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幸区在住小林さん 万年筆絵 描き続け10年 A6ノートに1200点〈川崎市川崎区・川崎市幸区〉

タウンニュース

万年筆絵 描き続け10年

万年筆でまちの風景を描き続ける小林廣志さん(77)=幸区南幸町在住=が個展「万年筆で描いた散歩絵作品展」をきょう30日、午後3時まで幸区役所1階展示コーナーで開いている。

小林さんは10年ほど前から散歩の途中で気になった景色を万年筆でA6判の小さなノートに描きとめるようになった。これまでに描いた絵は約1200点。今回の作品展では川崎大師、川崎駅東口・西口、夢見ヶ崎動物公園・加瀬山、多摩丘陵、二ヶ領用水など川崎市内を中心に、多摩川、鶴見川、墨田川などの川紀行、旧東海道(日本橋〜品川宿〜川崎宿〜神奈川宿〜程ヶ谷宿)など197点を展示している。

「西行法師」に導かれ描いた

現役時代から万年筆を愛用してきた。青色インクのきれいな色とペン先のすべり、ボールペンにはない味わいが出せる点が気に入っている。今使用のものは絵を描き始めてから3代目。以前はロゴマークやデザインに魅かれモンブランを使っていたこともあったが、「今使うにはちょっと高いね」と笑う。

小林さんがノートに初めて絵を描いたのは2011年1月27日。この日は強い寒気が流れ込み、多摩川見晴らし公園(幸区幸町)で西の空から垂れ下がるような黒い雲が見えた。その迫力に思わずペンを走らせたという。ノートは散歩の記録のために持ち歩いていたが、以来、絵を描くことが増え、いつしか描きたい場所へ足を運ぶように。散歩コースの記録とともに「ここ」と思った場所で立ったままで1時間から2時間かけて描く。絵は全くの独学で、「最初の頃は絵と呼べる代物じゃなかった。描き続けるうちに、らしくなってきた」という。描きためたノートは9冊になった。

最も気に入っている作品は3年前に描いた、平安時代末期の僧侶・西行の終焉の地と言われる大阪府南河内郡の弘川寺。本堂を包むように咲いた隅屋桜の構図に引き込まれた。西行に「おまえさん、せっかく来たんだから描いてみたら」と呼びかけられた気がしたという。麻生区の香林寺の五重塔を描いた時はまちの人と「川崎にこんな京都のような景色があるんですね」と話しながら描いた。そうした土地の人との出会いも楽しみの一つになっている。

目指せ地井さん

散歩は現役を退き時間が出来てからの趣味だが、昔から出歩くことが好きで、浜松で過ごした幼少期には「近所で有名な迷子」だったと笑う。俳優の故・地井武男さんが好きで、地井さんが散歩番組で訪れた場所で自分も描いたときは感慨深かった。

小林さんは幸区出身。疎開先の静岡県や群馬県での生活を経て、小学校入学頃から再び幸区で生活をおくる。「川崎は多摩丘陵や加瀬山の古墳、二ヶ領用水などの先人が造ってきたものが現在も息づいており、現在のものと一緒になってまちを形成している。こんな素晴らしいところに生まれ育ったことを誇りに思う」と話す。今は新型コロナウイルスの影響で電車やバスに乗らないようにしていて遠出ができない。今年はまだ正月の稲毛神社と、川崎市産業振興会館横、JR線路沿いの桜並木を描いただけ。改めて歩いて行ける所を見つめ直そうと思っている。幸区塚越の東明寺など、行ってみたいところはまだたくさんある。コロナが落ち着いたら世界遺産の富岡製糸場に足を運びたいと思っている。

展覧会は今回が8回目。作品がたまってきた2017年に鶴見区の鶴見ふれあい館で初開催。高津区の大山街道ふるさと館で3回、幸区役所日吉合同庁舎で2回、幸区役所は今回を含めて2回になる。開催場所によって、その地域を意識した展示作品を選ぶ作業も楽しい。散歩に出たことで初めて知る場所もたくさんあった。小林さんは「見ていただく皆さんにも、いろんなところに行ったつもりになって楽しんでもらえたらと思っています」と話した。

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