Penthouse「ナンセンス」インタビュー――バンド史上最大規模となるワンマンライブを終え、2025年の幕開けを飾る新曲をリリース!
──Penthouseは昨年12月にパシフィコ横浜 国立大ホールでワンマンライブ『Penthouse ONE MAN LIVE 2024 “Laundry”』を開催しましたが、いかがでしたか? 率直な感想から聞かせてください。
大原拓真(Ba)「今までで一番大きな会場でやらせてもらって、演出面でも今まで出来なかったことがたくさんできたライブでした。これまでの曲も含めて、それぞれの見せ方をまた一から考え直して皆さんにお届け出来たライブでした」
大島真帆(Vo/Cho)「率直にものすごく楽しかったです。もっと緊張するかな?と思っていたんですが、それ以上に興奮や楽しさが上回りました。去年1年間、いろいろなところでたくさんライブをやらせていただいて、着実に自分たちの成長や、ファンの方の巻き込み方、私たちなりのやり方がわかってきたところだったので、ある程度自信を持って臨めたライブだったというのも大きかったです」
浪岡真太郎(Vo、Gt)「ステージが大きくなっていっている分、お客さんとの距離はちょっとずつ離れてしまうというか、どうしてもステージ上とお客さんの間に壁ができやすいのかな?と思っていました。でも「我愛你」でコール&レスポンスをやっているときは、メンバーも素だったし、お客さんとも近づくことができました。それは発見でした。“ステージが大きくなっても、お客さんとの心を通わせながらライブを作ることは出来るんだな“と。それを学ぶことができたのはすごく良かったです」
──今、浪岡さんが「我愛你」での景色を話してくださいましたが、大原さん、大島さんは特に印象的だった楽曲や景色を挙げるとしたら何になりますか?
大原「個人的に印象に残った曲は「一難」です。「一難」は盛り上がるけど音楽的なこだわりもあって、見せ方の選択肢の多い楽曲なんですが、パシフィコではビジョンを使った演出にしました。その結果、あの曲の持っているポテンシャルを現時点で一番引き出せたと思いますし、来てくれた方からも“「一難」が良かった!”という声をたくさんもらえたので良かったです」
大島「私は去年11月にリリースしたアルバム『Laundry』に入っている曲…中でも「Taxi to the Moon」、「Raise Your Hands Up」、「Kitchen」は印象深かったです。「Taxi to the Moon」はビジョンを使って、後ろにMVを映し出しながら、MV内でキャラクターが踊っているダンスを私が踊ったんですけど、客席にいるお客様も一緒に踊ってくれたりして。その姿を見ながら一緒に音楽を楽しむことが出来たのが嬉しかったたです。「Kitchen」はアルバムでは9m88さんをフィーチャリングゲストに迎えていますが、ライブでは9m88さんのパートを私が歌うツインボーカルの形で披露しました。ステージ上のセットの中を歩きながら、その空間を見せるという演出で…。その見せ方も含めて皆様からの反応も良く、嬉しかったです。「Raise Your Hands Up」はゴスペルの方に入っていただいて。声の厚みや高揚感をライブでもしっかり見せられて良かったです」
──そして5月には台湾公演を含むツアー『Penthouse ONE MAN LIVE TOUR 2025 “Midnight Diner”』が決定しました。このツアーはどのようなツアーになりそうですか? 楽しみなことなども教えてください。
大原「まだ具体的なことは話し合っていないんですが、今回のパシフィコ公演では音楽だけじゃない部分も含めて“ライブを作る”という意味での選択肢が広がったと思うので、またいろいろなアイデアを結集させたライブにしたいです」
大島「東京公演の会場は国際フォーラム ホールA。私自身、いろいろなアーティストさんのライブを見に行かせていただいたステージなので、そこに自分たちが立ったときにどんなことができるんだろう?とワクワクしています。今、大原が言ったように、まだ具体的なことは決まっていませんし、自分の中でも全然イメージが出来ていないのですが、単純にワクワクしていますし、パシフィコでの経験を踏まえて、さらに楽しんでいただけるライブに出来れば…と思っています」
浪岡「そうですね〜…5月の最後は福岡で、6月の最後が札幌なので、連泊していろいろ食べたりするのが楽しみです(笑)」
──台湾公演はいかがですか?
