世紀を超えて家族でつなぐ老舗の味【春乃色食堂】名物はダシしみる南砺・福光の「おでん」と昔懐かしい「中華そば」
富山県の南西に位置する南砺市。里山と豊富な水に恵まれ、古くから農業や林業が盛んな地域として知られ、隣接する金沢市との交流も多いことから広い文化圏・商圏の一角を担ってきました。
南砺市の中核をなす福光地域の中心部もそのひとつ。加賀藩政の時代から金沢と五箇山を結ぶ街道沿いに飲食店や商店が栄えてきました。
そんな福光のまちなかに、大正時代の創業で100年を超えて愛される老舗食堂があります。
大正12年創業 南砺市福光の「春乃色食堂」
1923(大正12)年創業、「春乃色食堂(はるのいろしょくどう)」です。
奈良時代の創建とされる由緒正しい宇佐八幡宮の杜のほとり、辺りの建物や道の装いはすっかりきれいに変わったところもありますが、ここだけ何年も前から時間が止まったかのような面影を残します。
もともとは、初代店主の田畠外三郎さんが加賀藩の米蔵だった建物を改装してオープンしました。今で言うリノベーションを1世紀も前から先取りしていたといったところでしょうか。
店名の「春乃色」は、初代が作ったお酒「春乃色」に由来しています。
創業時から変わらない味。名物は「おでん」
店内に入った瞬間から、ダシのいい香りが漂います。
その正体は、春乃色食堂の名物「おでん」。
創業から変わらない味を守り続けていて、店を訪れる客のほとんどが注文する看板メニューです。
カウンターに作り付けられたおでん鍋の蓋を開けると、およそ10種類のおでんの具が煮込まれています。
1年を通して食べることができますが、季節によっておでん種が変わるのだそう。
ダシがしみしみの「大根」
冬になると登場するのが、おでんの定番「大根」。
極厚の大きな大根は、初代から受け継がれるダシでじっくりと煮込まれています。箸で割ってみると…中までしっかり飴色。見るからに味がしみています。
噛むとほろりと崩れた大根からじゅわ~っとダシがあふれ出して、まるでスープを飲んでいるかのような印象です。
1番人気は「焼きどうふ」
そんな定番の大根をおさえて、実は1番の人気のおでん種は「焼きどうふ」。大根と比べても…ご覧の通り、存在感のある大きさです。
こちらも、すみずみまでダシの色に染まって味が中までしみています。醤油と鰹節、砂糖で仕込むシンプルなダシは、素朴でありながらも大豆の味をしっかりと引き出して、味わい深いおでんに仕上がっています。
富山県西部ならではのおでん種。具だくさんの「まるやま」
福光地域をはじめとする県西部で親しまれているのが、「まるやま」。
聞きなれない人もいるでしょう。「まるやま」とは「がんもどき」のことで、有名な豆腐店があった京都市東山区の地名「円山」に由来するとされる砺波や南砺地域の方言です。
ですが、この地域の「まるやま」は、ただのがんもどきではありません。焼きどうふや大根と比べても負けないそのサイズ感。箸で割るとーー
中からたくさんの具が飛び出します。
シイタケやニンジン、タケノコ、レンコンやゴボウなどの根菜に、銀杏も入った、かやく入りのまるやまです。これだけで食べごたえがあって立派なおかずにもなるので、まるやまとごはんを一緒に注文する客も少なくありません。
昔懐かしい「中華そば」は580円
おでんと並んで人気なのが「中華そば」。
素朴であっさり、やさしい味わいで懐かしさを感じます。こちらも先代から受け継いだ作り方で、その味を守っているのだそう。
澄んだスープにのどごしのいい中華麺。ひかえめなチャーシューとネギ・メンマに、仕上げは赤巻きカマボコです。
家族でつなぐ味 現在は3代目店主の大輔さん
現在の店主は、3代目となる田畠大輔さん。
先代となる2代目は祖父の田畠幸次郎さんで、定年退職後に初代の外三郎さんから店を引き継ぎました。大輔さんは幸次郎さんが店を切り盛りするのを傍で見ながら、日ごろから料理を教わっていたんだそう。
「たくさんの人に、おでんや中華そばを食べてもらいたいですね。小さなお子さんが大きくなっても、また来てもらえるような店になりたい」(大輔さん)
若い3代目店主は、100年を超えてまちに愛される味をしっかりと守っています。
冬のこの季節は心まであたためてくれるような老舗の食堂です。
出典:KNBテレビ「いっちゃんKNB」
2024年12月3日放送
記事編集:nan-nan編集部
【春乃色食堂】
住所 富山県南砺市福光新町6808-2
営業時間 11:00~18:00
(木曜は17:00まで)
定休日 日曜