ダン・ブラウン最新作発売!アートと歴史の謎に触れるロバート・ラングドンの映画3選
2025年11月、作家ダン・ブラウンの最新刊が発売され、世界中で注目を集めています。代表作であるロバート・ラングドンシリーズは、トム・ハンクス主演で映画化され、『ダ・ヴィンチ・コード』『天使と悪魔』『インフェルノ』の全3作が大ヒットを記録しました。この記事では、登場する芸術作品とともに、3作品の魅力をご紹介します。 ※映画のネタバレを含みます。
シリーズ第一弾『ダ・ヴィンチ・コード』(2006)
参照:『ダ・ヴィンチ・コード』(2006)
映画『ダ・ヴィンチ・コード』は、ダン・ブラウンの世界的ベストセラー小説を原作とし、トム・ハンクスが主人公のロバート・ラングドンを演じた、ミステリーサスペンス大作です。2006年に公開され、全世界で7億6000万ドル以上の興行収入を記録しました。
レオナルド・ダ・ヴィンチ《ウィトルウィウス的人体図》を模した姿で、ルーヴル美術館の館長が殺害された事件から、映画は始まります。現場に残された暗号の解読をフランス警察から依頼された、宗教象徴学者ラングドンは、暗号解読官ソフィー・ヌヴーと、警察や秘密組織の追跡を逃れながら、ヨーロッパ各地で歴史的な謎を追うことに。
レオナルド・ダ・ヴィンチ《最後の晩餐》(1495~1498)/サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院
事件の鍵となるのは、レオナルド・ダ・ヴィンチ《最後の晩餐》をはじめとする名画や、歴史的遺産に隠された「聖杯」の秘密です。この作品は、「イエス・キリストは独身ではなく、マグダラのマリアと結婚し、子孫を残していた」という、キリスト教の根幹を揺るがす異端の説をテーマに据えています。
2人は、この血筋を長きにわたり秘匿してきたシオン修道会の存在と、キリストの継承者であるソフィー自身の正体に迫ります。単なるミステリーの枠を超え、歴史、アート、宗教を大胆に結びつけた作品として大きな話題を呼びましたが、その内容は世界中で宗教的な議論も巻き起こしました。
作中で《最後の晩餐》がどう扱われたか、詳しくはこちらの記事もご覧ください。
シリーズ第二弾『天使と悪魔』(2009)
参照:『天使と悪魔』(2009)
映画『天使と悪魔』はロバート・ラングドンシリーズの映画第二弾です。監督はロン・ハワード、主演はトム・ハンクスが続投しました。ただし、原作小説の時系列は逆で、本来は『天使と悪魔』がシリーズ第一弾です。
ローマ教皇の死去にともない、新教皇を選出する「コンクラーベ」がバチカン市国で開かれる、緊迫した状況。その最中、CERN(欧州原子核共同研究機構)から強力な爆弾となり得る「反物質」が盗まれ、次期教皇候補の枢機卿4人が誘拐されます。
犯人は、カトリック教会に弾圧された科学者たちの秘密結社「イルミナティ」を名乗り、枢機卿たちを処刑し、最終的に反物質でバチカンを破壊すると脅迫します。
ロバート・ラングドン教授は、CERNの科学者ヴィットリア・ヴェトラと、事件の捜査を始めます。そして、イルミナティが残した暗号「啓示の道」を解き明かし、犠牲者の処刑場所が四大元素(土、空気、火、水)にちなんだ、歴史的芸術家の作品で示されていることを突き止めます。
ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ《聖テレジアの法悦》(1647~1652)/サンタ・マリア・デッラ・ヴィットーリア教会、コルナロ礼拝堂
「啓示の道」へのカギとなるのが、バロック芸術の巨匠、ジャン・ロレンツォ・ベルニーニの彫刻《聖テレジアの法悦》です。聖女テレジアが天使の槍で胸を貫かれ、神の愛に包まれる神秘的な体験、つまり「恍惚(エクスタシー)」を表現しているといわれています。映画では、この彫刻があるサンタ・マリア・デッラ・ヴィットーリア教会が、火による処刑の舞台となりました。
『天使と悪魔』では、ミケランジェロ・ブオナローティ《最後の審判》も少し登場します。作品の見どころを詳しく解説した記事もありますので、併せてお楽しみください。
シリーズ第三弾『インフェルノ』(2016)
参照:『インフェルノ』(2016)
2016年に公開された『インフェルノ』は、ロバート・ラングドンシリーズの映画第三弾です。ロン・ハワードが監督し、トム・ハンクスが主演を務めました。
ロバート・ラングドンは、イタリア・フィレンツェの病院で、記憶を失った状態で目覚めます。そして、大富豪の遺伝学者バートランド・ゾブリストが開発した、世界人口の半分を絶滅させることを目的としたウィルス「インフェルノ」をめぐり、壮大な陰謀に巻き込まれてしまいます。
手がかりになるのが、ルネサンス期の詩人、ダンテ・アリギエーリの叙事詩『神曲』の「地獄篇(インフェルノ)」と、それに関連する芸術作品群です。ラングドンは、ゾブリストが残した手がかりである小型プロジェクターから、一連の謎を解いていきます。
そこで登場するのが、ルネサンスの画家サンドロ・ボッティチェリによる《地獄の見取り図》です。「地獄篇」で描かれた地獄の階層構造を視覚化したペン画であり、映画ではウィルスの隠し場所を示す暗号図として利用されます。
サンドロ・ボッティチェリ《地獄の見取り図》(1480~1495)/バチカン図書館
「『神曲』全100歌のすべてに全面挿絵を施す」という、前例のない野心的な構想がボッティチェリにはありましたが、未完に終わりました。 挿絵の多くは、銀筆による下書きの段階に留まっています。現在、現存する92点の挿絵のうち、大部分はベルリン版画素描館に、そして《地獄の見取り図》を含む一部はバチカン図書館に所蔵されています。
この謎を解くうちに、主人公はヴェッキオ宮殿や「バシリカ・シスターナ」(イスタンブールの地下貯水槽)といった歴史的な場所を巡り、人類の未来をかけたタイムリミットに挑むこととなります。
ボッティチェリの代表作《春(プリマヴェーラ)》や《ヴィーナスの誕生》については、こちらの記事でご紹介しています。
映画でアートと歴史の謎を解こう
『ダ・ヴィンチ・コード』『天使と悪魔』『インフェルノ』。ダン・ブラウンの最新作発売をきっかけに、ロバート・ラングドンシリーズの映画たちを楽しんでみませんか?名作に隠されたダン・ブラウン流のアートと歴史の秘密が、みなさんの知的好奇心を刺激してくれるはずです。
◆参考
ロン・ハワード監督『ダ・ヴィンチ・コード』(2006)
ロン・ハワード監督『天使と悪魔』(2009)
ロン・ハワード監督『インフェルノ』(2016)