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お城に関する素朴な疑問を深掘り!第22回「城の自由研究コンテスト」小学生の部・中学生の部 レポート

城びと

お城に関する素朴な疑問を深掘り!第22回「城の自由研究コンテスト」小学生の部・中学生の部 レポート

全国の小学生・中学生を対象に(公財)日本城郭協会が毎年募集している「城の自由研究コンテスト」。「お城EXPO」で展示されている受賞作品をご覧になって、その着眼点やハイレベルな研究内容に感心し驚いた方も多いのではないでしょうか。今回は、2023年度に募集した第22回「城の自由研究コンテスト」各賞の受賞作品と「お城EXPO 2023」で行われた表彰式の模様を、審査委員長の加藤理文先生による講評と併せてご紹介します。

第22回「城の自由研究コンテスト」受賞者と審査員の皆さんによる記念撮影

「城の自由研究コンテスト」とは?

毎年小学生・中学生を対象に、お城をテーマにした夏休みの自由研究を募集しているコンテスト(個人でも団体でも応募可)。応募作品は小学生の部と中学生の部に分けて1次審査から最終審査まで3回の審査を経て、文部科学大臣賞、日本城郭協会賞、ワン・パブリッシング賞、優秀賞、佳作を選出。12月に入賞作品を発表し、表彰式を行っています。2016年から優秀作品が「お城EXPO」で展示されるようになり、大人・子ども問わずその存在を知ったお城ファンも多いことでしょう。

第22回「城の自由研究コンテスト」審査結果を発表!

2023年に募集された第22回のコンテストは、小学生の部が個人応募54作品・団体応募49作品(11団体13校)の計103作品、中学生の部が個人応募20作品・団体応募88作品(14団体)の計108作品の応募がありました。それぞれ1次審査と2次審査を通過した10作品に対して最終審査が行われ、各審査員の採点と評価で最高得点を集めた作品に文部科学大臣賞、続く高得点の作品に日本城郭協会賞とワン・パブリッシング賞をそれぞれ選出。さらに優秀賞に7作品、佳作に8作品が選ばれました。

では各部門の受賞作品を、審査委員長を務めた日本城郭協会理事・加藤理文先生による一部講評と併せてご紹介しましょう。

■文部科学大臣賞(小学生の部)



「ようがいの地にきずかれた世田谷城 西がわだけがなぜか弱い?!世田谷線おほり説を立てる」(各務日乃/小3)

素朴な疑問から仮説を立て、地形図・陰影起伏図・古写真を調べ、さらに現地調査を実施し、ペットボトルを使った現地での実験など、多角的方法で証明しようとしていく過程が非常に素晴らしいと思いました。結論に至るまで解き明かしていく文章も秀逸で、読んでいて引き込まれる程でした。失われた城跡で、これだけの研究が出来るということを知らしめる大変素晴らしい作品です。

■文部科学大臣賞(中学生の部)


「道庭城いざ復元」(中村潔敬/中3)

(中村潔敬さんの)曾祖父の「半田村」は元々「道庭村」との仮説を検証するために、明治以降の地形図や発掘調査資料を読み取り、現地調査を経て城の場所を特定することが出来ました。道庭城を方形館として復元し、後世に伝えたいとして上手にまとめまで持っていくことが出来ました。具体的な模型を作ったことも、評価の対象としました。

■日本城郭協会賞(小学生の部)


「これからのお城の生きる道~名古屋城バリアフリー問題から考える これからのお城のあり方や名古屋城木造再建について~」(鵜飼 壮/小6)

極めて難しい課題を、あらゆる角度から徹底的に分析し、松本城など他5城を現地取材することで、より深めることが出来ました。現存天守、木造再建天守、RC造の再建天守、石垣だけの城という取材先の選択もすばらしく、木造再建だけでない城全体を考えることでより作品に厚みが加わりました。

■日本城郭協会賞・ワン・パブリッシング賞(中学生の部)※ダブル受賞


「道庭城の謎は沼にある」(足立晴音/中1)

中村さんの作品と甲乙つけがたく、審査員一同熟考を重ねた結果、ダブル受賞と言う特別な評価をしました。小学校からの継続調査で、今回も非常に丁寧にそしてしっかりと裏付けを取る調査が出来ています。川と道と言う地形の違いから、水運と陸運の要衝の重要性に気付き、それを今までの調査で得た膨大な資料と結び付け、さらにそばたか神社と有力氏族との関係にも言及し、結論付けていく過程が素晴らしかったと思います。

■ワン・パブリッシング賞(小学生の部)



「枡形進化論 ~枡形は古から受け継がれた由緒ある仕掛けだった~」(外林海星/小6)

枡形について、弥生時代の吉野ケ里遺跡に始まる囲郭集落まで遡らせ、自分なりの仮説を立て17ヶ所の現地調査を実施し、防御力・攻撃力・びびらせ力・発想力・造りやすさの5項目を定めて比較検討したところが面白かったと思います。マインクラフトを使った模型も効果的で、模造紙のまとめ方も非常に上手で、この2つも評価対象としました。

■優秀賞(小学生の部)

「初めての自由研究 家康ゆかりの城」(猪野康介/小2)

「池田輝政と姫路城」(長谷川太一/小5)

「「城地名」はどこにある」(鈴木遼太/小5)

「秋月城(陣屋)防衛計画論考」(中川瑞祥/小6)

