プラザ運動教室 〜 倉敷中央病院の理学療法士と健康運動指導士に学んで、体を動かす習慣を身に付けよう
年齢を重ねるにつれて、気になるのは健康です。
友人同士でも健康の話題が増えてきました。運動不足が気になってはいるものの、なかなか始められず、始めても続かないことが多いです。また、運動が体に良いとわかっていても、何から始めればよいのかわからないこともあると思います。
倉敷中央病院付属予防医療プラザが主催する「運動教室」は、経験と知識が豊富な理学療法士と健康運動指導士が担当しています。運動教室の内容や、運動を習慣化するためのコツなどについても詳しく聞きました。
「倉敷中央病院付属予防医療プラザ」の概要
倉敷中央病院付属予防医療プラザ (以下、「予防医療プラザ」と記載)は、2019年に「倉敷中央病院総合保健管理センター」が新築オープンした、病気の予防と早期発見を目的とした高度な健診・人間ドックが受けられる専門施設です。
年間約5万人が検診を受ける施設で、一般健診や人間ドックをはじめ、PET-CT、脳・心臓・膵臓などの専門ドック、高度ながん検診やレディースコース、遺伝子検査など、さまざまな検査が充実しています。
予防医療プラザは、洗練されたおしゃれな建物です。
一歩足を踏み入れると、リゾートホテルのような開放感あふれるロビーが広がり、気分も明るくなります。
また、1階には「三宅商店PLAZA」や健康食レストラン「ル リエール」(完全予約制)があり、おいしい食事をいただくこともできます。
プラザ運動教室について
予防医療プラザでは、「倉敷中央病院総合保健管理センター」時代の2014年から健康診断の結果説明の待ち時間に、約15分の運動時間を設けていたそうです。
そこで、病気の予防のため、もっと多くの人に足を運んでもらう運動教室が開けないかと考え、2022年5月からプラザ運動教室がスタートしました。
2025年8月現在は、運動の専門家である理学療法士と健康運動指導士が担当し、以下のような形で開催しています。
・週2回(月・金)の開催
・1回45分
・回数券システム(5回で3,000円)
・予約不要で参加可能
・理学療法士は、肩こりや腰痛、膝痛、ダイエット、ピラティスなどのテーマに特化した運動をおこなう
・健康運動指導士は、全身をバランスよく使う健康体操をおこなう
また、2025年10月からは「はぁもにぃ倉敷」とコラボレーションして、お互いの施設で運動教室を開く計画が進んでいるそうです。そのため、月・金の開催に水曜日が加わって、月・水・金の週3回開催となる予定です。
参加者の特徴
参加者は60代〜80代の女性が中心です。一人で参加する人や、夫婦で参加する人、「母親が運動習慣がないので連れてきました」と親子で参加される人もいます。
医学的にも、一人で運動するより、集団でおこなうほうが継続率が高いというデータがあるそうです。
参加者の声 運動習慣がつきました
運動教室が始まった頃から約2年間、通い続けている参加者(女性)に話を聞きました。
──運動教室に通ってみて効果を感じますか?
参加者──
運動習慣が身についてきたと感じます。
実は、ここの教室に来るまで、運動の習慣がなかったんです。普段の移動は車ですし、体を動かす趣味もなくて。
でも、両親や親戚が、年齢とともに足腰が弱り、歩くのが難しくなるようすを見ていたので、私も運動しなければいけないなと感じていました。
その頃、予防医療プラザで健康診断を受けたときに、骨密度の話を聞いたんです。「骨密度はどうしても減っていく。いかに減るスピードを抑えるかが大切、その手段として運動がある」と。
私は骨粗しょう症の傾向があると言われていたので、運動を始めてみようと思いました。ご案内いただいた運動教室に通い始めて、2年間続けることができています。
──運動教室の良いところを教えてください。
参加者──
運動の専門家のかたが指導してくださることです。
「なぜこの運動が必要なのか」「この筋肉をきたえるための運動はこれですよ」と体の動きの意味を理解して取り組めるのも良いなと思っています。
とても気さくな先生との交流も毎回の楽しみです。運動の時間が45分というのも、ちょうど良いと感じます。
月曜日はいろいろな教室があり、肩こりや腰痛、最近ではダイエットの教室もありました。5枚綴りの回数券なので、行きたいときに行けて、気軽に利用できるのが良いと思います。
──どのような人におすすめしたいですか?
