女性活躍推進、今後注力すべきは「男性や管理職の意識改革」 公平な評価制度整備も必要 民間調査
jinjer(東京都新宿区)は2月5日、企業の経営層や人事を担当する553人を対象に「女性活躍推進の取り組みに関する実態」に関する調査を実施、結果を公表した。
企業が行う女性活躍推進に向けた取り組みとして最も多かったのは「育休・産休に伴う柔軟な勤務制度の導入」だが、自身の勤め先で女性が活躍していると感じる理由には「男性社員の育休に関する社内制度も充実している」がもっとも多く挙げられた。女性活躍推進に向けて、女性向けの制度改革に加え、男性社員の意識改革が求められるようすがうかがえる。
最も多く取り組んでいるのは「育休・産休に伴う柔軟な勤務制度の導入」
女性活躍推進に向けた取り組みを行っている企業は全体で59.1%。企業規模別に見ると、最も高かったのは「5000名以上」で、次いで「3001~5000名」、「500~1,000名」、「1001~3000名」という結果になった。一方で取り組みを行っていないと回答した企業も26.9%存在した。
女性活躍推進を行っている企業を対象にその具体的な取り組みを聞いたところ、最も多かったのは「育休・産休に伴う柔軟な勤務制度の導入」(69.2%)。次いで、次いで「男性育休の推進」(63.3%)、「ハラスメント対策を含む、職場環境の改善・社員研修制度の導入」(61.1%)の順となった。
なお、企業で実際に取り組みを開始した時期は「5年以上前」(35.5%)が最も高かった。2015年に女性活躍推進法が施行され、301人以上の企業(※)は自社の女性の活躍に関する状況把握・課題分析と解決するための行動計画の策定を求められるようになっており、大企業を中心に取り組みが進んでいるものとみられる。(※その後、2019年には301人以上から101人以上に改正された)
実際に女性が活躍していると感じるのは「男性育休制度の充実」、今後注力すべき課題の最多は「男性社員の意識改革」
職場で女性が活躍していると答えた企業を対象に理由を尋ねたところ、「男性社員の育休に関する社内制度も充実している」が65.7%と最も多く見られた。そのほか多く見られた意見は「男女ともに家庭との両立ができるような社内制度が充実している」(58.9%)、「育休・産休・介護から復職した女性がキャリアを維持・発展できる仕組みが整っている」(55.2%)という順になった。
なお、「管理職・リーダー職の女性比率が高い」(28.6%)は、女性が活躍していると感じるポイントとしては低かったが、職場で女性が活躍していないと感じる理由としては4割近くが選んだ最多の意見となっている。
また、女性活躍推進に向けた取り組みで、今後注力すべき課題として最も多く選ばれたのは「男性社員の意識改革」(43.1%)。次いで「公平な評価制度の整備」(38.6%)、「経営陣を含めた管理職層の意識改革」(37.4%)の順となり、女性への直接的な支援より、男性や管理職に対する意識改革が重視される傾向がうかがえた。
女性活躍に向け、法制度も整備
出産や育児、介護などにより女性の社会での活躍は大きく左右されていたが、2021年6月に育児・介護休業法が改正され、2022年4月、2022年10月、2023年4月の3回に分けて段階的に施行されている。
施行のタイミング内容2022年4月1日〜
・育児休業を取得しやすい雇用環境の整備
・妊娠・出産の申し出をした労働者に対する個別の周知や意向確認の措置の義務付け
・有期雇用労働者の育児 ・介護休業取得の要件の緩和
2022年10月1日〜
・育児休業の分割取得
・出生時育児休業(産後パパ育休)の新設
2023年4月1日〜
・育児休業の取得の状況の公表の義務付け
資生堂(東京都港区)の「資生堂DE&Iラボ」が10月に発表した、社内のジェンダーバイアスを可視化した調査では、「組織でジェンダー平等を目指すには、ただ『女性活躍に注力』するのではなく、男女比率を均衡に近づける『組織の同質性を解消』することが重要」と分析。その上で、組織の一人ひとりがバイアスに向き合うことで、偏った決め付けや当たり前を疑い、異なる考えに気付き受容できる文化を醸成する「全社的アプローチ」が必要だと結論付けている。
調査の詳細は同社公式ウェブサイトで確認できる。