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「仕事は生き方そのもの」ゲシュタルト乙女・Mikanが語る、生き様を込めたEP「仕事」

SPICE

ゲシュタルト乙女・Mikan

満員電車に揺られて今日も仕事へと向かう。「学生の本分は勉強」「赤ちゃんの仕事は泣くこと」などと言われることを考えれば、世代を問わず誰もが「仕事」をしていると言っても過言ではないだろう。それでは、私たちにとって「仕事」とは何なのだろうか? この問いに台湾出身のロックバンド・ゲシュタルト乙女のMikan(Vo.Gt)は「表現や生き方そのもの」だと答えた。ゲシュタルト乙女が9月11日(水)に配信リリース(9月25日(水)より全国流通)するEP「仕事」は、まさしくバンドの生き様が込められた1枚であり、自身が大切にしたいものや忙しい日々の中で残したいものと向き合った全4曲が収められている。新メンバーの阿司(アース/Ba)が加入し、9月26日(木)より台日ツアー『僕たちの働き方』をスタートする。今回SPICEでは、台湾と日本を繋ぐ様々な活動への思いや最新作「仕事」について、Mikanに話を訊いた。

多忙な日々から生まれた「副都心」とファンへの願いを込めた「神様」

ーー弾き語りツアー『門出燦々』の大阪公演(6月8日@大阪 雲州堂)を拝見させていただきました。Mikanさんの温かい人柄が会場のレトロな雰囲気と相まって、柔らかい時間が生まれていたと思います。昨年のツアーが『未来の窓』、今回の弾き語りツアーが『門出燦々』ということで、バンドのポジティブな状態が表題にも表れていると思うのですがいかがですか?

阿司(アース/Ba)が加入して、始まりのムードを感じています。楽曲でも昔からのゲシュタルト乙女の雰囲気は保ちつつ、阿司の思いやアレンジの影響を受けているので、懐かしさと新しさを両立できればなと。

ーー3月にリリースされた新体制初のシングル「副都心」では、the band apartの荒井岳史さんがアレンジを担当されています。ここにも新しいことに挑戦していく姿勢を感じました。

私も阿司もthe band apartが好きだったので、荒井さんにアレンジをお願いすることにしました。もともと「副都心」は、今回のツアーで披露していたような弾き語りの形から生まれた楽曲で。新体制になるこのタイミングで色々なことに挑戦しようと思ってアレンジをしていただいたら、全く違った雰囲気の曲になりましたね。

ーー「副都心」は軽やかなサウンドも含めて、慌ただしい生活を送る人たちがほっと一息をつくことができる1曲だと思います。生き急ぐ人への祈りをテーマにしようと思ったキッカケは何だったのでしょう。

「副都心」は『未来の窓』の開催期間に作った曲で。ツアー中はライブが連続する分、充実感もありますが「もう全部が終わってしまう」という虚しさも抱えているんです。自分自身が目まぐるしい状態にあったからこそ、何を残せるのかと向き合おうと思い制作しました。

ーーMikanさん自身が忙しない暮らしになっている自覚があったから生まれたナンバーなんですね。副都心は都会すぎるわけでも田舎でもない絶妙な場所だと感じています。そのエリアをタイトルに冠することにも「急ぎすぎないでほしい」という思いが表れているなと。

タイトルの「副都心」は、この曲を作ったスタジオが副都心線沿いにあったことに由来していて。あとは台湾にも新荘副都心駅という場所があるので、台湾と日本の共通項として副都心を挙げました。でも、ファンの方から「生き急ぐ人が副都心という場所にマッチしている」と意見をいただいて、納得もしましたし嬉しかったですね。

ーー5月にリリースされた「神様」はサビの<神様 教えて>の一節をはじめ、自分の大切にしたいものや信じたいもの、つまり“神様”に対する願いや祈りが伝わってくる楽曲です。

台湾と日本の両方で活動する中で、自分に対して疑問を抱くことや周囲の反応に戸惑うこともあって。でも8年間活動を続ける中で、ゲシュタルト乙女の音楽を聴いてくれたたくさんの人が「好き」と言ってくれたので、「自分が好きなことをやっていいんだ」「やり続けたら集まってくれる人がいるんだ」と信じることができたんです。私がお客さんに勇気づけられた分、「みんなも好きなことややりたいことを思い切りやってほしい」という願いを込めました。「神様」を冠する楽曲がいっぱいある中で、ゲシュタルト乙女なりの「神様」が作れたなと。

ーー「副都心」のジャケットには横断歩道を渡るMikanさんと阿司さんの後ろ姿が、「神様」には十字路を歩く人の様子が収められています。2曲のアートワークには新たに歩んでいく決意が込められていると感じたのですが、いかがでしょう。

まさにその通りです。「副都心」には「後ろを振り返らずに真っ直ぐ進め」という思いを、「神様」には上から俯瞰する視点にすることで「自分は自分の神様だ」という気持ちを込めました。どちらも道に立っている点で、リンクしていると思います。

ーージャケットの共通点も含めて、「副都心」と「神様」は一貫したモードで制作されたのかなと。

それぞれの楽曲の雰囲気は違いますが、EPのタイトルを「仕事」にすることが先行して決まっていたので、歌っていることは重なる部分が大きいですね。

個性を活かして何かを生み出すことが、一人一人の生き方であり“仕事”

ーーここまでお話いただいた「副都心」「神様」を含む全4曲入りのEP「仕事」が8月にリリースとなります。『門出燦々』のトークコーナーでは、お客さんの仕事に対する向き合い方を質問されていましたが、今回「仕事」をタイトルにした理由を教えてください。

