【大江戸散歩コース】日本橋・八丁堀・京橋~魚河岸でにぎわった日本橋から町奉行所の与力・同心が住む町へ~
大河ドラマの影響か、今にわかに注目を浴びている江戸時代。その江戸期の古地図(切絵図)を見ながらの東京散歩がとても面白いことをご存じだろうか? 今回は、文久3年(1863)の「八町堀霊岸嶋日本橋南之絵図」を手に歩く日本橋・八丁堀・京橋の散歩コースを紹介。タイムスリップを楽しむ特別な散歩体験を!
【日本橋・八丁堀・京橋の切絵図】
八町堀霊岸嶋日本橋南之絵図
切絵図の右上に日本橋が架かる。川沿いには錦絵にも描かれている「蔵屋敷」が立ち並び、江戸城や富士山も描かれている。切絵図にもこの眺望が記されているが、ビルに遮られた現在の光景からは想像できない。ここから左に延びる道が現在の中央通りで、左端に京橋が架かる。
切絵図中央部にいくつもある「町御組屋敷」は、八丁堀の与力・同心組屋敷のこと。左下の神社の絵に「鉄砲図浪ヨケイナリ」と書かれたところが現在も続く鐡砲洲稲荷神社。京橋近くの「畳町」で畳屋を商い、後に江戸箒を作るようになったのが『白木屋傳兵衞』だ。切絵図にはいくつかの川が描かれているが、現在この多くは高速道路になっていることに気づくだろうか。
※掲載の古地図は、江戸の町を32区画に分割して作った切絵図を使用。すべて、麹町にあった金鱗堂が出版したもので、屋号である尾張屋清七から「尾張屋板(版)」と呼ばれる。鮮やかな多色刷りが特徴。
※切絵図内の白色の部分は【大名屋敷などの武家地・御用地】、赤色は【神社仏閣】、灰色は【町屋】、黄色は【道】、青色は【海・川・池】、緑色は【山林・土手・馬場・田畑など】を示している。
【散歩コース】
スタート:三越前駅は地下鉄銀座線で上野駅から7分・180円、地下鉄半蔵門線で大手町駅から2分・180円。
地下鉄銀座線・半蔵門線三越前駅→(すぐ)→日本橋魚河岸発祥之地→(1分/0.1㎞)→日本橋→(11分/0.8㎞)→日本橋日枝神社→(2分/0.1㎞)→其角住居跡→(6分/0.4㎞)→河村瑞賢屋敷跡→(6分/0.4㎞)→永代橋→(13分/0.9㎞)→鐵砲洲稲荷神社→(11分/0.7㎞)→八丁堀の与力・同心組屋敷跡→(12分/0.8㎞)→京橋の親柱→(1分/0.1㎞)→江戸歌舞伎発祥之地→(1分/0.1㎞)→地下鉄銀座線京橋駅
ゴール:京橋駅から地下鉄銀座線で上野駅まで11分・180円、渋谷駅まで18分・210円。
今回のコース◆約4.4km/約1時間10分/約5900歩
江戸時代初期から続いた魚河岸「日本橋魚河岸発祥之地」
17世紀の初めにこの地に魚市場が開設され、昭和10年(1935)に築地に移転するまで300年以上にわたって続いた。日本橋に海苔や佃煮、かつお節など海産物関連の老舗が多いのは、ここに魚河岸があったから。
「日本橋魚河岸発祥之地」詳細
日本橋魚河岸発祥之地(にほんばしうおがしはっしょうのち)
住所:東京都中央区日本橋室町1-8/営業時間:見学自由/アクセス:地下鉄日本橋駅から徒歩3分
江戸五街道の起点となる名橋「日本橋」
初代は木橋で慶長8年(1603)建造。現在の橋は明治44年(1911)建造で国の重要文化財。日本の道路の基点であり、橋の中央部に日本道路元標のプレートが埋め込まれている。南側橋詰には橋の歴史を示す日本橋由来記の碑が立つ。
「日本橋」詳細
日本橋(にほんばし)
住所:東京都中央区日本橋1-1-1/営業時間:見学自由/アクセス:地下鉄日本橋駅から徒歩1分
狛犬に触れて運気上昇を祈願「日本橋日枝神社」
永田町の日枝神社の摂社(御旅所)で400余年の歴史をもつ。境内の狛犬は天を仰ぐ珍しい姿。関東大震災からの復興を願い昭和9年(1934)に奉献されたもので、運気上昇の祈願をする人も多い。
「日本橋日枝神社」詳細
日本橋日枝神社(にほんばしひえじんじゃ)
住所:東京都中央区日本橋茅場町1-6-16/営業時間:拝観自由/アクセス:地下鉄日比谷線・東西線茅場町駅から徒歩1分、地下鉄日本橋駅から徒歩5分