小学生の段階は、まず楽しみながら調べられることです。そして、他の人の意見も参考にしてみましょう。そこから、自分なりの言葉で、思ったことをまとめられれば、良い作品になると思います。

■優秀賞(中学生の部)

「未来に残す石垣構造」(内田智也/中1)

「古文書から読み説く 掛川城の真の姿Ⅲ~歴史に隠されたもう一つの掛川城~」(中脇光翼/中2)

「関東甲信の城-発達の共通点と相違点」(伊藤拓生/中3)

調べたことを、自分なりに考えて結論付けて、まとめることをしてみましょう。共通点と相違点に踏み込んでまとめれば、もっと良い作品になります。

■佳作

「僕だったらどうする!?~山中城の戦いから考える 北条氏の守り方~」(小川 正/小3)

「攻城戦最強の城はどこだ!!!~平山城の謎に迫る~」(加藤大芽/小5)

「お城歴一年の僕が調べる 福山城と現存天守の謎」(割鞘凛人/小5)

「「城」が表す時代の変化について」(清水愛心/中1)

「天空の城 備中松山城の謎に迫る~備前 宇喜多直家・秀家の城との比較を通して~」(川上結輝/中2)

「1700年の宇都宮史~北関東最強の宇都宮氏と宇都宮城~」(佐藤悠翔/中2)

「鉄砲と『円』の関係~諏訪原城、田中城、真田丸~」(小林潤喜・亀山麟太郎・鈴木駿真/中2)

「武田流築城術は本当に武田流?~諏訪原城の要 丸馬出~」(篠宮颯介/中3)

一番大事なことは、好きなことを楽しく調べることです。関連するいろいろな本を読んで、参考にしたり、まとめたりすることも良いと思います。

■団体賞

残念ながら今回は該当がありませんでした。

新しい試みも!「お城EXPO 2023」で作品展示&表彰式を開催

入賞作品は例年通り12月開催の「お城EXPO 2023」会場で特別展示。より多くの来城者にご覧いただけるよう上位入賞作品は複製も用意し、大人のお城好きがハイレベルな作品をじっくり熱心に読んだり、親御さんに連れられた子どもが興味深く作品に見入ったりなど、展示エリアは多くの人々で賑わっていました。

「お城EXPO 2023」会場での受賞作品展示の様子

表彰式も「お城EXPO 2023」の一般来城者たちが入場できるスペースで開催。冒頭の主催者挨拶で小和田哲男理事長が「疑問や関心を持ったら自分なりに深堀りし、本ではなく現地で関係者に直接話を聞くことが研究姿勢として重要です。受賞者はそれが実践できていると感じたし、気付かされた点もありました。研究に終わりはありません。通説・定説を突き崩すという気持ちで取り組むことが大事です」と述べ、受賞者一人ひとりに賞状を授与しました。

さらに、加藤理文審査員長が受賞作品について講評した後、文部科学大臣賞受賞の各務日乃さん、中村潔敬さん、日本城郭協会賞とワン・パブリッシング賞を同時受賞した足立晴音さんに受賞作を説明してもらい、審査員の方々と「城の自由研究」のポイントについてトークセッションも実施しました。これは今回からの新しい試みでしたが、受賞者の皆さんのプレゼンテーションや審査員の先生との受け答えが実に堂々としていてビックリ! 緻密に研究を積み重ねたからこその自信なのでしょうね。

文部科学大臣賞受賞の各務さんが、小学3年生とは思えない堂々とした落ち着きぶりで受賞作を説明

中学生の部で文部科学大臣賞受賞の中村さんと日本城郭協会賞・ワン・パブリッシング賞ダブル受賞の足立さんは、審査員と「城の自由研究」のポイントについてトーク

来年チャレンジしたいと思っている小学生・中学生へのアドバイス

このレポートを読んで「面白そうだから来年はお城の自由研究をやってみようかな」と興味を持った小学生・中学生の皆さんにアドバイス! 加藤先生によると、自由研究において大切なのは「関連資料を集めてまとめるだけでなく、現地踏査を実施して内容を検証し、その過程をしっかり文章化すること」。つまり、実際にお城の現場や周辺地域へ足を運び、自分で見聞きした情報も研究内容に落とし込むということです。

文部科学大臣賞を受賞した中村さんも「自由研究にまとめるにあたり大切にしたことは、先行研究を明らかにし、現地へ何度も足を運び、そして関連しそうな資料を集めて考えることです。インターネットの情報も不可欠ですが、さまざまな情報を広く集めて考えることの大切さを実感しました」と語っています。地元近辺のお城であれば現地まで足を運びやすいと思うので、自由に使える時間が多い夏休みを最大限に活用してください。

また、図表、模造紙、模型など文章以外の手段で説明をまとめることも、作品内容に厚みが増すため審査において評価されるそうです。これらのアドバイスを参考に、自分なりの疑問や関心をテーマに、ぜひ自由研究にチャレンジしましょう!

「城の自由研究コンテスト」

主催 公益財団法人日本城郭協会/株式会社ワン・パブリッシング

後援 文部科学省/教育新聞社/読売KODOMO新聞/読売中高生新聞/城びと

協力 童友社

▼城の自由研究コンテストについては、日本城郭協会のサイトをチェック!

執筆/城びと編集部 協力/日本城郭協会

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