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【追悼:チバユウスケ】ミッシェル・ガン・エレファントの時代を超える最新型サウンド!

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1996年02月01日 ミッシェル・ガン・エレファントのデビューシングル「世界の終わり」発売日

チバユウスケ逝去、55歳という若さだった


THEE MICHELLE GUN ELEPHANT、ROSSO、The Birthday のフロントマンとして、また数々のユニットで活躍。1950年代から続くロックンロールカルチャーを継承し、90年代半ばから現在に至るまでシーンを牽引し続けたチバユウスケが亡くなった。55歳という若さだった。

ミッシェルはインディーズでのリリースを経て96年にメジャーデビュー。当時チバは27歳だったことを考えると随分と遅咲きのバンドマンであった。THEE MICHELLE GUN ELEPHANTの “THEE” はロンドン・ガレージシーンの奇才、ビリー・チャイルディッシュ擁するTHEE MILKSHAKES、THEE HEADCOATSからのインスパイアだ。ここからも分かる通り、彼らは、ガレージ、パブロックといった日本ではマイノリティな音楽ジャンルをリスペクトしながら、より幅広い層のロックファンにその魅力を分け与えた稀有なロックンロールバンドだった。

リスペクトという部分のこだわりは、音だけでなく、アートワークにも顕著に表れていた。インディーズ時代のファーストアルバム(ライブ盤)『Maximum! Maximum!! Maximum!!!』では、ローリング・ストーンズの『ビッグ・ヒッツ(ハイ・タイド・アンド・グリーン・グラス)』(UK盤)を代表するような60年代の英国ビートグループが好んでアートワークに用いた魚眼レンズで撮影された写真を使用。同じくインディーズ時代にリリースされたミニアルバム『wonder style』は、ダムドのファーストアルバム『地獄に堕ちた野郎ども』(Damned Damned Damned)を彷彿とさせたし、メジャーデビュー以降にリリースした『Chicken Zombies』のアナログ盤はザ・フーの『不死身のハードロック』(Odds & Sods)を潔いくらいにオマージュしている。

好きで好きでたまらないミュージシャンをオマージュしながら、そのまま模倣するのでなく、時代に即した熱量と誰も生み出すことがなかった技法で、自分たちのフェイバリットをどこまで遠くまで飛ばせるか… これがミッシェルの存在理由だった。

筆者が初めて彼らを観たのは、パブロックシーンの重鎮、ウィルコ・ジョンソンが94年に来日した際にフロントアクトを務めたクラブクアトロ(渋谷)のステージだった。アベフトシ加入直前のミッシェルである。初期ザ・ルースターズを彷彿とさせるハイエナジーなロックンロールに度肝を抜かされ、時代性を超越したニューカマーの誕生に心躍らせたが、正直、ミッシェルがここまで幅広い層を魅了するロックバンドに成長するとは思わなかった。

圧倒的な世界観が凝縮されたチバユウスケの描くリリック


ミッシェルは、ライブ会場が大きくなるにつれ、スタジオアルバムで放出する熱量が加速していった。特に96年にリリースされたサードアルバム『High Time』から翌年の『Chicken Zombies』あたりでは、混沌を突き抜けていくような勢いが感じられた。

その根源は、聴覚、視覚でうったえるだけでなく、心の奥底から泉のように湧き上がるイマジネーションだ。チバが紡ぐ言葉には、その世界観が凝縮されている。デビューシングルの「世界の終わり」ではーー

 世界の終わりが そこで見てるよと
 紅茶飲み干して 静かに待つ
 パンを焼きながら 静かに待つ

―― と歌われる。” Sex Drug and Rock'n'Roll” が常套句だったロックンロールの世界を "紅茶” と ”パン " に置き換え、非日常と日常が交差する世界観を根底にマキシマムなサウンドを鳴り響かせる。世紀末に向かおうとしている90年代において、この手法は、圧倒的なリアリティがあった。また、時にチバの描くリリックは、本来その言葉の持つ意味を超越したところで、記号として聴き手のイマジネーションを掻き立てた。98年にリリースされた「スモーキン・ビリー」ではーー

 あふれ出したんだ "愛という名の憎悪"

―― とあるが、チバははっきりと "ぞうお" とは言い切らない。ともすれば、"愛と言うぞ…" と聞こえる。チバの吐き出すワードはアベフトシの歪んだギターと一体化しながらバンドのグルーヴの核となる。これが、ライブバンドとして圧倒的な力量を誇ったミッシェルの独自性だ。

聴き手のイマジネーションを掻き立てるミッシェル・ガン・エレファント


同時期にシーンを沸かせたBLANKEY JET CITYが “ブランキー・ジェット・シティ” という架空の都市で起こる近未来的な物語を奏でるバンドであった。これに対し、ミッシェルはどこまでも聴き手のイマジネーションを掻き立てるバンドだった。浅井健一がストーリーテラーであったのに対し、バンドのグルーヴと一体化させるチバならではの言葉のチョイスは他に類を見ない。

新しい時代に向かい、期待と不安が渦巻く90年代に登場したミッシェルの存在は、今考えると必然だったのかもしれない。古いロックンロールをベースとしながら時代を超える最新型のサウンドを施し、多くのファンを躍らせた。つまり彼らは原点に立ち返りながら、時代に立ち向かうように未来を構築していった。日本のロックンロールの系譜を語るにあたり、彼らの存在は不可欠となり、チバはバンドマンのまま逝ってしまった。

その功績は、これからも引き継がれていくだろう。キース・リチャーズが言うようにロックンロールの本懐が “継承” であるとするならば、チバはその本懐と真正面から向き合ったひとりだったと言える。

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