生物多様性保全へ意見発表、日米中の高校生が約5日の学習もとに、四日市の「地球環境塾」
三重県四日市市の姉妹都市・米国ロングビーチ市、友好都市・中国天津市の高校生が四日市の高校生と環境問題について意見を交わす「地球環境塾」は8月4日、活動の総仕上げとなる成果発表会を開いた。生物多様性保全のために何をすべきか、高校生たちは母国の状況も紹介しながら、自然を守る地域の活動に積極的に参加し、重要性を発信していきたいとする考えを述べた。
四日市市安島1丁目の「じばさん」で開かれた発表会には、高校生を含む50人余が参加し、質疑などもした。今回の地球環境塾のテーマは「ネイチャーポジティブ」。生物多様性の損失を食い止め、回復傾向へと反転させる「自然再興」の意味がある。それぞれの国から4人ずつ参加しており、7月30日からの交流や視察、学習を通して考えた意見を各国2人ずつの2チームでまとめた。
チームAは、生物多様性保全への取り組みを①研究・調査②保全③啓発の三つの柱として挙げた。海洋汚染でラッコが減り、それによりウニが増え、昆布などの海藻が食い荒らされたロングビーチ市での事例も紹介された。「地球人としてできること」として①自然に触れたり調べたりして環境への関心を持ち、発信する②裏庭や地元の緑地で野生生物や都市での生物多様性を保護するために安全な生息地をつくる③学校やコミュニティー活動への参加を積極的に行い、環境保護の重要性を身近な人に知ってもらう、などの意見にまとめた。
チームBからは、視察した鳥羽水族館での生物多様性保全の取り組み、天津市での生物の生息地の減少、ゴミ分類への市民の意識といった課題などが紹介され、ロングビーチ市の大気汚染対策で公共交通機関の利用についても意見が語られた。「グローバルに私たちができること」として①低炭素である公共交通機関の利用②野生動物の保護③ごみの分別とリサイクルの3つの柱を挙げた。
高校生たちは、言葉の違いはあったが、同じ目的で議論するうちに、あまり気にならなくなったと、交流がうまく進んだ様子も語った。
このあと、名古屋大学大学院環境学研究科特任教授で1級ビオトープ計画管理士の長谷川明子さんが「ネイチャーポジティブ~私たちの行動へ~」と題して講演した。1992年の地球サミット(ブラジル・リオ)以来の気候変動と生物多様性のふたつの重要な取り組みは、急がなければ取り返しがつかない状況にあり、現在も様々な目標が立てられ、努力が続いていることが紹介された。長谷川さんは、私たちが意識して様々な場面で協力し、次の世代に改革への意思を引き継いでいくことが必要だと述べた。土木、生態、景観の3分野の専門家が参画した湖や川の改修工事が始まっている欧州での例や、名古屋市の戸田川緑地の取り組みも紹介した。
生物多様性保全に向け、私たちが何をすべきかを語る長谷川明子さん