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今年も2月28日に筒粥占い。開創1300年を迎える大山不動尊にて

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鴨川市平塚にある高藏山大山寺と高藏神社は、東京から一番近い棚田として有名な「大山千枚田」から更に山奥へ、1.7キロメートルほど進んだ場所にあります。神奈川県の大山不動、千葉県の成田不動とならび、関東三大不動の一つとして信仰され、地域の人々からは「大山不動尊」の名で親しまれている場所。平安時代には源頼朝、室町時代には足利尊氏の信仰を集めた由緒あるお寺で毎年行われている「筒粥占い」の去年の様子を、現地在住ローカルライターが紹介します。

彫物大工「波の伊八」が彫った龍

大山寺境内は、長狭平野や太平洋が一望できる高蔵山の中腹にある。

江戸時代半ばに鴨川で生まれた彫物大工の武志伊八郎信由(たけしいはちろうのぶよし)の作品は、躍動感ある波の表現力が特に素晴らしいので「波の伊八」と称され、葛飾北斎にも影響を与えたといわれています。江戸時代後期の享和2年(1802)に再建された不動堂の向拝では、怒涛の波と水柱に雲、二体の龍など、初代波の伊八の作品を見ることができます。

寛文12(1672)年につくられたという千手観音菩薩像は当初、長徳院滝本観音堂に安置されていましたが廃寺となり、昭和36年大山寺に移されました。その際、御前立(おまえだち)と千手観音菩薩像の損傷が激しかったため、大山地区の人たちが中心となって寄付金で修復し、2023年2月28日、筒粥占いの日にお披露目されました。
※通常は丑(うし)年と、午(うま)年に御開帳されている

大山寺はもともと修験寺だったため、檀家は一軒もありません。大山不動尊で行う年間行事は、大山地区の住民とNPO法人大山かもがわ大山寺保存会の方たちが中心となって行っていることもあり、地域住民の暮らしに浸透して受け継がれ続けています。

毎年2月28日は筒粥占い

筒粥占いは、大きな鉄釜で玄米粥を炊く際、釜のなかに竹筒を入れてそこに入った米粒の数で、農作物の作柄を占います。

境内に結界が張られ、そのなかに置かれた釜戸の上に鉄釜を設置。大山地区で収穫されたコシヒカリの玄米一升と水を入れ、竹をくべて炊き上げます。小さな11個の竹筒を、一本の竹の棒に結び一塊にして鉄釜のなかへ投入。住民たちが見守るなか、住職が祈祷を始めました。

祈祷が終わると、ぐつぐつ煮えかえる鉄釜から竹筒を取り、竹筒の番号と同じ番号のお皿に玄米粥を取り出して、住民たちの手で一粒一粒数えます。その場にいれば、住民でなくても米粒を数えるお手伝いができます。

1~11に振り分けられた竹筒には、①水稲の早生、②中生、③晩生、④麦、⑤ししとう、⑥鴨川七里(大豆)、⑦大豆の晩生、⑧小豆、⑨菜花、⑩そら豆、⑪みかんが振り分けられていて、それぞれに何粒入っていたかを申告し、その数を基準に作柄が発表されます。

昨年はどの筒にもたくさんの玄米粥が入っていて、心無しか数えている人も見守る人も、みんな笑顔。どれも100粒以上入っていましたが、結果が悪かったのはみかんとししとうが六分。257粒だった鴨川七里は十分でした。結果を記入したプリントが祭壇に置かれ、訪れていた人たちが手に取って目を凝らしていました。

農家にとって、作物が無事に収穫できるか、豊作になるか否かはとても重要。農家でなくても自家消費用に作物を育てている人が多いので、作付けの参考にしている人もいるようです。

いつもの行事をいつも以上に華やかに

大山不動尊で開かれている年中行事は、筒粥占い以外にもあります。1月1日の「修正会」、2月3日の「節分会」、5月の第三日曜日は「柴燈護摩火渡り祭」、7月と8月の16日は「新盆十王堂送り」、8月初旬は「高藏神社祭礼」。

今年は4月7日に「花まつり」も開催。開創1300年なので、いつも以上に華やかにいつもの行事を行うそうです。また、毎月28日は「不動明王の縁日」で、14時から無料で護摩法要を行っています。

観光地の大山千枚田を訪れたなら、ちょこっと足を延ばして「波の伊八」の作品と土地に根付いた行事を見に、大山不動尊へぜひお立ち寄りください。行事によっては見るだけでなく、参加することができるものもあります。ただの観光ではなく、新しい体験ができるかもしれません。

写真・文:鍋田ゆかり

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