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昭和の特撮ヒーロー「人造人間キカイダー」に石ノ森章太郎が託したメッセージとは?

Re:minder

1972年07月08日 NET系特撮テレビドラマ「人造人間キカイダー」放送開始日

忘れ難いヒーロー、人造人間キカイダー


特撮テレビドラマのオープニングで “原作:石森章太郎” というクレジットを何百回と目にして育った、昭和40年代生まれの男子は多いはずだ(以降、改名後の石ノ森章太郎で表記)。
萬画家・石ノ森章太郎先生の原作による綺羅星の如きヒーロー群!

『仮面ライダー』
『変身忍者嵐』
『人造人間キカイダー』
『ロボット刑事』
『イナズマン』
『秘密戦隊ゴレンジャー』

などなど、そのタイトルを思い浮かべただけで胸の高鳴りを抑えがたいものがある。

その中でも最大のヒット作は、今も新作が生まれ続けている『仮面ライダー』であることは論をまたないが、リアルタイムでこれらの実写ヒーロー番組に親しんできた世代としては『人造人間キカイダー』もまた忘れ難いヒーローである。

そう、石ノ森先生が亡くなられてからこの1月ではや26年が経とうとしている。そして “キカイダー” が世に出てからはその倍の52年。しかしながら時の流れに朽ちることなく、その輝きは今も揺るぎない。

石ノ森章太郎が語るキカイダーへの愛着


ⓒ石森プロ

漫画版『人造人間キカイダー』は1972年に週刊少年サンデーで連載がスタートした。しかしまだ幼かった私たちは、漫画版ではなく実写ヒーロー番組でのキカイダーとの出会いが最初で、かつその出会いは強烈であった!

左右非対称な色合い、頭部はケースの中の機械がむき出しになっており、あろうことかその形状も非対称。そんなヒーローをそれまでに見たことがなかったし、漫画版では何度もその姿をバケモノ扱いされている通り、確かにひとつ間違えたら “怪ロボット” と称されるべき外見である。

しかし、当時の子どもたちは誰もキカイダーをバケモノとは思わなかった。それは石ノ森先生をはじめとする制作スタッフによる魅力的な設定のなせるワザゆえである。生前の石ノ森先生は再三にわたり、『キカイダー』に対する愛着を以下のように語っている。

「ぼくのヒーローものの作品にはもう一つ『仮面ライダー』があってキカイダーはその影に隠れがちなんだけど、ホントはね、ぼくの思い入れとしてはキカイダーの方が強いんだよ。(中略)ライダーの後にいろいろと意気込んで取り組んだ作品だけに愛着が強いんだ。キャラクターの出来も最高傑作じゃないかと思ってるくらいなんだ。」

星雲社刊『キカイダー讃歌』伴大介、池田駿介の対談より

なお、この “キカイダー” は漫画版とテレビ版でストーリー展開が異なるが、以下本稿では漫画版にスポットを当ててゆく。

苦悩する主人公、ジローはその先駆者の1人


ⓒ石森プロ

『人造人間キカイダー』は、『ピノキオ』の物語がモチーフとなっている。木で出来た人形のピノキオは、最後に人間となってめでたしめでたしとなる、あの物語。しかしながら、人間になることはそんなにめでたいことなのか? 人間はそんなに素晴らしい生き物なのか? そんな問いかけを、“キカイダー” は読者にこれでもかと呈している。

そして、その問いかけに対する答えへのヒントとして、キカイダーの持つ “不完全な良心回路” が、物語の重要なアイテムとなる。戦闘時におけるキカイダーの左右非対称な形状は、まさにその不完全さを露骨に表現しているのだ。

キカイダーことジローを造ったロボット工学の権威・光明寺博士は、悪い命令には絶対に従わない “良心回路” をジローに取り付けようとするが、その最中にギル博士率いる組織 ”ダーク” のロボットによる襲撃を受けたため、ジローは不完全なままの良心回路しか持たないロボットとして生を受けることになる。その不完全さゆえにジローは、ギル博士の超音波笛の音を聞くと、良心回路が変調をきたして悪の限りを尽くすロボットとなり、光明寺博士の娘でこの物語のヒロインであるミツコにさえ襲いかかろうとするのだ。

そんな不完全な自分に苦悩し、人間に対しコンプレックスを抱き続けたジローは、いつしか次のような心情を吐露するようになる。

「ぼくはひとりで… 人間と同じように自然に…『良心回路』を完全なものに近づけていきます。そう “成長” するように努力がしたいんです‼」

そして読み進めるうちに私たちは気づきます。人間こそが「不完全な良心回路」の持ち主なのではないかと。

以後、アニメ界でも特撮界でも、ヒーローものと言われるジャンルに “苦悩する主人公” “ただかっこ良いだけではない主人公” が続々と登場するようになる。その流れにおいて、ジローがその先駆者の1人と言えることは間違いない。

キカイダーが世に出てから52年。“機械” は目覚ましい進歩を遂げ、人間の生活に大きく寄与している。一方で人間はどうか。「不完全な良心回路」さえ持ち合わせていないとしか思えないような、狂気の沙汰としか思えないような、凶悪で、無残で、愚かしい所業を引き起こす人間が後を絶たない。

人間の中に共存する “悪” と “良心” をモチーフとした石ノ森章太郎


ⓒ石森プロ

漫画版『人造人間キカイダー』は衝撃的なシーンで幕を下ろす。ジローの最後のセリフはこうである。

「おれはこれで… 人間と同じになった…‼ だがそれとひきかえにおれは…こ れから永久に “悪” と “良心” の心のたたかいに苦しめられるだろう…」

永久の生命を持つジローは、21世紀となった今もどこかで、“心のたたかい” に苦しめられながら生きているのだろう。作中で語られている通りに、ジローの不完全な良心回路が半世紀を経て“成長”していたならば、今も世界中で “成長” しない人間たちが繰り返す愚行をどう見ているだろうか。そして今、石ノ森先生がご存命ならば、この混沌とした21世紀の世の中にどのようなヒーローを生み出したのだろうか。

きっと今も変わらず、人間の中に共存する “悪” と “良心” をモチーフとしたものになったのではないか、という気がしてならない。

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