毎日仕事をしていく中で、自然と仕事の意味を考えるようになって。悩んだ結果、仕事をすることや働き方は、それぞれの表現や生き方そのものだと思ったんです。ゲシュタルト乙女の音楽は私の働き方かつ生き方なので、まさしく“仕事”で。その“仕事”がファンの人にどう思ってもらえるのかと向き合いたいと思ってタイトルにしました。『門出燦々』のアンケートでは、「楽しく仕事を頑張る」という意見が各地で多くて。”仕事”がネガティブに受け取られてしまうのではと心配していたのですが、自分と同じように仕事をポジティブに捉えている方がたくさんいらっしゃったので、通じ合っているなと。

ーーアーティストの仕事は芸術性が重視される点で、オフィスワークとは違った側面もあると思います。Mikanさんは表現を仕事にすることに対してどのように考えていらっしゃいますか?

アーティストもサラリーマンも一緒ですね。というのも、ミュージシャンが歌を歌うことやサラリーマンがメールを打つこと、シェフが料理をすることは、どれも自分の個性を活かして伝えたいことを表現しているので、全てがアートだと思うんです。話が上手い人もいれば、数字に強い人もいる。個性を活かして何かを生み出すことが一人一人の生き方であり、“仕事”だと考えています。

ーー台湾と日本の両地で活動されているゲシュタルト乙女の音楽を機に、それぞれの場所を好きになったファンの方も多くいらっしゃると思います。ゲシュタルト乙女の“仕事”には両地を繋ぐ役割も組み込まれていると思うのですが、いかがですか。

台湾と日本を紹介することを重く考えているわけではなくて。純粋に自分の好きなものを紹介したり交流を深める中で、私にしかできないことがあればいいな。

ーーMikanさんが自分にしかできないことがあると感じた背景には、どのようなキッカケがあったのでしょう。

台湾のファンの方が「ゲシュタルト乙女の音楽をキッカケに日本語を勉強し始めました」とメッセージをくれたり、日本のお客さんが「台湾に行ってみたくなりました」「台湾の音楽を聴き始めました」と言ってくれたことが大きかったです。ゲシュタルト乙女をスタートに他の音楽や文化を掘り下げてもらえていることを実感していますし、私たちのバックグラウンドを理解した上で音楽を聴いてくれているなと。台湾公演で日本語講座を、日本のライブで台湾華語のレクチャーをしていることをはじめ、私が発信を続けることで両方にとって良い交流が生まれると考えています。

ーー8月の「仕事」リリースに向けて制作も佳境に入ると思いますが、改めてどのような1枚にしたいと考えていますか?

作品を通して聴いた際に、仕事をしている人の生活と合致するようなEPにしたいです。「副都心」は忙しい朝の通勤、「神様」はミスや困難にぶつかった時、「蜃気楼」は華金ではじける感覚がある一方で、見てみぬふりをしていた自分の欠点と向き合い乗り越えるようなイメージの楽曲で。「仕事」はこれまでの3曲を経て、自分の現在地が分かったことを歌う曲にしたいと考えているので、4曲を通した物語を感じてもらいたいな。

今のゲシュタルト乙女が最強だと感じてもらえるライブにしたい

ーー9月26日(木)東京・渋谷 WWWより、台日ツアー『僕たちの働き方』がスタートします。『未来の窓』以来1年ぶりとなるバンド形態でのツアーですが、どういったライブにしたいですか?

最近はサポートメンバーやスタッフさんと同じ目標に向かって頑張れている実感があって。本当にバンドが楽しいので、今のゲシュタルト乙女が最強だと感じてもらえるライブにしたいですね。

ーー最強感が『仕事』にも滲みでていると改めて思います。東京公演で対バンとなるHomecomingsは、『門出燦々』の会場BGMにもセレクトされていましたね。

たくさん聴いていたバンドなので、会場でもかけさせてもらいました。ゲシュタルト乙女とは違った雰囲気ですが、優しい力を持っているバンドだと思うのですごく楽しみです! 来てくれたみんなの気持ちがフワフワするような1日にしたいなと。

ーー大阪公演で対バンとなるハク。との出会いは?

最初はSpotifyのプレイリストで発見して、すごく輝いてて、全力で走ってるバンドとの印象でした。無題との曲を聴いた瞬間、きのこ帝国を思い出して、どこか同じルーツとなってるんじゃないかなと勝手に親近感が湧いてましたね!最近の新曲「dedede」もすごく好きです。この眩しく輝いてるパワーに負けないように自分らしい音を鳴らします!

ーー音源とライブでの表現は異なる部分があると思いますが、ライブではどのようなことを意識されているのでしょう。

音源を尊重しながら、ライブならではの表現にすることを大切にしています。曲同士の繋がりや順番、アレンジをひっくるめて、ゲシュタルト乙女の“仕事”を表現したいですね。

ーーツアーを通じて伝えたい“仕事”はどのようなものですか?

個性を表現するものが“仕事”だと考えているので、ゲシュタルト乙女の個性を存分に感じてもらいたいです。“ゲシュタルト“は、”それぞれの要素を超えたまとまり“を意味する言葉で。ゲシュタルト乙女の中にも、違った音楽の影響を受けて異なる個性を持ったメンバーがいるので、その人にしか出せない音や表現で生まれた一人一人の“仕事”が集まった結果、ゲシュタルト乙女の“仕事”が完成することを感じてほしいです。

取材・文=横堀つばさ 撮影=norico uemura

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