食品廃棄物から「パーム油の代替油脂」をつくる オランダ政府も支援する試み
世界で増加するパーム油の需要 拡大する森林伐採の問題
パーム油は、アイスクリームやチョコレート、マーガリンなどの食品をはじめ、化粧品や洗剤、歯磨き粉など、さまざまな日用品に使われている。安価で汎用性が高いことから、パーム油の需要は毎年4%増加。パーム油のもととなるアブラヤシを栽培するために、森林伐採が広がっていることが問題となっている。
2030年までに追加で見込まれるパーム油の需要は2200万トンにものぼり、そのためにはアイルランドの1.5倍の広さにおよぶ熱帯雨林を伐採する必要があるという。
一方で、ヨーロッパでは欧州森林破壊防止法(European Deforestation Regulation、EUDR)により、森林破壊に関連した農産物や製品のEUへの輸入が禁止される。パーム油もこの対象で、現在使われているパーム油の83%は禁止される対象であるため、今後は価格の高騰も見込まれている。そのため、欧州の企業は持続可能な認証を受けたパーム油の調達が求められているのだ。
食品廃棄物を発酵してアップサイクル 代替油脂へ
2021年にオランダで設立されたスタートアップ企業であるNoPalm Ingredients社では、食品産業から排出される廃棄物を再利用・発酵させ、食品、化粧品、パーソナルケア製品などにおいて、パーム油やその他の植物油の代替品となる酵母油脂を製造している。これにより、食品廃棄物の問題とパーム油への依存の両方に対してアプローチを行うという。
「答えは、製品を禁止することではなく、一歩下がって優れた代替品をつくること」。そう語るのは、NoPalm Ingredientsの共同創設者兼CEOであるラース・ラングハウト氏だ。
戦略コンサルタントとしての経歴を持つラングハウト氏は、持続可能な循環型のパーム油代替として酵母油脂に関する研究を行っていたオランダ・ワーヘニンゲン大学のイェルーン・ヒューゲンホルツ教授に触発され、2人で油脂業界に革命を起こすことを決めた。
小さな研究室から始まった2人のコラボレーションは、業界大手とのパイロット・プロジェクトに支えられながら、1年も経たないうちに2000Lの発酵施設へ拡大。現在は20人以上のチームに成長し、工業規模(50000L)にまで技術を拡大している。
500万ユーロの資金調達に成功 オランダ政府も支援
NoPalm Ingredients社は、2025年までに年間150万kgの持続可能なオイルを生産することを目標としている。
パーム油の生産に比べて炭素排出量を90%削減することで、バリューチェーン全体を脱炭素化。さらに土地の利用を99%削減し、生物多様性のホットスポットを将来の森林破壊から守ることを目指す。
オランダ企業庁や投資ファンド、個人投資家らから注目を集め、NoPalm Ingredients社はこのほど500万ユーロ(約8億円)の資金調達に成功。これにより同社の使命である、世界のパーム油市場にローカルで循環型の持続可能なソリューションの提供が、さらに促進されることが期待される。
※参考
NoPalm Ingredients
NoPalm Ingredients Secures €5 Million Seed Funding to Revolutionize Palm Oil|Global Cosmetics News