参加者──
運動習慣のない人や、運動を始めたいけれど何から始めればよいのか迷っている人におすすめです。退職などで、外出する機会が減った人にも良いなと思います。
ここには、私と同じように自分の健康を大切にしたいと思って参加している人がいます。参加者同士で時間があればお話しすることもあって楽しいですよ。
これからも継続して参加していきたいと思います。
予防医療プラザの専任の理学療法士・山本遼(やまもと りょう)先生と、健康運動指導士・田中阿由子(たなか あゆこ)先生に病気の予防についてや運動を続けるコツなどを聞きました。
理学療法士・山本遼先生と健康運動指導士・田中阿由子先生インタビュー
予防医療プラザの専任の理学療法士・山本遼先生と、健康運動指導士・田中阿由子先生、運動教室の取り組みについて聞きました。
予防医療に関わるようになったきっかけ
──予防医療の領域に関わるようになったきっかけは何ですか?
山本(敬称略)──
もともとは倉敷中央病院のリハビリテーション部で、手術後の急性期や集中治療室などの患者さんのリハビリを担当していました。
患者さんを診ていると、生活習慣が乱れている人やメタボリックシンドロームの傾向がある人は、重症化し回復がなかなか進まないケースが多々ありました。
そのため、早いうちから健康な体づくりをして、病気を予防する取り組みが、理学療法士としてできないだろうかと思っていたんです。
2019年に健診施設が予防医療プラザとして新しくなったのを機に、医療の専門家として関わってほしいと話があり、それから予防医療領域に取り組んでいます。
──「予防」は何歳から取り組むと良いのでしょうか?
山本──
私の考えも含まれますが、30代になると成長のピークが過ぎるため、早いと思われるかもしれませんが、30代から予防を意識すると良いと思います。
たとえば、ロコモティブシンドローム(骨・関節・筋肉などの衰えによって、移動機能が低下した状態)のテストで、「40cmの高さの椅子から手を使わずに片足で立ち上がれるか」というのがあります。
これができない30代の人が意外と多いんです。
近年、デスクワークをしている人が増えているため、運動量や筋肉量が減る傾向にあります。なるべく早めに運動習慣を身につけることが大切です。
運動を続けるコツ
──運動を続けるコツを教えてください
山本──
ハードルを低く設定することです。
たとえば、「毎日30分ウォーキング」をいきなり続けられるかたは少ないと思いますが、「毎日歯磨きをするときにスクワットする」は続けられそうですよね。
日常生活でよくしている日課の時間に運動を紐付けるのが、運動を続けるポイントです。
すぐにできる運動もおすすめです。
たとえば、座っている時間が長いと腰痛のリスクが高まると言われています。デスクワークなどで長時間座っているかたは、15分から30分に一度立ち上がるだけでも効果があります。
──運動教室で心がけていることはありますか?
