消失)は時代劇だった。2度目の時代劇ブームは1950年代。終戦後しばらくはGHQの封建的忠誠心を礼賛する映画は禁止するという方針により、時代劇の製作は事実上不可能になった。しかし占領体制が終わると、時代劇は瞬く間に娯楽の王道となり、萬屋錦之介、大川橋蔵、市川雷蔵ら多くの時代劇スターが誕生する。1960年代に入るとテレビの台頭とともに映画産業は衰退するが、時代劇は銀幕からブラウン管へと主戦場を移し、ここから「水戸黄門」、「銭形平次」、「大岡越前」、「遠山の金さん」など国民的な人気コンテンツが次々に生まれた。そして、テレビ時代劇にもターニングポイントが訪れる。2011年、「水戸黄門」の終了とともに、時代劇は地上波における民放のレギュラー枠から姿を消してしまう。

 これより10年ほど前に、衛星放送で始まったのが「時代劇専門チャンネル」である。開局以来、往年のテレビや映画の人気時代劇、隠れた名作を放送してきたが、「水戸黄門」が幕を閉じた2011年からは、新作のオリジナル時代劇を制作・放送するようになった。この意味は大きい。

 時代劇と現代劇とではセリフはもちろん、衣装やセット、アクション(殺陣)に至るまでまるで違う。見せ方も撮影方法も異なる。日本の文化ともいえるこうした技術やノウハウを次の時代へ継承していくためにも、新作の制作は不可欠だ。役者も同様で、刀の扱いや足の運びなど立ち居振る舞いは一朝一夕に身に付くものではない。数々の時代劇に出演した仲代達矢も、時代劇初出演の『七人の侍』では黒澤明監督から「刀の差し方が違う」「歩き方がなってない」と怒鳴られ、歩くだけのわずか数秒のカットの撮影に6時間を要した。そういう世界なのだ。

 オリジナル時代劇で描かれるのは分かりやすい勧善懲悪の世界ではない。第1作の「鬼平外伝 夜兎の角右衛門」から「熊五郎の顔」、「正月四日の客」、「老盗流転」、「四度目の女房」と続いた「鬼平外伝」シリーズ5作の主人公は盗賊やその周辺人物。江戸の闇がノワールタッチで描かれる。同じ池波正太郎原作で、劇場公開もされた「仕掛人・藤枝梅安」二部作は人気のピカレスク作品を梅安(豊川悦司)と彦次郎(片岡愛之助)、2人の友情物語に仕立てたところが新鮮だ。バディ映画の趣きに味がある。

 オリジナル時代劇の一方の柱が池波正太郎原作作品なら、もう一つの柱は藤沢周平原作の作品だ。藤沢周平は社会の底辺にいる下級武士や町人の哀歓や葛藤を描くことを真骨頂としたが、「果し合い」は老いた武士の最後のひと働きをハードボイルドに描いた一作。ここで渾身の演技を見せた仲代達矢は、続く「帰郷」では30年間待望した主人公を演じ、老境の悲哀に迫った。さらに永山瑛太主演「闇の歯車」は現代にも通じるサスペンス劇の秀作。北大路欣也主演の「三屋清左衛門残日録」シリーズは、窮屈な武家社会にあっても自分の生きる流儀を失うことのない侍の清廉が気持ちいい。

 こうしてオリジナル時代劇の作品の一部を俯瞰すると、時代劇がいかに豊潤で可能性に富んだジャンルかが分かる。

 再び二代目中村吉右衛門のインタビューでの言葉を引用したい。

「歌舞伎は日本人が長い時間をかけ、経験や感覚の中でじっくり培ってできたものです。歌舞伎が追いかけてきたのは、かなわぬ〝夢〟のようなものかもしれない。でも、そんな夢ばかり追いかけるところが僕には合っている」

 これも「歌舞伎」を「時代劇」に置き換えていいだろう。時代劇は日本人が追い求めてきた夢であり、エンタテインメントである。日本人が夢を忘れない限り、その世界は存在し続けるはずだ。

米谷紳之介(こめたに しんのすけ)
1957年、愛知県蒲郡市生まれ。立教大学法学部卒業後、新聞社、出版社勤務を経て、1984年、ライター・編集者集団「鉄人ハウス」を主宰。2020年に解散。現在は文筆業を中心に編集業や講師も行なう。守備範囲は映画、スポーツ、人。著書に『小津安二郎 老いの流儀』(4月19日発売・双葉社)、『プロ野球 奇跡の逆転名勝負33』(彩図社)、『銀幕を舞うコトバたち』(本の研究社)他。構成・執筆を務めた書籍は関根潤三『いいかげんがちょうどいい』(ベースボール・マガジン社)、野村克也『短期決戦の勝ち方』(祥伝社)、千葉真一『侍役者道』(双葉社)など30冊に及ぶ。

