「熱」と「冷静」の狭間が映し出す複雑な関係性――TVアニメ『呪術廻戦』第3期「死滅回游 前編」連載インタビュー第10回:秤 金次役・中井和哉さん×星綺羅羅役・榊原優希さん
『呪術廻戦』第3期「死滅回游 前編」が、2026年1月8日(木)より放送中です。
放送にあわせ、アニメイトタイムズでは連載インタビューを実施。第10回は秤 金次役・中井和哉さんと星綺羅羅役・榊原優希さんの対談をお届けします。熱を大切にする秤と冷静さを忘れない綺羅羅。一見、対照的なふたりの関係性は、単なるバディという言葉では言い切れない、複雑で多面的な距離感の上に成り立っています。
本稿では、秤が重んじる「熱」の捉え方、星 綺羅羅が持つ可愛さと冷静さのお芝居について深掘り! キャストの視点から見えてきた『呪術廻戦』ならではのキャラクター造形と心理描写の魅力に迫ります。
【写真】TVアニメ『呪術廻戦』第3期 中井和哉&榊原優希が紡ぐ、秤と綺羅羅の関係性【インタビュー】
『呪術廻戦』は、演じるうえで「種」になるものが多い
ーー『呪術廻戦』という作品の印象を教えてください。
星綺羅羅役・榊原優希さん(以下、榊原):僕が読み始める前からすでに話題になっていたのですが、読む前の印象と読後の印象はかなり違いました。
最初は「バトル!バトル!」みたいな作品なのかなって勝手に思っていたんです。でも、いざ読み始めてみると、もちろん戦いの描写も格好良いんですけど、それ以上に心の戦いというか、キャラクターたちの内面の動きがものすごく掘り下げられていて。その心理描写が非常に魅力的でした。「そりゃ流行るよね!」「愛されるよね!」って。
ーー細かいキャラクターの心理描写によって感情移入することができますよね。
榊原:僕自身も漫画が好きなので、「このキャラクターはどんな過去を過ごしてきたんだろう?」と考えてしまうんです。
登場人物の言動を見て、「これは過去編が気になるぞ」と思ったところに、ちゃんと応えてくれる描写が用意されている。「これはみんな好きになるだろうな」と思いました。
秤 金次役・中井和哉さん(以下、中井):僕自身は、世間の盛り上がりを遠くから見ていました(笑)。「へぇ、人気なんだなあ」と思ってアニメを観始めたんです。
ーー作品への参加が決まる前にご覧になったんですね。
中井:そうですね。とにかく絵がスタイリッシュだし、アクションシーンの見せ方もすごく斬新で「これは面白い」と思いました。さっき榊原さんがおっしゃったように、キャラクター一人ひとりが際立っていて、演じ手としても取り組みがいのある作品だなと。
日本のアニメは世界的にも評価されていますが、映像の面でも物語の面でも、「ここまで鋭くて深いものができる」という側面を代表する一本じゃないでしょうか。正直、「関わっている人たちが羨ましいな」と思いましたよ(笑)。
ーー今期はその鋭さに拍車がかかっていて、秤の描写もどのような表現になるのか……。
中井:その通りですね(笑)。「原作ではこうだけど、アニメはどうなるんだろう?」という部分がたくさんありますし、そこも含めてすごく楽しみです。
ーー先ほど「取り組みがい」というお話がありましたが、具体的にはどのようなところですか?
中井:演じるうえで「種」になるものがたくさんある、という感覚ですね。キャラクターの過去を踏まえたうえで「このセリフは本音がふっと漏れているんだな」とか。そういう情報が随所に散りばめられているので、そこを拾っていく楽しさがあります。
榊原:それは僕も感じています。セリフの言葉選びが「そう来るんだ」と思わされることが多くて。キャラクターの変化も積み重なって描かれている印象があります。そういった部分も、お芝居を考えるうえで面白いポイントです。
「星 綺羅羅 CV. 榊原優希」に混乱!?
ーーこれまでの登場人物とはかなり毛色が違う秤と綺羅羅。キャスト発表時の反響はいかがでしたか?
榊原:原作を読んでいると、みなさんそれぞれ脳内の声のイメージがあるじゃないですか。特に綺羅羅さんに関しては、「男性が演じるのか、女性が演じるのか」という部分で、色々な考え方ができるキャラクターだと思っていました。ただ、発表されたときに「榊原優希」という名前を見て、「女性声優さんかな?」って思った方もいたみたいで……(笑)。
ーーそうだったんですね。
榊原:そういうふうに、混乱してくださってる方もいらっしゃって。
中井:「混乱してくださって」(笑)。
榊原:(笑)。恐らく『呪術廻戦』の世界の中で、綺羅羅さんを初めて知った人たちも、同じように混乱したんだろうなって。「榊原優希」という名前を見てもなお混乱している人がいて、改めて綺羅羅さんを演じられて良かったと思いました。
中井:僕はSNSを一切やっていないのですが、ジャンプフェスタのスーパーステージで発表された際に、集英社の方が「会場、湧いてましたよ」と教えてくれたんです。「ああ、それなら大丈夫か」と安心しました。
ーー秤に関しては、序盤から言及されていたこともあり、登場を待っていたファンも多いと思います。
中井:プレッシャーといえばプレッシャーなんですけど、「そんなに期待されても……」という気持ちもあります(笑)。今のところは、比較的好意的に受け止めていただいているようで、非常にホッとしています。ありがたい限りですし、あとは頑張るだけだなと。
秤と綺羅羅、ふたりの世界
ーー秤と綺羅羅について、どのようなイメージを持ってお芝居に臨まれたのでしょうか?