大原「誰かが台湾公演について言うかな?と思って言わないようにしていたんですが(笑)、もちろん楽しみです! 前回台湾でライブをやったときは、日本のお客さんよりもホットなんじゃないかと思うくらい、みんながすごく声を出してくれたので、また一緒に歌えるのが楽しみです」
大島「まだわからないですけど、9m88さんも来てもらえたらいいな…と。9m88さんには“次、台湾に来るときはライブに呼んで!”と言っていただいたので、実現するといいなと思っています」
──ツアーも楽しみな2025年ですが、まずは新曲「ナンセンス」のリリースが控えています。この曲はテレビドラマ『秘密 ~THE TOP SECRET~』のオープニング曲として書き下ろされた楽曲です。作品のどのようなところからインスピレーションを受けて、書き始めていったのでしょうか?
浪岡「ミステリー要素が大きな部分を占める作品なので、元気さや明るさよりも、おしゃれさや怪しさを入れようと思いました。先方から、リファレンスとして“「一難」や「蜘蛛ノ糸」のような楽曲を”と言っていただいていたので、その雰囲気でまずは作ってみようかな?というところが出発点でした」
──歌詞はかなりメッセージ性の強い、かつ攻めた内容です。歌詞で描く内容についてはどのようなことを?
大原「そんなに作品に準拠しすぎなくていいというオーダーだったんですが、とは言え、全く違うことを書くのも違うよなと思っていて。浪岡からデモが上がってくるときって、いつも、メロディにあわせた適当な言葉が入った仮歌詞付きの状態なんです。それに<ナンセンス>というワードが入っていて。いろいろ当てはめてみたんですが、<ナンセンス>が一番ハマりがよかったんです。で、ドラマは、脳を特殊なMRIスキャナーにかけ生前の記憶を映像化するというMRI捜査が題材で、主人公は、その捜査の倫理観も問われながら、進んでいくという話なんです。それって、いろいろ言ってくる外野はいるけど、それぞれ生きていくしかないという現代社会にも通ずるテーマだと思ったので、<ナンセンス>というワードと、その世界観を重ねて書いていきました」
──浪岡さんはこの歌詞を読んだとき、どう感じましたか?
浪岡「“いいテーマにまとまったな“と思いました。みんな世の中に対するそういう違和感みたいなものは持っていると思いますし、それが今出せるのはいいなって。曲調もギターが歪んでいてロックな感じになっているので、そのへんとも相性が良いですし」
──大島さんはこの曲初めて聴いたときはどういう印象を持ちましたか?
大島「“歌うところいっぱいありそうだな…”と(笑)。でもツインリードボーカルらしい構成で、「一難」にも近くて、たくさんの方に聴いてもらえそうな、いい曲ができたと思いました」
──実際、歌うところは多いと思いますが、歌ってみていかがですか。
大島「苦戦するかな?と思ったんですが、タイアップ曲ということもあって、曲が完成してからレコーディングまで割と時間があったんです。だからその間に細かい言葉の発し方だったり、乗せ方みたいなことは研究できましたし、事前に浪岡から“声を強く硬く”というオーダーもあって、いろいろ相談もしていたので、レコーディングではイメージ通りに歌えました。リズムと韻が気持ち良い曲なので、そこも味わいながら歌うことができました」
──“声を強く硬く”?
大島「はい。“強くて硬い声を出せ”って言うんです。難しいですよね?(笑)」
浪岡「音域的に、僕の声だと張る音域なんですけど、女性が自然に歌うと柔らかくなっちゃう音域なんです。そのテンション感をすり合わせるために、そういうディレクションをしました」
──浪岡さんはご自身で歌う際にはどのようなことを意識しましたか?
浪岡「この曲はさっきも話したようにロックっぽさがあるので、そのあたりが出せるようにヤンチャ感は意識しました。きれいに歌うというよりは、激しく歌おうと」
──では、ギターでは?
浪岡「今回、僕がギターを弾いているパートはないんですけど、フレーズを作る上では、それこそ、この曲のロックっぽさを担保しているのはギターなので、その音色は今までのPenthouseとは違う、ちゃんとロック感の出せるようなギターを意識しました」
──大原さんは演奏する上で意識したことやこだわったことはありますか?