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 時代小説の大家・池波正太郎の三大シリーズの一作品に数えられ、〝時代劇の金字塔〟として長きにわたり愛され読まれ続けている『鬼平犯科帳』。たびたび映像化されてきたが、初代松本白鸚が鬼平こと〝初代〟長谷川平蔵役をつとめ、その後、丹波哲郎、萬屋錦之介、そして二代目中村吉右衛門へと受け継がれてきた。そして、池波正太郎生誕100年記念作品として、初代松本白鸚を祖父、二代目中村吉右衛門を叔父に持つ、十代目松本幸四郎を〝五代目〟長谷川平蔵役に迎え、SEASON1として、テレビスペシャル1作品+劇場映画1作品+連続シリーズ2作品の計4作品が制作された。

 2024年1月8日に、記念すべき第一弾となるテレビスペシャル「鬼平犯科帳 本所・桜屋敷」が時代劇専門チャンネルでテレビ初放送された。そして、第二弾として劇場版「鬼平犯科帳 血闘」が5月10日に公開される。物語は、長谷川平蔵が〝本所の銕〟と呼ばれる放蕩無頼の暮らしをしていた若かりし頃に世話になった居酒屋の娘・おまさとの再会、おまさが密偵になるまでを中心に描かれている。中村吉右衛門主演「鬼平犯科帳」で、梶芽衣子が演じた役で、今回は中村ゆりが演じている。おまさにとって、若き日の平蔵(長谷川銕三郎)は、いわば初恋の相手。長谷川銕三郎役は、松本幸四郎の長男・市川染五郎がつとめる。

 脚本を手がけた大森寿美男は、おまさを「平蔵が武士の身分を捨てて無頼として生きていたら、おまさの運命はどうなっていただろう。そんなことを想像させる登場人物」だと言う。「血闘」は、密偵おまさの描き方が一番のポイントだろう。おまさの若い頃からが丁寧に描かれ、その純粋さと強さがスクリーンから伝わってくる。

 松本幸四郎は、自分があの鬼平になれるのかと、自問自答の日々が続いたが、長谷川平蔵を愛していることでは誰にも負けないという覚悟で、自分が長谷川平蔵だと念じるように、衣装・扮装を自分に染み込ませてカメラの前に立ったと言う。撮影では、叔父吉右衛門が使っていた煙草入れが使われている。また、幸四郎用に刀は一新したが、吉右衛門が使っていた刀の鍔はいいもので、これを使わない手はないと使わせてもらった、と〝吉右衛門の鬼平〟へのリスペクトが伝わる。

 池波正太郎は、自らを小説を書く〝職人〟と称したが、池波の世界を、現代最高峰の職人たちが映像化する。時代劇の〝聖地〟京都。かつて28年にわたり「鬼平犯科帳」を手がけた松竹撮影所がある。メイキング映像では、その職人たちの仕事にも光を当てる。 

 京都を代表する撮影監督・江原祥二は、助手の頃から吉右衛門の「鬼平」に携わった。「鬼平の世界観の中でそれぞれの出演者たちが躍動できるような画を意識した」と言う江原のカメラも躍動する。時代劇を知り尽くした江原だからこそ、今まで時代劇にはなかったアングルを生み出していく。

 江原とのコンビで数々の賞を受賞している照明技師の杉本崇は、「血闘」でもタッグを組む。「日の光、障子のフレア、ろうそく、月光、四季……照明は光で画を描く仕事」だと言う杉本は、東映京都撮影所で育ち、ソフトライティングを学び、やわらかな光を繊細に重ね合わせていき、光と影を自在に操り彩る。「時代劇は今の時代に添いながら自由に表現できたり、遊べるところもある」とも。

 日本映画美術の巨匠・西岡善信に師事し、その技を間近で見てきた美術の倉田智子。「新生・鬼平と言われたときに、中村吉右衛門さん主演「鬼平犯科帳 THE FINAL」のときにはあまり考えなかった時代設定というか、時代背景を考え直してセットをもう一回作り直さないといけないと思った」と、師匠が手がけた軍鶏鍋屋「五鉄」のセットの中の座敷をリニューアルした。これまで別のセットで行われていた内部の撮影を、今回はそのままセットの中で撮影できるように座敷を改装した。外の背景と一体となって撮影することで、セットによりリアリティが加味されている。

