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パリのワインバー史 〜日本のワインバーの原型をフランスに探る〜

料理王国

パリのワインバー史 〜日本のワインバーの原型をフランスに探る〜

フランスで「ワインバー」は、「Bar à vin(バー ラヴァン)」もしくは「Bistro à vin(ビストロ ラヴァン)」と呼び、「ワインの種類が豊富な飲み屋や居酒屋」を意味する。日本のようにシックでかっこいいイメージの「ワインバー」とは印象がまったく異なるのだ。食べずにワインだけを飲む習慣のないフランスでは、「バー」といってもボリューム満点で食べ応えがあり、ワインに合ったおつまみメニューが豊富。飲んで食べて楽しめる、というのがその基本である。

ワインバー経営者はオーヴェルニュからやってきた

フランスのワインバーの歴史は第二次大戦後に遡る。大戦直後、オーヴェルニュ地方からパリに石炭を売りにやって来た人々が、次第にシャルキュトリーやチーズもパリに持ち込むようになったが、その道中のワイン産地、ボジョレーやロワールから安価でグイグイ飲めるワインを仕入れたことにより、Bar à vin の原形レが生まれた。それらは当時、「Les Bougnats(レ ブニャ)(石炭屋)」と呼ばれ、たいていは石炭を売りながら、飲み屋も兼ね、ワインを売るスタイルだった。そのため、フランスのワインバーでは現在でも、オーヴェルニュ産シャルキュトリーやカンタル産チーズ等が大皿に盛り合わせで出てくることが多いのだ。

また、このレ・ブニャのワインリストは地方の名前だけを記したごく簡単なものだ。ワイングラスというよりコップといいたくなるような気軽な容器に、並々と注いでくれる。このレ・ブニャスタイルは労働者階級の間で一世を風靡し、その伝統は今でも継承されている。

アングロサクソン系ワインバーの台頭

そんなレ・ブニャ流が台頭していたパリで、70年代後半に登場したのが、〝リュクスなワインの自由化〞をコンセプトにした「レクリューズ」である。ワインのお供はシンプルなシャルキュトリーやチーズの盛り合わせだが、それまで高級レストランでしかお目にかかれなかったボルドーの有名シャトーをリストに掲げたのだ。そして足が長く、ぽってりとして容量の大きいワイングラスでサービスするいっぽうで、気軽に飲めるよう、グラス売りも充実させた。

その後80年代に入ってからは、イギリス人やスコットランド人のオーナーが、フランス人の常識を打ち破る新しいスタイルを提案。「ウィリーズ」ではそれまでパリではあまり見かけなかったローヌやラングドック、南ブルゴーニュのワインなどを厳選し、ドメーヌやキュヴェ名も明記してリストアップ。つまみ類ではなく、手を加えた温かいフランス伝統料理を提供するスタイルで人気となる。

そして「ジュヴェニル」は、ワインショップの中にスペインのタパス風料理を楽しめるバーを組み込んで注目される。これらを皮切りに、個性的で幅広い品揃えのワインを提供するバーやビストロが増えていったのである。

若手オーナーたちの個性が光るスタイルは日本へも

そして現在、特に20代から30代の若手オーナーが、「いかにワインをおいしく楽しく飲んでもらうか」を試行錯誤し、新たな提案を試みている。「ロス・ア・モエル」では、料理はセルフサービス、知らないもの同士が合席でわきあい あい和気藹々と飲んで食べる。今年一ツ星を獲得したばかりの「イル・ヴィーノ」は、レストランとバーのドッキング型。ワインリストしか存在せず、注文したワインに合わせて自動的に料理。「ル・ヴェール・ヴォレ」は販売しているワインに合ったシンプルなビストロ料理を販売棚の隣で出す。Bar à vinの田舎イメージを払拭し、ジャズやボサノヴァなど肩肘張らない音楽をBGMにくつろがせる趣向だ。

近年は、このような流行に敏感なパリのスノッブたちを満足させるスタイルを取り入れた店が、東京や大阪にも出現している。今年は日仏交流150周年だが、レ・ブニャで始まったパリのBar à vinも時代とともに少しずつ形を変え、現在のスタイルがひとつの文化となり、日本のワイン好きの心をくすぐっているのだろう。

井上智子 文

本記事は雑誌料理王国第165号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第165号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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