山本──
参加者の皆さんには、自分の体を知っていただきたいと思っています。たとえば、自分を真横から見た姿勢はなかなか自分ではわからないものです。猫背やスマホ首(ストレートネック)になっていても、気づきにくいですよね。
運動教室では、姿勢のセルフチェック方法をお伝えして、家に帰ったら家族にお願いして写真を撮ってみてくださいとアドバイスします。自身の写真を見ることで客観的に姿勢を知ることができます。
最近多いのは、上半身と下半身の重心がずれて、腰が反り、お腹が前に出ている立ちかたです。この姿勢は楽に感じますが、腰痛の原因になることがあります。
自分の体を知って意識することで、ここを直したほうが良いと気づくことができます。そのうえで、運動教室で私たちのアドバイスを受けると、より自分ごととして生かせるはずです。
そのため、運動教室を通じて、自分の体を知ってもらえるように心がけています。
健康体操について
──担当している健康体操の内容を教えてください
田中(敬称略)──
ストレッチや筋トレを取り入れた全身運動の教室なので、簡単で誰でもできる運動です。脳トレも取り入れて、頭を使いながら体を動かすこともあります。あまり型にはまらず、その日によって内容を変えています。
たとえば、季節で体操を変えているんです。
暑い時季には、熱中症対策として汗をかくことが体温調節に大切です。そのため、汗をかく習慣をつけるために、アクティブな運動を取り入れることもあります。
また、果物がおいしい時季には「果物を食べると血糖値が上がりますよね」、年始には「お餅をたくさん食べましたか?」などと声をかけて、下肢の大きな筋肉を動かし、消費カロリーを増やす運動をおこなっています。
──健康体操で心がけていることはありますか?
田中──
なんとなく運動するだけでは効果が出にくいため、ポイントを細かくお伝えしています。
・生活習慣病予防になります
・腰が痛い人に効果的です
・ここの筋力アップにつながります
このように声をかけて、どなたにも当てはまる部分があるように工夫しています。
「私、これに当てはまるわ」と意識していただけると、継続につながると思うんです。
また、「今おこなっている運動はご自宅でもできますよ」や「この筋肉は動かさないとすぐに落ちてしまうので、一緒に頑張りましょうね」とお伝えし、自宅でも教室でおこなっている運動を思い出して取り組んでいただけるよう工夫しています。
──健康体操の教室をしていて印象に残っているエピソードはありますか?
田中──
運動教室に来ている人で、「今まで転倒することが多かったけれど、運動教室に参加してからあまり転ばなくなったのよ」と教えてくださった人がいました。
また、スクワットがあまりできなかった人が、何回も安定してできるようになると、筋力がついて運動習慣もついてきたんだなと思い、やりがいを感じます。
参加者さん同士で交流しているようすを見るのもうれしいです。今日の運動教室は80代のかたが多かったのですが、80代で片足立ちがふらつかないのは本当にすごいと思います。
日々の運動の積み重ねが大切だということを、参加者の皆さんから学ばせていただいています。
参加を検討しているかたにメッセージ
──参加してみたいなと思うかたにメッセージをお願いします
田中──
行こうかどうしようか迷っているかたは、ぜひ一度足を運んでみてください。激しい運動ではないので、初めてのかたでも安心してご参加いただけます。
もしこの運動が難しいと感じられる場合は、しっかりサポートいたします。まずは一度、ぜひお越しください。体を動かすのは楽しいですよ。
山本──
運動が続かないかたや、一人で続けるのは難しいと感じているかたなど、さまざまなかたにご参加いただきたいです。役に立つ運動教室を提供できていると思いますので、ぜひお越しください。
男性のかたにもぜひご参加いただきたいです。最近は男性の更年期も話題になるようになってきました。更年期症状の緩和にも、運動は効果的だと思います。
運動教室を通じて、運動習慣を身につけ、病気の予防につなげていただけたらうれしいです。皆さまのご参加を心よりお待ちしております。
おわりに
今回の取材では、予防医療プラザの運動教室、運動を習慣化するためのコツを詳しく聞きました。
出不精で運動不足の私にとっては耳の痛い話でしたが、先生の話を聞いて、改めて健康と運動の大切さを感じました。もし運動しなかったら1年後、5年後の自分はどうなっているのだろうと危機感を覚えています。
また、参加者のかたにお話を聞いたときに、表情がいきいきしていて、楽しそうに語ってくださったのが印象的でした。
運動習慣がなかなか身につかないかたや、運動しなければいけないと気になっているかたは、これからも長く健康でいるために、ぜひ予防医療プラザの運動教室を体験してみてはいかがでしょうか。