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夜道で不審者に追いかけられた女子大生、「クラヴマガ」を習う 積極的に急所を狙う"命を守る"ための護身術

キャリコネニュース

ナイフを持った人が襲ってきたらどうする?

路地裏で身長2メートルの大男に「金を出せ!」と迫られたら、あなたはどうするだろうか。助けを呼ぶ? 逃げる? その前に恐怖で体が動かなくなることもあるだろう。

そんな時に備えておすすめしたいのが「クラヴマガ」だ。クラヴマガとは、米国FBIやSWATなどにも導入されているイスラエル軍発祥の護身術。まだメジャーではないが、2002年に日本にも上陸しており、誰もが取り組みやすい護身術として注目され始めている。

今回は、このクラヴマガを3年間習い続けている大学3年女子が、その魅力を紹介したい。(文:猫飼 あきら)

※取材は昨年12月に実施。現在、取材先の「Maga GYM」は新型コロナウイルス感染拡大防止対策として2人1組でのトレーニング廃止、クラス定員の半減、マスク・軍手・ソックス着用などを行っています。

まずは発声練習 緊急時に「助けて」と声を出せる人は少ない

クラヴマガを始めたきっかけは、私が「弱そうな見た目」をしていたからだ。小柄で見た目も派手ではなく、そのためか「夜道で不審者に追いかけられる」「連絡先をしつこく聞かれる」といった非常に怖い思いをした経験が何度かある。

その経験から護身術に興味を持つようになり、偶然ネットで見つけたのがクラヴマガだった。今までこれと言った運動経験がなかったが、今ではすっかりハマり込んでしまい、コロナ禍前まで週3でジムに通うこともあった。

私が通う「MagaGYM」は赤坂と六本木に2施設ある。この日は初心者向けのクラスを受講した。参加者は男性9人、女性6人の計15人。180センチを超える大柄な男性もいれば、150センチ前後の小柄な女性もいた。

ストレッチやウォームアップを終えると、早速練習だ。クラヴマガでまず大切なのは、「声を出す」こと。トレーナーに「ここは路地裏です。あなたは不審者にお金をせがまれています」と言われ、"危険な状態"を想定した上で、「助けて」と周りに助けを求めたり、大きな声で「落ち着きましょう」と言い相手をなだめたりする練習を行う。

「イスラエル軍発祥の護身術なのに、発声練習? 戦わないの?」と思う人もいるかもしれない。私も最初は「こんなことから始めるんだ!?」と驚いたが、具体的にイメージすることで実際に被害に遭ったときにも反射的に反応できるようにするのが狙いだ。

危ない目に遭った時に「助けて」と声を出せる人は少ない。私も被害に遭った時、何も言うことすらできなかった。

クラヴマガでは、「相手に勝つ」よりも「効率的に自分の命を守る」ことが最優先なのだ。戦わず事態が収まればそれが最善策。戦闘態勢に入るのは、戦う以外に自分の命を守る方法が無くなったときだけだ。

声を出す練習の後は、パンチやキックなど、戦うことを想定した練習を行う。中でも他の格闘技であまり見ないのは「股間蹴り」だろう。クラヴマガは通常のスポーツや格闘技と違って命を守れればいいため、ルールもタブーも無い。だから男女共に鍛えにくい股間や目などの急所を積極的に狙っていく。

通常、キックの練習では足の甲や足首をミットに当てていく。トレーナーから

「練習では足首がミットに当たるようにしますが、女性だと先の尖ったヒールを履いていることもあります。男性も固いブーツを履いていることもありますよね。そんな時はつま先で相手の股間を蹴りましょう」

と実践向けのアドバイスも貰えたりする。

練習は素足で行うので(※取材当時)、最初は足が痛くなる。自分も始めたばかりの頃は、「痛い!」と声をあげたほどだったが、人間慣れるもので今はバシバシと蹴りを入れられるようになった。

他にも、相手が武器を持っている時でも対応できるように、「ナイフからの護身」の練習もある。ダミーナイフを持った相手がこちらに切りかかってくるので、切りつけられる前に攻撃を回避する。相手の前腕に自分の前腕をぶつけるので、腕の骨と骨がぶつかって、これもなかなか痛い。

ナイフを持った相手にぶつかっていく、というのは中々怖いかもしれないが、この動きは条件反射の応用だ。人間は驚くと咄嗟に「手が動いてしまう」ので、練習を重ねればこの反射を活かして動けるようになる。男女問わず、皆が汗だくの状態で約1時間の練習は終了した。

全体的に「痛そう」な感想になってしまったが、実際どの練習も痛みを伴うものばかりだ。痣ができたり怪我をしてしまったりする人もゼロではない。しかし、この練習がもしもの時に自分を守ってくれるのならば、安いものだと私は考えてしまう。

「どんな状態でも反射的に100%の声や力が出せるように練習をするんです」

MagaGYM代表の熊谷篤広さんは、「クラヴマガは効率的で誰もが取り組みやすい護身術だと思います」と話す。その理由は、クラヴマガの発祥地であるイスラエルの特殊な事情にある。

「徴兵制度があり、訓練期間がとても短い上に女性も徴兵の対象になっています。生き延びるために『老若男女の誰にとっても効率的な護身術』が必要でした。だから人間の条件反射を活用しているし、スポーツでは厳禁の急所も狙っていきます」

近年は女性の受講者も増えている。熊谷さんは「自分の身を守るため、家族に勧められて入会した女子高生もいます」という。実際、電車内で痴漢に悩んでいる人もいるだろう。熊谷さんは、

「『痴漢に遭ったら声を出しましょう』という言葉をよく聞きますが、実際は身体が固まって逃げ出せず、声も出せない人が多い。クラヴマガを通してどんな状態でも反射的に100%の声や力が出せるように練習をするんです」

と熱く語ってくれた。確かにクラヴマガでは、練習を普段の生活に活かせるよう工夫されている。

私もこの3年間で、メンタル・肉体ともに鍛えることができた。長年文化部でのんびり過ごしていたひょろひょろ女子が軍事訓練のごとくバシバシとしばかれたのだから、人生の中で今が最もタフだと言い切れる。なお普段のトレーナーさんはとっても気さくで優しい。

何より、自分の身を守る方法を知ることができた。3年前の自分は、被害に遭っても怖くて何もできなかったが、今は「何もしないこと」がどれほど危険かを知っている。声を上げなければ誰にも気づいてもらえないし、相手がエスカレートする可能性だってある。

仮に今、見知らぬ男に追いかけられたら「助けて」と声を出し、「あのお店に逃げよう」「襲われたらこう動こう」など冷静な対処ができるのではないだろうか。

実際に「MagaGYM」通っている人からは、

「電車で痴漢にあった時に触られる前に逃げることができた」(40代女性)
「勤務先に不審者が侵入し、叫んで殴りかかってきたところを取り押えた」(50代男性)

など、クラヴマガで習った護身術を活用した声が挙がっている。また、「睡眠の質が上がった」(20代男性)、「体内年齢がマイナス14歳になった」(30代女性)といった護身以外の効果もある。

クラヴマガは、シンプルで合理的、そして実用的な護身を習いながら運動もすることができるメリットだらけの護身術なのだ。

現在、同ジムでは新型コロナウイルスの影響でオンラインを中心にレッスンをしている。全国どこでも習うことができる絶好の機会なので、もし気になったらぜひクラヴマガに挑戦していただきたい。

取材協力:Maga GYM

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