 ちなみに軍鶏鍋も実際に現場で作られている。料理監修をつとめたのは和食料理人・野﨑洋光。映画「仕掛人・藤枝梅安㊀㊁」(2023年)でも、料理監修をつとめた。「池波さんの小説の料理の特徴は、軍鶏や沙魚(はぜ)といった深川的な要素です。江戸だから、どうしても東京にこだわらなければいけないと思いました」と、「東京しゃも」という東京で育てた軍鶏を使い、池波が愛した江戸の味を再現した。だからこそ、「これはうまい、絶品だ」というセリフにもリアリティが増す。

 その「五鉄」の主人・三次郎を演じるのは、テレビにはめったに出ない芸人として知られる松元ヒロ。「何が嬉しいって、ちょっと何かあると、監督さんはじめ、メイクさん、床山さんといったスタッフの方々がすぐ駆け寄ってくれて、映画、時代劇というのは本当に総合芸術なんだなっていうことに感動しました」と相好をくずしていた。三次郎の女房・おたねを演じるのは、バレエのソリストとして海外でも活躍していた中島多羅で、本作が時代劇初出演となる。「プロフェッショナルの集まりで、それぞれの仕事をみなさんが誇りを持ってまっとうされているのを間近で見させてもらうのは、私にとってもすごく刺激になりました」と、鬼平世界の住人になっていた。

 さらに、中村吉右衛門主演「鬼平犯科帳」にも2度ほど出演し、今回、ひとりばたらきの老盗・鷺原の九平役でメイン・ゲストの一人として出演している柄本明が「京都の撮影所で鬼平の時代劇が復活したということが大変嬉しく、そこに自分も呼んでいただいて大変に大変に嬉しい」と役者冥利を語れば、同じくメイン・ゲストである鬼平の上司・京極備前守高久役の中井貴一は「池波さんの小説に出てくる登場人物というのは、とにかく〝粋〟ということがすべてで、〝粋〟というものが物語を進めていっていると思います。日本人のDNAみたいなものがこの作品の中に刻み込まれているので、時代劇と言えば池波正太郎作品ということも、日本人のDNAの中に刻み込まれているのかなという気がします」と、池波作品の本質にまで言及している。

 最後に、主演の松本幸四郎の言葉をご紹介しておこう。「世界一の職人が集まる現場で、長谷川平蔵を集中してつとめさせていただきました。これだけ豪快にかつ繊細に作り上げることのできるスタッフは、他にはいないと思っています。最高最強の職人の集まりの中でお芝居ができたというのは、本当にありがたいと思いますし、これは永遠にやっていただきたい。そこに自分も入りたいという思いでいっぱいです」の言葉からは、時代劇にかけるプロフェッショナルの作り手たちの良心と〝時代劇愛〟こそが、時代劇の〝灯〟を支えていることを、思い知らされる。

 そして、劇場版「鬼平犯科帳 血闘」完成披露上映会での舞台挨拶では、「私にとっての鬼平とは?」との質問に「天命」だと答え、「鬼平犯科帳」は、いつの時代にも映像作品として存在する天命を背負った作品で、長谷川平蔵という役を演じることが自身にとっても天命だと思いしっかりとつとめたと言い、「傑作を傑作とするべく傑作を創り上げました」と、作品への自信のほどを語った。

劇場版「鬼平犯科帳 血闘」
2024年5月10日(金)全国ロードショー
原作:池波正太郎『鬼平犯科帳』(文春文庫刊)
監督:山下智彦
脚本:大森寿美男
音楽:吉俣良
出演:松本幸四郎
   市川染五郎 仙道敦子 中村ゆり 火野正平
   本宮泰風 浅利陽介 山田純大 久保田悠来 柄本時生/松元ヒロ 中島多羅
   志田未来 松本穂香 北村有起哉
   中井貴一 柄本明
(C)「鬼平犯科帳 血闘」時代劇パートナーズ

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「鬼平犯科帳」SEASON1のオープニングを飾ったテレビスペシャル
「鬼平犯科帳 本所・桜屋敷」
〝新時代の時代劇〟ブームを予感させる見応え十分のテレビ時代劇

