介護施設の外国人雇用完全ガイド|採用・受け入れの流れと定着のポイント
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本日のお悩み:介護施設における外国人雇用について
介護施設における外国人雇用について、採用や受け入れの流れを教えてほしいです。
介護施設における外国人雇用の現状
執筆者/専門家
伊藤 浩一
https://mynavi-iryofukushi.jp/media/users/14
「外国人材を採用しても、長く働いてもらえるかどうかが心配」。近年は、介護施設の管理者や採用担当者から、このような悩みを聞くことが増えました。
外国人介護人材を取り巻く環境の変化
介護業界の人材不足が深刻化する中、外国人材の受け入れは、今後ますます重要になっていくと考えられます。しかし、その一方で、外国人材を取り巻く環境が大きく変化していることも事実。以前のように「日本で働きたい人が自然に集まる」という状況では、受け入れが難しくなっています。
介護施設で活用されている外国人雇用制度
現在、介護分野で外国人材を受け入れる主なしくみには、「技能実習(※)」「特定技能」「在留資格『介護』」「EPA(経済連携協定)」の4つがあります。
※令和9年4月1日に廃止され、「育成就労制度」に移行する予定です。
外国人政策と日本語教育を取り巻く変化
それぞれの制度について説明する前に、まずは日本を取り巻く状況を確認しておきましょう。前述したように、日本の介護業界は人材不足が深刻化しており、外国人材を必要としています。しかし、外国人政策や在留管理、日本語教育機関の教育・管理体制は、適正化・厳格化の方向に進んでいます。
外国人材の受け入れに求められる適正な管理体制
例えば、日本語学校の場合、これまでのように単に留学生を受け入れるだけでなく、卒業後の進学・就労の見通し、日本語教育の質、教育成果まで問われるようになりました。留学生のアルバイトについても、在留資格「留学」で認められる活動範囲外となるため、資格外活動許可が必要となり、学校や受け入れ側にも適正な管理が求められます。
外国人材から見た日本の魅力は変化している
大きな変化はほかにもあります。それは、外国人材から見た日本の魅力が、以前とは変わってきたことです。円安の影響もあり、給与面だけで見れば、日本が必ずしも有利とはいえません。海外で人材募集をしていると、外国人材は日本だけを見ているわけではなく、韓国、シンガポール、オーストラリア、ドイツなど、複数の国を比較しながら進路を考えていることを実感します。
外国人介護人材に日本を選んでもらうためのポイント
その中で日本に関心を持ってもらうためには、治安のよさや暮らしやすさ、アニメやポップカルチャーの魅力、介護業界におけるテクノロジーの進化、そして将来的に日本で長く働けるキャリアの見通しなどをていねいに伝えていく必要があるでしょう。
ベトナム中心から多国籍化へ進む人材構成
加えて、人材を送り出す側の状況(国としての状況)も変化しています。これまで介護分野では、ベトナム人材が大きな存在感を放っていました。しかし、ベトナムの経済発展や円安、日本以外の就労先の増加を考えれば、今後も多くの人材が日本を選び続けるとは限りません。EPA介護福祉士候補者の受け入れ状況を見ても、ベトナムについては求職者が減少傾向だとされています。
介護人材の国籍は多様化が進んでいる
参考までにお伝えすると、私が関わる介護福祉士養成校の今年度の1年生は、日本人16人・外国人19人で、初めて外国人学生が日本人学生を上回りました。国籍はベトナム、ネパール、インド、モンゴル、フィリピン、韓国、中国と多様ですが、ベトナム、ネパールが中心である一方、中国からの留学生が増えており、これまでとは異なる変化を感じています。
外国人介護人材の雇用に関する制度
では、介護施設ではどの制度をどのように考え、活用すればよいのでしょうか。
技能実習から育成就労制度への移行
まず、技能実習制度です。技能実習は本来、技能移転による国際貢献を目的とした制度でした。けれど、実際には、日本国内の人手不足を補う労働力として受け入れられてきた側面があります。また、原則として転籍が難しく、一定期間同じ受け入れ先で働き続けなければならないため、外国人材の不利益につながるケースもありました。こうした課題を踏まえ、技能実習制度は、育成就労制度へ移行することになったのです。
■育成就労制度で変わる外国人材の働き方
育成就労制度では、外国人材の本人意向による転籍が、一定要件のもとで認められる方向になっています。法務省資料でも、育成就労外国人の本人意向による転籍を一定要件の下で認めることが示されました。これは、外国人材の権利を守る上で重要な変化です。
■外国人材から選ばれる職場づくりが重要に
ただし、この変化を施設側から見れば、「一度採用すれば一定期間は勤務が継続する」という想定が成り立ちにくくなる可能性があります。つまり、受け入れる施設は、外国人材から選ばれる職場でなければならないのです。
特定技能制度の特徴と課題
次に、特定技能です。特定技能は、人手不足の分野において、一定の技能と日本語能力を持つ外国人を受け入れる制度です。介護分野では、介護技能評価試験や日本語能力に関する要件を満たした人材が特定技能1号として働き、在留期間は通算5年までとなっています。
ちなみに、厚生労働省資料によると、介護分野の特定技能外国人は約44,000人(2024年時点)。都道府県別では大阪府、東京都、神奈川県など、三大都市圏を中心とする都市部に多い傾向があります。
