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【消滅可能性自治体】県内の9市町含む全国4割の市町村が該当。一覧公表の「人口戦略会議」とは?その意図や判断基準は?

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静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「消滅可能性自治体」。先生役は静岡新聞の橋本和之論説委員長です。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2024年4月30日放送)
 

(橋本)民間組織「人口戦略会議」は、東京都内で開いたシンポジウムで、将来的に「消滅の可能性がある」とみなした744市町村の一覧を公表しました。全市区町村の40%超にあたります。

(山田)このコーナーでも人口減少は取り上げていますが、「消滅の可能性がある」というと、ちょっとぞっとするような感じがします。

(橋本)現在、全国の市町村の数が約1880で、将来その4割の自治体が、消滅する可能性があるということです。いかに人口減少が深刻かということがよくわかると思うんですが、人口戦略会議がこの数字を発表した狙いも、まさにそこにあるということではないでしょうか。

(山田)狙いがあるとは…?

(橋本)「人口戦略会議」という組織は、人口減少対策を提言する目的で昨年7月に発足した任意団体です。議長を三村明夫日本製鉄名誉会長が務めていて、活動の中心となっているのが副議長の増田寛也日本郵政社長です。

増田さんは、元は現在の国土交通省の官僚で、岩手県知事選に出馬して政治家に転身しました。3期務め、その間に改革派の知事として全国的にも知られるようになり、福田康夫内閣に知事出身の民間閣僚として入閣。総務大臣や地方分権担当大臣を務めました。

2014年に増田さんが議長を務めていた「日本創成会議」という組織が、初めて「消滅可能性自治体」というのを発表し、当時は大きな話題になりました。もう10年も経ったのかという感じなんですが、当時の発表では896市区町村が消滅可能性自治体だと指摘されました。

今回、10年経って第2弾ということになります。2014年に消滅可能性があると指摘された自治体が、ショックを受けて人口減対策に一生懸命取り組んだこともあり、今回の発表ではおよそ100の消滅可能性自治体が減っています。

(山田)じゃあ、改善している自治体もあるんですね。

(橋本)とは言っても、全体の4割は消滅の可能性があるということですから、いかに深刻かということがわかります。

子どもを産む中心世代の女性の数を基に判断

(山田)この消滅可能性の自治体はどういう基準で選ばれてるんですか。

(橋本)5年に1回の国勢調査の結果を基に、国立社会保障・人口問題研究所が昨年末に日本の地域別将来推計人口の令和5年推計というのを発表しました。人口戦略会議はこれを基に、出生率の向上とか人口流出の是正策を考慮しながら、全国の市区町村が将来的にも存続していけるかどうかを分析したということです。

2020年からの30年間で、子供を産む中心世代となる20代、30代の女性が半数以下に減ってしまう自治体は、その先もどんどん人口が減ることになるので、存続が難しくなると判断して「消滅可能性自治体」としています。2014年の発表のときは、2010年から40年までの30年間で推計した数だということです。

(山田)なるほど。なんかやっぱり「消滅」って、新聞の記事を見てもショックが大きいですよね。

(橋本)4月25日付の静岡新聞に、色分けされた日本地図が載っていて、各都道府県にある市区町村のうち消滅可能性自治体と指摘された市区町村がいくつあるかというのをパーセンテージで表示しているんですが、その色分けを見ると一目瞭然なんですね。東北地方が消滅可能性自治体の割合が多く、あとは四国も多くなっています。逆に割合が低いのが、沖縄県で0%なんですよ。

(山田)本当だ。

(橋本)東京は3%になっています。沖縄は出生率が高いので、ということですね。東京は一極集中なので、0%でもおかしくない感じがしますが、奥多摩の方に過疎地域があり、そこが対象になっているようです。

10年前の調査だと、「こんなところが?」と思うんですが、豊島区が消滅可能性自治体に指摘されました。当時は若い女性の減少率が基準を超えたということで、この結果を受けて、子育て支援などに力を入れて今回は脱却しています。