中井:本人も言っていますけど、人生においての一か八かの局面みたいなものが好きというか、そこで「生きている」と実感するタイプの人なんだろうなと。
僕自身はできるだけ穏やかに生きたいタイプなので……(笑)、ある意味で真逆の人間なんですよね。だから、僕からすると「怖いな」「あんまり近寄りたくないな」と思うタイプの象徴みたいな存在でもあって。
ーー別世界の人と言いますか。
中井:だからこそ、その考え方の一端に触れてみると面白いんです。だって、誰しも「ここで人生変えてやろう」みたいな瞬間が全くない訳じゃない。近づいてみると「少し分かるな」と思える部分もありました。そういう意味で、危うさも含めて、惹かれる人がいるのも分かります。
榊原:最初に綺羅羅さんを知った時は、やっぱり見た目から入って、率直に「可愛いな」と思いました。一方で、言動を冷静に見ていくと、実はかなりクールに状況を把握している人でもあって。戦いの最中に「ということは、つまり……」みたいなことを常に考えている。
それと同時に「状況を冷静に見られる子が熱に浮かされて、秤の側にいるんだな」と思うと、すごく説得力を感じたんです。ふたりの関係性って、やっぱり深いものがあるんだなって。綺羅羅さん自身の内面と同じくらい、「秤への思い」や「秤がどういう人間なのか」という要素が、彼を形作るうえですごく大切でした。
ーー綺羅羅を演じるうえでは、秤とセットで考える必要があった。
榊原:そうなんですよね。冷静だからこそ、自分の世界を打ち破った存在=秤に強く惹かれているんだろうなという背景が見えた気はします。そのうえで、「金ちゃんが好き!」という純粋な気持ちも大切にしたくて。
ーーそんな中で、ふたりの関係性をどのように演じられたのでしょうか?
中井:あまり深く考えず、感じたままにやろうと思いました。ふたりの登場シーンは、かなりの“接近戦”じゃないですか。あれだけ見ると「悪い男が連れている女の子」みたいな距離感に見えるので、そこはナチュラルに演じたいなと。
ただ、その後は「秤が綺羅羅をあてにしている」ことが少しずつ分かってきます。自分以外は信用しなさそうな秤が、電話一つで緊急事態だと察する。その時点で「ただ近くに可愛い子を置いている」という関係性ではないですよね。
榊原:そうなんです。このインタビューを読んでくださっている皆さん、綺羅羅さんはただの取り巻きではありません(笑)。
中井:(笑)。僕自身は場面や状況に反応して、感じるままにお芝居をしたいと思っています。そういう意味で、皆さんに色々と考えていただく方が面白いだろうなと。
高専メンバーと交わる秤・綺羅羅
ーー虎杖・伏黒らと接触した際や戦闘シーンのアフレコはいかがでしたか?
榊原:僕の場合は、先ほども話した「クールで、冷静に状況を見ている」という部分を意識しました。ただ、第6話の収録前に、一瞬すごく迷ったというか、収録前に悩んだことがあったんです。「(綺羅羅の)頭の中の声は、どういう声なんだろう?」と。
普段、表に出している声と一緒なのか、もう少しボーイッシュなイメージになるのか。収録前に、何パターンか想定してはいたんです。
中井:なるほど。
榊原:現場では「そのままの綺羅羅さんでいきましょう」というディレクションをいただきました。そこで「ああ、そうだよな」って。何かになろうとするのではなく、星 綺羅羅としてそこにいるだけなんだと納得しました。表と裏があるわけじゃないんですよね。
中井:面白いですね。あまり考えたことがなかったので、聞けて良かったです。
ーー綺羅羅は術式「星間飛行(ラヴランデヴー)」もかなり複雑ですね。
榊原:僕、割とこういうの好きなんですよ! 最初は分かりやすい能力を出して、だんだん難しいものが出てくる感じ(笑)。
ーー中井さんはいかがでしょう?
中井:ファーストインプレッションとしては、もう少し「余裕のある戦い」というイメージだったんですけど、現場で「もっとガッといきましょう」というディレクションがありました。結果として、秤はかなりムキになっていて、虎杖はスッとしている。考えてみたら、その方がしっくりきますよね。
その前の会話シーンでも、本来の秤が持っているお茶目な部分は、割と抑えめになっています。淡々とした会話で「強い」「怖い」という部分を出すことで、虎杖との生き方のコントラストが見えるんです。
ーー最後に、視聴者の皆さんへメッセージをお願いします。
榊原:第6話を観ていただいて、金ちゃんのキャラクターを掴んでいただけたと思います。そんな熱くてかっこいい男・金ちゃんの活躍は、まだまだこれから! 皆さん、綺羅羅さんと一緒に、金ちゃんの活躍を楽しみましょう!
中井:綺羅羅の難しい術式も伏黒の見事な説明とスタッフさんの工夫によって、飲み込みやすくなっているので、「面白い!」と思って観ていただけるはずです。
秤に関しては……大目に見てください(笑)。この先も色々な方面で暴れますので、広い心で受け止めていただけたら嬉しいです。
[インタビュー/タイラ]