静かに甚大なダメージをもたらす「国内外来魚」 琵琶湖産稚鮎の放流が問題なワケとは?
外来種と聞くと「国外からやってきたもの」というイメージがありますが、そうでないものも問題となっています。
外来魚は国外からだけではない
世界中で環境問題の筆頭課題となっている外来種問題。我が国でもブラックバスやブルーギル、アライグマなど、日本以外の地域から移入された生き物たちが定着し、生態系の脅威となっています。
しかしこれらのような「国外から移入されたもの」のみが外来種問題を引き起こしているというわけではありません。たとえば本州以南においては在来種であるアズマヒキガエルというカエルは、本来の分布域ではない北海道に定着し、在来生物を捕食していることが分かっています。
このような生き物たちは「日本国内の別の地域からの外来種」ということで「国内外来種」と呼ばれています。
国内外来種問題
国内外来種問題はしばしば「何でこんな生物が」というものによって引き起こされます。例えば「コウライモロコ」。
コウライモロコはもともと琵琶湖・淀川水系以西の本州に棲息している小魚です。これが現在、九州のいくつかの河川に定着し問題になっています。
コウライモロコはブラックバスのような魚食魚ではなく、性質が獰猛というわけでもありません。それでも移入先の河川において様々な種類の魚に置き換わり、9割ほどがこの魚となってしまっているようなところもあるといいます。
直接食害する訳でもないのに、他の魚を駆逐してしまうというのはとても不思議で、逆に恐ろしい存在といえます。
アユ種苗放流の功罪
一説によるとこのコウライモロコは、琵琶湖から「アユの稚魚」に混ざって運ばれ、放流されたのではないかとされています。
アユは重要な経済種であるため、琵琶湖で大量に獲れる稚魚を全国の河川に放流する形で資源量をキープしてきた歴史があります。しかしこの際に、琵琶湖水系にしか棲息していなかった魚の稚魚も一緒に放流されてしまい、結果として外来種問題を引き起こすことになってしまったのです。
そもそも琵琶湖産アユの放流は、冷水病というアユの病気を全国に広めてしまったこともわかっており、現在ではその罪の面がクローズアップされることも増えています。それに伴い最近では、湖産アユではなく同じ水域のアユを確保して放流する河川も増えています。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>