御前崎、牧之原が新たに「消滅可能性自治体」に

(山田)橋本さん、静岡はどうなのかということですね。

(橋本)県内は、35市町のうち、消滅可能性自治体は9市町です。10年前は11市町でしたから、県内でも改善が見られるということですね。

ただ、顔ぶれが変わってます。前回は対象ではなかった御前崎と牧之原の2市が新たに消滅可能性があるとされ、逆に、伊東、南伊豆、小山町、森町の4市町は脱却したということです。

2014​年と​連続して消滅可能性が指摘された市町でも、熱海、下田、伊豆、東伊豆の4市町は若年女性の減少率が前回より改善してます。逆に、松崎、西伊豆、川根本町は悪化したと分析されているということです。

自分の住んでいる自治体に消滅可能性があると言われると、不安に思ったり不快に思う方もいると思います。ただ、自治体の努力で改善するということも実際にあったということなので、あえて厳しい事を言い、改善に向けた取り組みを促すことを狙った報告書だと思います。

(山田)ちょっと市町村を焦らせるというか、危機感を持たせるということですね。

長泉は県内で唯一の「自立持続可能性自治体」

(橋本)一方で、100年後にも若年女性が多いと考えられる自治体を「自立持続可能性自治体」に分類しています。全国で65しかないんですが、県内で唯一長泉町が該当しました。

(山田)いや、ほんとすごいですね。長泉町。

(橋本)子育て支援や教育政策に力を入れているという定評があります。そういう先進自治体の事例も参考にしながら、対策に取り組んでいくことが大事なのかなと思います。

(山田)ただ、やっぱり各市区町村で、お金がある自治体かそうでないかというのもありますよね。

(橋本)この数字を発表すること自体も、「本来はもっと国が負うべき責任を自治体に転嫁しているんじゃないか」という批判もあるんですね。子育て支援策を立てると人口流出が減ったり転入が増えたりすることがあるかもしれませんが、そうした施策には財政支出も伴うので、それができない自治体もたくさんあります。

みんながパイを奪い合うような形でそういうことに力を入れてお金を出していっても、結局は国全体としては人口がどんどん減っていくので、やっぱり消滅可能性がある自治体も増えていくということになると思うんですね。

だから、国全体としてどうするのかを、自治体の努力とは別に、全体を見渡して考えていくってことはやっぱり国の責任としてあるのだろうと思います。

(山田)なるほど。長泉と同じことやっても、ってこともありますもんね。

(橋本)参考にできるところはしていけばいいと思いますが、やっぱり立地や財政状況が違うので、同じことをするのはなかなか難しいという自治体もたくさんあると思います。

人口戦略会議は、今年1月に「人口ビジョン2100」という提言を発表しています。このまま放っておくと、2100年に日本の人口は6300万になると試算されているんですが、8000万人ぐらいで安定化させるために、「今その手を打てば何とか間に合うかもしれない、ラストチャンスだ」ということで国に対策を促しているんです。

若者が結婚したい、子供を持ちたいと思うような社会の環境づくりを進めることが大事だということです。特に所得向上や、不安定な就労を解消する雇用の安定というのが大事で、夫婦がともに働いて、ともに子供を育てる社会の実現が重要だと指摘しています。

(山田)若者が結婚したい、あるいは子供を持ちたいと思える世の中にしていこうという一方で、「大きなお世話だ」っていう意見もあるじゃないですか。この辺もすごく難しいところだなと思うんですけども。

(橋本)そうですね。ただ、「子供を持ちたいと思ってるけど経済的にできない」という人もいっぱいいるので、持ちたいと思えば持てるように環境を整えることが大事だと思うんですね。もちろん持つか持たないかは個人の自由で、それはやっぱり今の社会で尊重されるべきだと思いますが、「持ちたいと思っても持てない」ということが問題なので、そこを解消し、持てるようにすることが必要だと思います。

(山田)今回のこの記事でわかりましたが、もう1つ、2つ先の未来を、少しでもこういうデータで感じ取るのも必要ですね。今日の勉強はこれでおしまい!

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