大原「ロック調で、怒りのメッセージがある曲ではあるんですが、聴いているとちょっと踊りたくような要素があるなということは、デモの段階から感じていて。その“踊らせ感”、縦だけじゃなくて横でもノれる感じはベースで担保できるようにということは大事にしました」
──“ロック感”というのは、この楽曲の一つのテーマでもあると思うのですが、それはどこから出てきたアイデアだったのでしょうか?
浪岡「僕、去年ギターを買って、エフェクターを買うのにハマったんです。だからエフェクターを生かした曲作りをしていたら結果こんな感じになったっていう感じです。あとは「一難」や「蜘蛛ノ糸」とコード進行が近いので、そこから離すという意味で別のアプローチをしたいという気持ちもありました」
──ギターを買ってエフェクターを試したいから、というピュアな理由だったんですね。そもそも去年、ギターを買ったのはどうしてですか?
浪岡「いや、単純に今まで自分のギターを持っていなかったので。人のギターを借りていて。だからちゃんと自分のものを買おうかな?と思ったのがきっかけです」
──ご自身が演奏する上で意識したことやこだわった点を伺いましたが、今日ここにいないメンバーのパートも含めて、ご自身のパート以外で好きなポイントを教えてください。
浪岡「僕は1番と2番の間の間奏…ピアノのところです。最初、ホーンにしようかな?とも思ったんですが、盛り上がっている箇所が多い曲だったので、ちょっと落とした雰囲気にしたいと思って、Cateenに“ピアノでフレーズ考えて欲しいんだけど”と連絡して出来上がったのがこのフレーズです。ピアノがすごく立っていて気に入っています」
大原「ギターかドラムについて言ったほうがいいなと思いつつ…管楽器で(笑)。ホーンセクションのレコーディングって、いつもは録ってもらったものを送ってもらう形なんですが、今回はレコーディングスタジオで一緒にレコーディングすることが出来ました。ロックなテイストなので、ホーンにもパワーが欲しかったので、コミュニケーションを取りながらレコーディングすることが出来て。ロックっぽさや疾走感を、ホーンでプラスしてもらいたかったので、カッコ良いホーンになって良かったです」
大島「私も管楽器を言おうと思っていたんですが、メンバーの話をしておかないと拗ねちゃうと思うので(笑)、ここはギターで。今回、レコーディングするときにギターの音がすごく耳に入ってきたんです。さっき浪岡も言っていましたが、この曲の雰囲気を作る上で、ギターの音色がすごく大きな役割を担っているなと感じました。ギターのレコーディングには同席していなかったので知らなかったんですけど、ギターの矢野さんによると、「ナンセンス」では同じフレーズを2本録って、右と左、両方から同じものを出しているそうなんです。それを熱弁していたので、ここで言っておきます(笑)。でもそのおかげで、私もロック感を持って歌うことができたので、印象的です」
──左右から同じフレーズを出すという手法はどうして今回取り入れたのでしょうか?
浪岡「ロックではよくある手法なんです。普段のPenthouseはピアノが支配しているところが大きいので、その手法を取ると混み合っちゃうんですけど、今回はギターを前に出したかったので」
──音作りもロックに寄せたと。
浪岡「はい、そうです」
──では歌詞で特に好きなフレーズを教えてください。
大島「私はBメロの歌詞が好きです。<夜はOn and on and on /僕ら怨念飲んでへべれけじゃん>。“そんな韻の踏み方あるんだ!?”って驚きました。<on and on>と<怨念飲んで>って(笑)。でもこれが、歌うとすごく気持ち良いんです。サビが印象的な曲だとは思うんですけど、Bメロにはこういう遊びが散りばめられていて、全体的にすごく面白い歌詞だと思います」
大原「<夜はOn and on and on /僕ら怨念飲んでへべれけじゃん>のところは最初違う歌詞が入っていたんです。でも浪岡と“ハマり的になんか違うよね”という話をしていたら、1行目を浪岡が出してくれました。それを受けて<怨念飲んで>にしました。僕は全体的に気に入っていますけど、特に気に入っているのはAメロに出てくる<正義し放題>です。最初は、“さすがにこの音にはめるには英語じゃないと無理かな?”と思っていたんですけど、じっくりと考えていたら“<放題>がハマりそうだな“と見えてきて、<正義し放題>にたどり着きました。<正義し放題>というたった5文字で、みんなが正義だと思って好き勝手やっているという現代の感じがうまく伝わるフレーズだと思って、気に入っています」
浪岡「僕はサビの<イキる勿れ 黙れ 黙れ>です。すごく共感します。実際にイキっている人は、この歌詞を読んで反省してほしいですね(笑)」
──そんな「ナンセンス」という曲は、Penthouseにとってどんな1曲になりそうですか?
