「ラーメンの町」はどう生き残る?食べる山形、作る佐野
総務省は2月7日(金)、全国の県庁所在地などを対象に行った、去年1年間の家計調査の結果を発表しました。中でも注目は、 「外食ラーメンにどれだけお金を使ったか?」 というランキング。これは、「1世帯あたり、どれだけお店でラーメンを食べたか?」 を調べたものなんですが、毎年、山形市と新潟市がデッドヒートを繰り広げるこの戦い、 今年、頂点に立ったのはどの自治体なのか!?
山形市が日本一で3連覇達成!
見事1位に輝いた自治体に、話を聞きました。
山形市 ブランド戦略課長 高橋 大さん
山形市が一番多かったという形。結果はぶっちぎりで3連覇でした。
1年間で外食で中華そばに使った金額という項目で、1世帯当たりの平均が「2万2389円」です。1ヶ月2杯ぐらいですかね、一世帯で。私みたくラーメン好きからするとちょっともうちょっと多いんじゃないかなと思う数字なんですけど、ただこの数字って、去年よりも5千円近く伸びている数字なんです。
くす玉を割ったり、乾杯をしたりなんていうことでみんなで喜びを分かち合ったとこです。毎年なんですけどホッとします。この時期になると私の顔を見て「ラーメン大丈夫か?」っていうのはご挨拶代わりになってるところがあって、市民の感覚は1位で当たり前だという感覚ですので、それが達成できてホッとしてます。
<山形県で人気の辛味噌ラーメン>
山形市・ブランド戦略課長の高橋 大さんのお話でした。ということで今年、日本一ラーメンを外食したのは…、山形市!なんと3連覇を達成しました。山形市の 1世帯あたりの年間ラーメン代は「2万2389円」 で、過去最高額。2位の新潟市に6097円差をつけ、ぶっちぎりの1位。
実は山形県は、人口あたりのラーメン店数が全国最多。「自宅にお客さんが来客したら、ラーメンの出前を取ってもてなす文化」が根付いていて、身近な存在なんです。
さらに、県をあげて 「ラーメン県そば王国」 と名乗り、観光誘致にも活用中。県南部にある南陽市では 「ラーメン課」を作って、スタンプラリーやラーメンマップを企画。その結果、わずか3か月で2万人以上がラーメンを食べ歩き、経済効果はおよそ1億4400万円があったということです。
「佐野らーめん予備校」後継者育成×移住促進
ラーメンが地域の売りとして活用されているんですが、ラーメンで町おこししているのは、山形だけではありません。続いて、「佐野ラーメン」で知られる栃木県・佐野市の取り組みについて、栃木県佐野市の総合戦略推進室、西沢 治さんに伺いました。
栃木県佐野市 総合戦略推進室 西沢 治さん
佐野市では、「佐野らーめん予備校」というのをやっています。9日間、時間割が決まってます。大正時代から伝わる独自の製法を、一から教えています。
私は移住定住の係でして、「移住」を目的としたプロジェクトなんです。佐野ラーメン店の開業を、佐野市で開いていただくっていうのが条件になってます。佐野市内ではラーメン店が150店舗あるっていうふうに言われてまして、そういった店舗で修行されてる方もたくさんいらっしゃいます。ですが「らーめん予備校」でも、佐野ラーメンの基本的な作り方っていうのは学べるような仕組みになってます。ただそこからはですね、ご自身でさらに修行なり、お店に入るなりっていうのを経て、ご自身のラーメンができるようになったら開業できるっていうような形。
お店に突然行って「すいません、中見せてもらえますか?」っていうわけにいかないと思うので、私達がラーメン店と移住してくる方を繋ぐっていうのが、ラーメン予備校の良さかなというふうには思っています。
佐野市のラーメン戦略は、ラーメンと「移住」の合わせ技。
ラーメン店が多い激戦区・佐野市ですが、一方で、後継者不足や空き店舗が増えている、という課題も抱えていました。そこで、移住者に佐野ラーメンの技術を学んでもらい、地元で開業してもらう仕組みを作りました。
それが 「佐野らーめん予備校」。現役の店主が講師となって、麺の手打ち、スープの仕込み、接客まで、開業のノウハウまで学べるのが特徴です。さらに卒業後は、空き店舗とのマッチング支援もあって、これまでに8店舗が誕生。この予備校を通じて、家族を含むおよそ30人が移住していて、街の活性化につなげています。
「佐野の老舗には勝てない…」移住開業した店主のリアル
では、移住者はどう感じているのか?佐野市で「麺屋 大円 (だいえん)」を営む、辰己 幸治さんに伺いました。
「麺や・大円」店主 辰己 幸治さん
奈良出身です。3年前ぐらいなんですけど、神奈川の方で居酒屋をしてたんですよ私まだコロナ禍の中で、そのときに「らーめん予備校」ってやつを知って、ちょっと面白そうやなと。
夜の商売よりやっぱり昼のやっぱりランチがメインの…みたいなのが頭のどっかにありまして、だからそこで昼の定食なり、何かそっちの方がやっていけるんじゃないかなと思って応募したが始まりですかね。それで初めて佐野市に来ました。
佐野って200個ぐらいラーメンあるらしいから、他の老舗には勝てないんで、そんな甘ないよ。関係性を作れた方がやっぱり予備校とかそういうおかげやと思う。佐野市の取り組みの、僕みたいなよそ者から言えば。今んとこはね、何とかはギリギリ食べていけるぐらいかな。
コロナ禍をきっかけに、パートナーとともに初めて訪れた佐野市へ移住し開業。しかし、老舗がひしめく激戦区で、生き残るのは簡単ではないようで、「大円」は最近、ラーメン一本ではなくレバニラ定食なども提供 し、差別化を図る方向へ転換したそうです。
同期の開業者も何人かいたものの、 今も店を続けているのはごくわずか。厳しい状況の中、それでも 何とか食べていけるレベルで奮闘しているそうです。
実際、後継者不足や激しい競争の波にさらされながらの挑戦 となっています。移住者を増やすだけでなく、開業後も続けられる仕組みがあるのか?そこが本当の課題なのかもしれません。
(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』取材:田中ひとみ)