テレビ時代劇の金字塔「鬼平犯科帳」。中村吉右衛門主演「鬼平犯科帳 THE FINAL」から8年の月日を経て、十代目・松本幸四郎を〝五代目〟長谷川平蔵役に迎えた、テレビスペシャル1作品+劇場映画1作品+連続シリーズ2作品の計4作品がSEASON1として制作された。その記念すべき第一弾として2024年1月8日に時代劇専門チャンネルでテレビ初放送されたテレビスペシャル「鬼平犯科帳 本所・桜屋敷」。若かりし頃の道場仲間だった旧友との邂逅を通して、長谷川平蔵が鬼平と呼ばれるようになった所以を紐解くエピソード。放蕩無頼の暮らしを送り〝本所の銕〟と呼ばれていた若き日の平蔵・長谷川銕三郎がいかにして「火付盗賊改方長官・長谷川平蔵」になったかが、初めて描かれる。若き日の平蔵・銕三郎を八代目市川染五郎、〝本所の銕〟時代からの悪友で、密偵となる相模の彦十を火野正平、平蔵に寄り添う妻・久栄を仙道敦子、平蔵を補佐する筆頭与力に本宮泰風、同心に浅利陽介、山田純大、久保田悠来、柄本時生といったレギュラー出演者により、〝新生・鬼平〟は門出を迎えた。ゲスト出演に松平健、山口馬木也、原沙知絵、橋爪功ら豪華な面々が顔を揃える。劇場版「鬼平犯科帳 血闘」と同じく、山下智彦が監督、大森寿美男が脚本を手がけた。

◆リピート放送5月12日(日) 12:00~ほか 時代劇専門チャンネル
(C)日本映画放送

「鬼平犯科帳」SEASON1の掉尾を飾る珠玉の連続シリーズ2作品
長谷川平蔵のなかの〝鬼〟が垣間見える!

連続シリーズ「鬼平犯科帳 でくの十蔵」

火付盗賊改方同心・小野十蔵(柄本時生)がメイン・キャラクターとなる一篇。あらすじを紹介すると、十蔵は、盗賊・助次郎(窪塚俊介)の探索中、その女房おふじ(藤野涼子)が助次郎を殺した現場に遭遇する。身重のおふじに同情した十蔵は、役目に反し助次郎の死体を隠しておふじをかくまう。そのころ、助次郎も加わっていた盗賊の頭・野槌の弥平を追っていた火付盗賊改方は、弥平一味の小房の粂八(和田聰宏)を捕縛する。盗賊一味の小川や梅吉(波岡一喜)から呼び出された十蔵は、おふじを攫ったと告げられ、おふじを救いたければ粂八を牢から逃がせと脅しをかけられる。追いつめられる十蔵の運命やいかに、と物語は展開していく。仙道敦子、中村ゆり、本宮泰風、浅利陽介、山田純大、久保田悠来のレギュラー陣に橋爪功も出演。物語は、さらに「血頭の丹兵衛」へとつながっていく。

◆6月8日(土) 19:00~ほか 時代劇専門チャンネル
(C)日本映画放送

連続シリーズ「鬼平犯科帳 血頭の丹兵衛」

〝殺さず、犯さず、貧しきからは盗まず〟を信条とする〝本格派〟の盗賊の頭として知られていた血頭の丹兵衛役で、古田新太が登場。小房の粂八役の和田聰宏、稀代の大盗賊・蓑火の喜之助役の橋爪功も「本所・桜屋敷」「でくの十蔵」に続き出演。松本幸四郎は、市川染五郎時代から、『阿修羅城の瞳~BLOOD GETS IN YOUR EYES』(2000年)、『アテルイ』(2002年)、『朧の森に棲む鬼』(2007年)など、劇団☆新感線の数々の舞台に出演しており、今回丹兵衛を演じる古田とは17年ぶりの共演となる。古田は「オイラはもともと池波正太郎のファンで、作品の魅力は裏社会でも正義を貫く人たちが描かれているところだと思っています。長谷川平蔵役の松本幸四郎さんとは、今でも〝染ちゃん〟と呼ぶくらいの旧知の仲で、今回の長谷川平蔵は、今までで一番色っぽいですかね。かっこいい染ちゃんを是非ご覧ください!」とコメントを寄せる。幸四郎は、「本作では、平蔵がただの〝鬼〟ではなく、優しさがつまった、人間として魅力ある平蔵を感じられる作品になっています。前2作品とは違ったカラーの作品になっているので、是非平蔵の生き様を感じて欲しいと思います。そして何よりも古田さんとの共演がとても楽しみで、殺陣については自分が憧れる方なので、平蔵として相対することができてとても嬉しかったです」と。捕縛された小房の粂八は、かつて自分のお頭だった盗賊・血頭の丹兵衛が残虐な盗みを働いたと聞き、それは偽物だと主張する。そして、密偵となって丹兵衛一家が潜伏する島田宿に赴きたいと平蔵に願い出る。物語はいかなる終結を迎えることになるのか。仙道敦子、中村ゆり、火野正平、本宮泰風、浅利陽介、山田純大、久保田悠来のレギュラー陣も出演。