浪岡「テンポも速いし、こういうロックな曲は、ライブで真価を発揮すると思うので、ライブですごく盛り上がる曲になるんじゃないかな? 楽しみです」
──「ナンセンス」のリリースから始まった2025年ですが、Penthouseにとしては、どんな1年にしたいと思っていますか?
浪岡「僕は目標を立てるのがあまり得意じゃないんですけど…曲をたくさん書きたいです。でもそれくらいですね」
大原「Cateenが海外にいてなかなか一緒にライブが出来ないというのが、Penthouseの活動の上での一つの難しさだったのですが、徐々にPenthouseとしてのライブの型が見えてきて、Cateenがいないときの形も安定してきたので、今年はフェスだったりイベントだったり、ライブをする機会が増やしたです。どんどんいろんなところに出ていって、よりみんなに見つけてもらえる1年にできたらいいな…と。もちろんライブでだけじゃなくて、曲が届くという意味でも。とにかくいろんな形で見つけてもらえる1年にしたいです」
大島「特に「ナンセンス」という曲は、より広い人にアプローチする可能性のある曲だと思うので、この曲を皮切りに、広がっていけたらと思っています。別の取材で浪岡が、“今年は起承転結の“転”の年にしたい“と言っていたんですが、実際にSNSを見ていても、これまでは見たことのなかったアイコンの方が”Penthouseっていうバンド、カッコよくね?“と言ってくれているのを見かける機会も増えました。そういう人たちをさらに増やしていって、“Penthouseを聴いていると最新の流行音楽を追えている”と思えるような存在になれたらいいなと思っています」
──楽しみにしています。では最後に、プライベートで今年やりたいことや今年の目標を教えてください。大島「私、マシンピラティスに入会しました」──“ピラティスを始めたい”ではなく、もう“入会した”んですね!?
大島「はい。1月4日に体験に行って、その場で入会しました。身体をしっかり動かして呼吸を整えて、未来に向けて自己投資する一年にできたらいいなと思っています」
大原「僕は人とたくさん会う1年にしたいと思っています。もともと飲み会とか好きなタイプだったんですけど、コロナ禍を経て“そういえば昔ほど、人に会えていないな…”と思って。人と会うことで得られることってすごく多いし、単純に楽しいじゃないですか。一人でずっと考えているよりも前向きになれますし、アイデアも湧いてきます。だから最近あまり会えていない人と久しぶりにご飯を食べに行ったりして、そういうところから刺激を得ていける1年にしていけたらと思って…1月もすでに飲み会をたくさん入れました」──大原さんもすでにもう始めているんですね。
大原「はい」
浪岡「じゃあ僕は、余計なことを始めないっていうのを目標にしようかな。まぁ、やりたいことがパッと思いつかなかっただけですけど。あまり始めない年にしようと思います(笑)」
(おわり)
取材・文/小林千絵
写真/野﨑 慧嗣
LIVE Photo/AZUSA TAKADA
RELEASE INFORMATION
2025年1月20日(月)配信
Penthouse「ナンセンス」
LIVE INFORMATION
5月20日(火) 大阪 フェスティバルホール
5月21日(水) 名古屋 Niterra 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
5月23日(金) 福岡 国際会議場メインホール
6月12日(木) 東京 東京国際フォーラム ホールA
6月14日(土) 台北 Legacy TERA ※詳細後日発表
6月16日(月) 札幌 札幌市教育文化会館 大ホール
Penthouse ONE MAN LIVE TOUR 2025 “Midnight Diner”