■転職可能な制度だからこその定着対策
特定技能は、施設にとって受け入れやすい制度の一つです。しかし、勤務先の変更が可能であるため、地方の施設では「仕事を覚えたころに、東京や大阪など都市部へ転職してしまう」という悩みも聞かれます。また、外国人材の中には、まず日本の地方で働き、その後都市部へ移動。将来的にはシンガポールなど、他国での勤務を視野に入れる人もいます。
こうした考え方は、外国人の職業選択の自由として、当然尊重されるべきものです。だからこそ、施設側には本人の本音や将来像をていねいに把握し、「ここで働き続けたい」と思える環境を作る努力が求められるでしょう。
■在留資格「介護」が目指す長期的なキャリア形成
一方、在留資格「介護」は、介護福祉士資格を取得した外国人が、日本で介護福祉士として働くための在留資格です。筆者は、介護分野における外国人材育成の大きなゴールは、介護福祉士を取得し、在留資格「介護」につなげることだと考えています。なぜなら、在留資格「介護」は、配偶者や子どもの帯同も可能で長期的に日本で働きやすく、介護福祉士としての専門性を持って活躍できる道だからです。
■介護福祉士国家試験の合格率という課題
ただし、この制度には課題もあります。介護福祉士国家試験の合格率です。厚生労働省の資料(令和7年度)によると、介護福祉士養成施設の新卒者の中で、留学生の合格率は33.7%となっており、決して高くありません。
そのため、今年度からスタートした国家試験のパート合格制度の導入は、外国人材にとって大きな意味を持つと考えられます。この制度では全13科目を3つのパートに分け、合格したパートは翌年以降、試験が免除されるため、外国人材も資格取得に挑戦しやすくなるはずです。
EPAによる外国人介護人材の受け入れ
もう1つのEPAは、インドネシア、フィリピン、ベトナムとの経済連携協定に基づいて、介護福祉士の候補者を受け入れる制度です。候補者は日本の介護施設で就労・研修しながら、介護福祉士国家試験の合格を目指します。
ただし、国によって求職者数やマッチング状況に違いがあり、すべての国から安定的に人材が集まるとは限りません。受け入れ調整機関であるJICWELS(国際厚生事業団)の資料では、インドネシアやフィリピンは高いマッチング率が続く一方、ベトナムは求職者が減少傾向とされていました。
なお、EPAは国家間の制度であり、単なる「労働力の確保」だけでなく、「人材交流」や「国際連携」としての意味合いも持っています。
介護施設における外国人雇用の流れ
最後に、「介護施設はどのような流れで受け入れを考えればよいか」についても紹介しておきます。
まずは受け入れ制度を選択する
第1にやるべきは、制度を選ぶことです。これについては、短期的な人材確保であれば特定技能、長期的な介護福祉士育成であれば留学生から在留資格「介護」へつなげるルート、国際連携を重視するならEPAという考え方が一般的です。ただし、今後は育成就労から特定技能へ、更に介護福祉士取得を経て在留資格「介護」へとつなげるような、長期的な育成ルートを考えることも重要になるでしょう。
採用・マッチングで将来像を確認する
第2に採用・マッチングです。ここでは送り出し機関、日本語学校、介護福祉士養成校、登録支援機関などと連携しながら、本人の日本語能力や介護への関心などを確認します。あわせて、「なぜ日本で働きたいのか」「将来どの国で働きたいのか」「介護福祉士を目指す意思があるのか」などを把握しておくことも大事です。
入職前の生活・職場環境を整備する
第3に入職前準備です。住居や行政手続き、銀行口座、携帯電話、通勤方法といった生活面の準備に加え、施設側では業務手順書、OJT担当者、相談窓口などを整える必要があります。外国人職員が安全に業務を行えるようにするには、言語や文化の違いをカバーするしくみ作り(手順の言語化、数値化など)が求められるため、外国人職員を受け入れることは、業務の見える化を進めるきっかけにもなります。
定着支援とキャリア形成をサポートする
第4に入職後の定着支援です。この段階では定期面談、日本語学習支援、介護記録や申し送りの練習、介護福祉士国家試験対策、生活相談、母国語で相談できる体制、キャリア面談などが必要です。仕事を教えるだけでなく、生活と学習を支えることが、長期的な定着につながるでしょう。
まとめ:外国人介護人材の受け入れで重要なポイント
これからの外国人介護人材の受け入れは、「採用」ではなく「育成戦略」あるいは「キャリアパス戦略」です。育成就労や特定技能では、外国人材の職場選択の自由がより重視されていくでしょう。こうした変化は、外国人本人の権利を守る上で非常に大切ですが、施設側にとっては「選ばれる職場でなければ外国人材が定着しない時代になった」ということでもあります。
外国人材が定着する職場環境を整える
とはいえ、外国人材にとって働きやすい職場は、日本人職員にとっても働きやすい職場です。やさしい日本語、明確な業務手順、ていねいなOJT、相談しやすい関係性、資格取得を支えるしくみ。これらが整えば、介護現場全体の教育力とマネジメント力も高まるでしょう。
外国人介護人材を「労働力」として見るのではなく、ともに介護の未来を作る仲間として迎えること。これからの介護施設には、その姿勢が求められているのではないでしょうか。
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