◆7月6日(土)19:00~ほか 時代劇専門チャンネル
(C)日本映画放送

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オリジナル時代劇はここからスタートした!
もうひとつの「鬼平」の世界を描いた「鬼平外伝」シリーズ

 CS放送局としてチャンネル初のオリジナル時代劇が初放送されたのは2011年だった。池波正太郎の『鬼平犯科帳』の原点といわれる、盗賊を主人公に描いた短篇集『にっぽん怪盗伝』に収められた作品を映像化した「鬼平外伝」シリーズである。盗賊や市井の人々を主役に、もうひとつの「鬼平」の世界を描いている。盗賊は、「鬼平」の魅力を語る上で欠かせない、影の主役といった存在である。 

 2011年放送の第一作「夜兎の角右衛門」は、盗まれて難儀をする者への手だしはしない、人を殺傷しない、女を手込めにしないという三つの戒めを看板に、闇の世界で生きる盗賊の二代目の末路を描いた作品で、主役を中村梅雀が演じたほか、中村敦夫、石橋蓮司、荻野目慶子、平泉成らが出演。同じく2011年に放送された第二作「熊五郎の顔」は、盗賊に夫を殺された女性が、その後も運命に翻弄されてなお、生きることのすばらしさに思いを馳せる物語。火付盗賊改方と盗賊との息詰まる攻防に、市井に生きる人々のドラマ、男と女の心の機微が織り込まれ、現代にも通じる人間の普遍的な営みが描かれている。ヒロインに寺島しのぶ、相手役に小澤征悦のほか、星野真里、山田純大、平泉成らが出演。平泉は第一作と同じく、火付盗賊改方の与力・鮫島久兵衛を演じている。

 2012年には第三作となる「正月四日の客」が放送された。正月四日には毎年信州の<さなだ蕎麦>だけを客に出す江戸の蕎麦屋<さなだや>が舞台。蕎麦屋の亭主と盗賊という生きてきた環境も、置かれている立場も異なる2人が食べ物が取り持つ縁で出会うが……。蕎麦屋の亭主役の柄本明と、毎年正月四日に訪れる実は盗賊という役の松平健が、がっぷりと四つに組んだ芝居で魅せる。2012年度ギャラクシー賞奨励賞、2013年衛星放送協会オリジナル番組アワードオリジナル番組賞ドラマ番組部門最優秀賞を受賞。

 2013年放送の第四作「老盗流転」は、盗賊一党の2人の若者が、逃亡の末、これからは知らないもの同士としてきっぱりと別れて35年後の再会により新たな物語が始まる。2人の主人公を、高橋光臣―橋爪功、加治将樹―國村隼のリレーで演じる。橋爪功の女房役で若村麻由美も登場。江戸に生きる人生の非情、人の心の闇を描いたサスペンスの味わいで、池波正太郎が愛したフィルム・ノワールの世界を彷彿とさせる、池波流〝江戸ノワール〟とも言える作品になっている。

 2016年放送の第五作「四度目の女房」は、互いに想い合いながらも、江戸の闇社会に切り裂かれてしまった男女の命運を紡ぐ物語で、歌舞伎俳優の片岡愛之助が、テレビ時代劇初主演をつとめた。愛之助の女房役を前田亜季が演じたほか、山本陽子も出演。

 闇社会の影の物語があるからこそ、「鬼平犯科帳」における鬼平の人間像が魅力的なものになり、時代劇の〝金字塔〟として、人々の心を捉え続けているのだろう。

「鬼平外伝 夜兎の角右衛門」

「鬼平外伝  熊五郎の顔」

「鬼平外伝  正月四日の客」

「鬼平外伝 老盗流転」◆7月放送予定 時代劇専門チャンネル

「鬼平外伝 最終章 四度目の女房」

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