小さな石碑が立つ俳人終焉の地「其角住居跡」
江戸時代中期の俳人・宝井其角(きかく)の住居跡であり、終焉の地。其角は芭蕉の高弟10人の筆頭に数えられるほどで、芭蕉の没後は派手な句風で人気を集め、一派は江戸座と呼ばれた。
「其角住居跡」詳細
其角住居跡(きかくじゅうきょあと)
住所:東京都中央区日本橋茅場町1-6-10/営業時間:見学自由/アクセス:地下鉄日比谷線・東西線茅場町駅から徒歩1分、地下鉄日本橋駅から徒歩5分
治水工事や航路開拓に貢献「河村瑞賢屋敷跡」
河村瑞賢は江戸時代初期に活躍した幕府の御用商人。全国で大規模な治水工事を完成させたり、奥州や出羽から船便で運ばれる年貢米の航路を開拓し、経費や時間の短縮に成功したりした。永代橋通り沿いの屋敷跡に説明版が立つ。
「河村瑞賢屋敷跡」詳細
河村瑞賢屋敷跡(かわむらずいけんやしきあと)
住所:東京都中央区新川1-8-2/営業時間:見学自由/アクセス:地下鉄日比谷線・東西線茅場町駅から徒歩3分
国指定重要文化財のアーチ橋「永代橋」
初代は元禄11年(1698)建造の木橋。文化4年(1807)に富岡八幡宮の祭礼の見物客が殺到して橋が崩落、関東大震災では焼失した。現在の橋は大正15年(1926)建造の鉄橋。
「永代橋」詳細
永代橋(えいたいばし)
住所:東京都中央区新川1~江東区永代1/営業時間:見学自由/アクセス:地下鉄日比谷線・東西線茅場町駅から徒歩13分
全国に知られた海上守護の神「鐵砲洲稲荷神社」
承和8年(841)創建。江戸時代はすぐ前に港があり、米・酒・塩・炭などを運ぶ廻船でにぎわっていた。この様子が歌川広重の『名所江戸百景 鉄炮洲稲荷橋湊神社』に描かれている。
「鐵砲洲稲荷神社」詳細
鐵砲洲稲荷神社(てっぽうずいなりじんじゃ)
住所:東京都中央区湊1-6-7/営業時間:拝観自由/アクセス:JR京葉線・地下鉄日比谷線八丁堀駅から徒歩4分
八丁堀の旦那が住んだ町「八丁堀の与力・同心組屋敷跡」
この地に長さが八町(約873m)の堀があったことが名の由来。享保4年(1719)に、一帯に与力や同心の組屋敷を集めたことで与力・同心の町となる。以来、与力や同心は「八丁堀の旦那」と呼ばれるようになる。
「八丁堀の与力・同心組屋敷跡」詳細
八丁堀の与力・同心組屋敷跡(はっちょうぼりのよりき・どうしんくみやしきあと)
住所:東京都中央区八丁堀3-18-7/営業時間:見学自由/アクセス:JR京葉線・地下鉄日比谷線八丁堀駅から徒歩2分
かつて流れていた川の歴史を偲ぶ「京橋の親柱」
京橋は大川(隅田川)と八丁堀を結ぶ京橋川に架かっていた橋。初代の橋は慶長8年(1603)頃の建造。中央通り沿いに明治時代の親柱2基、大正時代の親柱1基が残されている。
「京橋の親柱」詳細
京橋の親柱(きょうばしのおやばしら)
住所:東京都中央区京橋3-5・銀座1-2・銀座1-11/営業時間:見学自由/アクセス:地下鉄銀座線京橋駅から徒歩1分
勘亭流の刻字が印象的「江戸歌舞伎発祥之地」
寛永元年(1624)に中村座の始祖、猿若勘三郎(初代中村勘三郎)がこの地で興行を始めたのが江戸歌舞伎の始まり。1957年に記念碑が建立された。かたわらに「京橋大根河岸青物市場跡」の碑も立つ。
「江戸歌舞伎発祥之地」詳細
江戸歌舞伎発祥之地(えどかぶきはっしょうのち)
住所:東京都中央区京橋3-4/営業時間:見学自由/アクセス:地下鉄銀座線京橋駅から徒歩1分
【技を極めた一品を!】
天然素材で作る江戸箒『白木屋傳兵衞』
天保元年(1830)創業の箒の専門店。場所を選ばず使えるホウキモロコシ(ほうき草)の箒と、フローリング向きのシュロ(ヤシ科)の箒を創業以来変わらぬ製法で手作りしている。
『白木屋傳兵衞』店舗詳細
白木屋傳兵衞(しろきやでんべえ)
住所:東京都中央区京橋3-9-8/営業時間:10:00~19:00/定休日:日/アクセス:地下鉄銀座線・浅草線宝町駅から徒歩2分
取材・⽂・撮影=アド・グリーン
『古地図であるく 大江戸散歩地図』より