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「阿弥陀如来の真意」に触れたら「自分の人生を見つめ直す時」SNSで注目のマンガに共感

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「阿弥陀如来の真意」に触れたら「自分の人生を見つめ直す時」SNSで注目のマンガに共感

現役の僧侶(浄土真宗本願寺派)である近藤丸さん(@rinri_y)が描く漫画『ヤンキーと住職』。少々、人付き合いがちょっと苦手な住職と、仏教やその用語が大好きなヤンキーの微笑ましいやりとりを通して、用語の正しい意味や、仏教について学ぶことができる漫画です。


そんな『ヤンキーと住職』の中から特に印象的なエピソードを厳選し、近藤丸さんのインタビューと共にご紹介。怪我をした住職の代わりに、自分がお経をあげにいくというヤンキー君。話していく中で、ヤンキー君の悲しい過去が明らかになります。


檀家にお経をあげにいく途中で怪我をした住職の代わりに、ヤンキー君が「俺が代わりに行く」と言い出した。驚く住職に、「お経で救われる人もいるんだ」と言い、ヤンキー君は自分の過去を語った。

亡くなり方で、生き方の善し悪しを決めることはできない


――ヤンキー君は友人のタクヤが亡くなったことで自分を責めています。それに対する僧侶の命に対する捉え方が胸にしみました。命の善し悪し、命の価値について、仏教はどう捉えているのでしょうか。


近藤丸さん(以下、近藤丸) 漫画のこの言葉は、身近な人が亡くなりその事で苦しんでいる人が目の前にいる状況で、僧侶の口から出てきたということが大切です。適当に議論するための言葉として使われれば、「命の価値は平等」という言葉も虚しいものになってしまいます。


基本的に「命」を「価値」というモノサシで見ないということを、仏教は教えていると思うんですね。「命を平等に見る」というのは、仏さまの見方なんです。私たちの普段の見方からは、このような視線は出てきません。何でも価値や意味を付けてしまっているのが、私たちのものの見方です。しかし、その見方が痛ましいと言っているのが、仏教の教えだと思います。何でも意味と価値で測っていく見方自体に、何か問題性はないかと教えられます。


――その問題とは何なのでしょうか?


近藤丸 私たちは人と比べて自分が劣っていると感じると、「こんな自分は価値がない」と思ってしまう。しかし、そんなことを言っている間に、この命は終わるかもしれない。今日死ぬかもしれない命を生きています。このような厳粛な命の事実から見れば、今ここに生きているという事実があるだけです。その生きていることの価値を、価値づけしてモノサシで測ることは、ずっと生きているつもりの私たちから出る、ある意味で「おごった考え方」ではないでしょうか。


――価値を求めること自体がおごり。生きるということに対する敬意があるんですね。


近藤丸 ブッダが説いた経典にこんな一説があります。


「さとりの国の池にはとても立派な蓮の華が咲いている。青色の蓮華(れんげ)は青い光、黄色の蓮華は黄色い光、赤色の蓮華は赤い光、白色の蓮華は白い色の光を放っている。一輪一輪ちがっており、それらはどれもそのまま香り高く何とも美しく素晴らしい。さとりの国はそのような徳の高い、言葉を超えた素晴らしさで満ちあふれている。(『阿弥陀経』より意訳)」


ブッダの眼は、慈しみの眼・平等の眼。その眼で見ればどんな命もそれぞれに光り輝く平等なもので、それぞれに光り輝いているということです。私たちは縁によっては今日・明日亡くなるかもしれない命を生きています。縁によって長生きする人もいれば、赤ちゃんの時に亡くなる人もいる。そして、それは縁でしかない。長く生きたから価値がある・短かったら価値がないというのは人間の思いから見た見方です。


――確かに、人生が短いか、長いかで判断してしまいそうです。


近藤丸 もちろん、どんな命も必死に「生きよう、生きよう」としている。ですから、出来るだけ長く生きることを願うのは当たり前ですし、誰もが生き生きと生きていける社会を目指すべきです。そのことを否定するものではありません。しかし、縁によって生きている命の事実を見つめるとき、「短いから価値が無かった...」としない見方が、仏教の中で語られてきました。

選ばず見捨てない阿弥陀如来は、悪人さえも救ってくれるの?


