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鉄道写真家・山﨑友也個展『少年線』。少年の頃の琴線を持ち続けた写真家がつづる車両があまり出てこない鉄道写真展。

さんたつ

鉄道写真家・山﨑友也さんの個展『少年線(syonen-line)』が品川の『キヤノンギャラリーS』で2021年10月11日まで開催中だ。 ここで個展を開くには相当な実力と評価が必要なのだが、それだけにこの写真展の特徴には驚かされる。 鉄道の車両がほとんど登場しないというのだ。早速どういうことか見に行ってきた。

いきなり会場内に改札!? 硬券入場券を切ってくれるという遊び心

会場に入ると左手にはいきなり改札業務をこなす写真家の姿が。

てきぱきとオリジナル硬券にデーティング・マシンで日付を刻印し、自らきっぷを切って手渡している。
鉄道車両がほとんどない写真展と聞いていたが、いきなり鉄道風味満載である。

こういう遊び心がうれしい。

いたずらに成功した少年のような笑顔を浮かべた山﨑さん本人が入場券をくれた。 「3回来たらプレゼントありますよ。」
硬券に日付を刻印するDating Machineと懐かしいきっぷ用の鋏。入場すると、その日によって異なる歯形の鋏を入れてくれるというこだわりようだ。フイルムケースが括りつけられているのもあの頃のままだ。
入場券は国鉄時代の入場券にかなり寄せてあり、しかも硬券。ニクイ。

改札を抜けて細長い展示エリアに入る。

等間隔に並べられた作品はどこか車窓のようで、良く見れば天井からは中づり広告のようなものまで下がっている。
確かに鉄道車両の作品はほとんどないが、濃い鉄道の気配が流れてくる。

鉄道車両内が再現された展示スペース。
車窓に見立てられた展示作品。額には鉄道の窓に取り付けられたロックが仕込まれている。さらに窓の合間には衣文かけまで配置。

鉄道写真家として、業界でも実力者として知られる山﨑氏だが、現在は車両そのものにはそこまで興味がないのだという。
「鉄道ファンの人がいわゆる鉄道写真を期待して来られると、がっかりさせちゃうこともあります。まあ、そういう人はまず来ないんですけど(笑)」
これは、2016年に行われた前回の個展「Memories~車両のない鐵道写真~」でも山崎さんがから聞いた言葉だ。もちろん山﨑さんも最初は車両に注目していたそうだが、どうして車両のない鉄道写真を作品として撮り続けるようになったのだろうか。

「歳を重ねて、経験も積んでいろいろな人に出会いました。そのなかでだんだんと鉄道を取り巻く環境や携わる人々に被写体が移っていきました。車両や風景の魅力を伝えるのではなく、鉄道をモチーフとした一枚の作品としての魅力を幅広い人たちに伝えることが重要になってきたんです。」

この写真展の突き抜けたサービス精神は、この言葉に理由がありそうだ。

鉄道に感じた、少年の頃の浮き立つ気持ちがどんどん蘇ってくる作品たち

「最近は『こどもの写真が多いね』と言われます。精神年齢が近いからかな。」

作品を眺めていると、すっかり忘れていた、でかくて、早くて、かっこいい鉄道を見て……つい飛び跳ねたくなるような、うずうずした気持ちがよみがえってくる。
きっと、精神年齢じゃなくて琴線が少年なんですよ、山﨑さん。

写真展を見終えて“少年の頃の感動を持ち続けた、大きないたずら小僧が仕掛ける写真展”という感想が浮かんできた。山﨑さんの遊び心は留まることを知らず、開催期間中にもつぎつぎに新しい仕掛けが追加されており、2度、3度と足を運ぶたびに違った驚きが得られそうだ。

あなたの心の中の「少年」に、もういちど会いに行ってみはいかがだろうか。

山崎友也『少年線』開催概要

■開催日:2021年10月11日まで(日曜・祝日は休館)
■開催時間:10:00~17:30
■会場:キヤノンギャラリーS(東京都港区港南2-16-6 キヤノンSタワー1階)
■アクセス:JR品川駅から徒歩8分
■入場料:無料
※入場時、オリジナル硬券入場券に入鋏サービスあり。期間中3回入場するとプレゼントがもらえる。
■作家プロフィール:
山﨑友也(やまさき ゆうや)
広島生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、鉄道写真の第一人者・真島満秀氏に師事。幼少のころから鉄道をこよなく愛し、4歳で初めての鉄道写真を撮影。小学校の卒業文集にも将来の夢を「鉄道カメラマン」と記す。現在は鉄道写真の専門家集団(有)レイルマンフォトオフィス代表。

取材・文=星野 洋一郎(さんたつ編集部)

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