――命は平等。そう聞くと救う命も死に様も選ばない阿弥陀如来が思いつきます。ですが、なぜ阿弥陀如来はどんな命でも救ってくれるのでしょうか。


近藤丸 阿弥陀如来という仏さまは、「どんな人でも救いたい」という願いを持ち、「一回でも念仏を称えたらどんな人でも必ず救う」との誓いを立てられました。その救済の対象には限りがありません。どんな悪人でも救いたいという仏さまですが、ここでいう悪人というのは、「悪を作ってしか生きていけない者」という意味です。つまり誰かと言うと、悪人とは自分(私)のこととなります。「あいつは悪だ」と他の人のことを指す言葉ではないのです。


――念仏をとなえた人は必ず救う。穿った見方をすれば、念仏さえとなえれば誰でも救われるともいえます。阿弥陀如来はなぜそんな誓いを立てたのでしょう?


近藤丸 自分の力ではどうしても修行したり、良い行いを積み重ねたりすることができない人(私)がいるから、このような誓いを立てたのです。自分の力で悟れない人を救わずにいられないというのが、阿弥陀如来のお心なのです。浄土真宗の文脈では、「悪を作るつもりが無くても、悪を犯さざるを得ないのが人間である」というのです。善をしようと思っていても、思うままに善ができないものも悪人ですね。私たちは日々、悪を作っている自覚はないと思います。しかし、何気なく生活をしている中で環境を破壊しているという事実がある。毎日、鳥や豚や牛や魚やいろいろな命を頂いて生きている。そうしなければ生きていけないですし、時にはそれが当たり前となり感謝の心すら無くしているのが、私たちの生活のありようです。


――感謝の心を無くしている...そう言われてドキッとする人も多いのではないでしょうか。


近藤丸 仏教では人間の存在を、深く見つめています。状況によって何をするか分からなかったり、悲しいことがあってもすぐに忘れてしまったりする私たちの在り方には、深い意味での悪が含まれているというのです。そういう視点からすると、「悪いことしても救ってくれるからOK」というのは、浅い人間観から発せられた言葉ではないでしょうか。

誰も見捨てない仏の教えに出合った時が、自分の生き方を見つめ直す時


――生きていく上では悪を犯さざるをえない、それなら悪は許されるものなのですか?


近藤丸 悪を積み重ねていいわけではありません。ですが、仏さまの言葉が自分の問題として本当に響いた時、人は生き方を見つめ直すと思うのです。


先輩の僧侶から聞いた話ですが、ある若い僧侶が、浄土真宗の教え、阿弥陀如来の話を聞いて次のように言ったそうです。「どんなあなたでも救うと言われたとき、今の自分のままでいいのかという問いが生じた」。悪を作ってしか生きていけず、生きていることが当たり前になり、おごってしまう私たちです。しかし、そのことを悲しみ、私たちを救いたいと願う仏さまの言葉に触れるとき、自分の問題性に開き直るのではなく、少しずつでも自分をみつめ、自己の生き方を問い直すという方向性も生まれるのかもしれません。


――具体的にはどういったことなのでしょうか?


近藤丸 浄土真宗の教えでは、私たちに求められているのは念仏し、仏さまの教えを聞いていくことだけです。生き方は救いの条件にはならないのです。だけど、どんなあなたでも救うと言われた時、私たちは今のままでいいと開き直る訳ではないのだと思います。誰をも救いたいと願いを立てた仏さまの想いに触れたとき、自分の生き方が問われることが始まる。浄土真宗ではだからこそ教えを聞き続けて、自分の生き方を見つめ直すことが大切だと言われるのです。


――では、私たちは何をすればいいのでしょう?


近藤丸 浄土真宗の場合、仏さまの慈悲を信じることが大切だといわれます。しかし、人間が大いなる慈悲を信じることがどうしてできるかと言うと、大きな慈悲自身が人間に働き、人間の心を転換するからだとされます。自分からそんな慈悲を信じるなんて、できないんだと。なぜなら私たちは、本当の意味で真実を見通す力がないからです。どうしても自己中心的な見方をしてしまい、仏さまの慈悲を信じることができない。しかし、そんな自分の思いを破り大切なことに気づかせる力が、大きな慈悲として働いているのだと考えます。すると自分は愚かであったと分かってくると同時に、ずっと自分を助けようと働いていた仏さまの大きな慈悲があったことも知らされる。こういう論理が浄土真宗の教えの中にあるのです。


仏様の慈悲を信じ、自分を見つめ直す。「死に方で命の価値を決めてはいけない」という教えにふれ、ヤンキー君は自分自身を見つめ直した。悲しい経験をし、仏の教えを知って悲しみから立ち直ったからこそ、ヤンキー君の言葉には住職をはっとさせる重みがあったのだろう。


仏教が生まれてから2500年、人々の喜び、悲しみ、苦悩に寄り添ってきた教えには、現代に生きる人々が抱える悩みを解決に導くヒントがある。漫画『ヤンキーと住職』を読んで、これからの人生の糧になる、大切な言葉や教えを見つけよう。

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