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『BEASTARS』アニメ完結記念:小林親弘さん(レゴシ役)×沖野晃司さん(メロン役)対談|レゴシとメロンがぶつかる最終章の真髄

アニメイトタイムズ

写真:アニメイトタイムズ編集部

板垣巴留先生原作(「チャンピオンコミック」秋田書店刊)のアニメ『BEASTARS FINAL SEASON』Part2がNetflixにて全話配信中!『BEASTARS』は草食動物と肉食動物が共存する世界で全寮制の「チェリートン学園」で、主人公のレゴシが恋や謎解き、自分のルーツ探しへと全力で駆け抜けた青春群像劇です。

アニメの完結を記念して、ハイイロオオカミで主人公のレゴシを演じる小林親弘さんと、「FINAL SEASON」のカギを握る重要キャラクター、ミックスのメロン役の沖野晃司さんの対談をお届けします!

お二人のあふれ出る『BEASTARS』愛と「FINAL SEASON」Part2の見どころに加え、一段進んだ画期的なプレスコ方式の収録の感想などたっぷり語っていただきました。

 

 

【写真】『BEASTARS』アニメ完結記念:小林親弘×沖野晃司インタビュー

配信日前日は寂しい気持ちがあった小林さんとファンの方の感想が気になる沖野さん!?

──『BEASTARS FINAL SEASON』のPart1が2024年12月5日に配信されましたが、アニメを締めくくるPart2の配信が始まりました。心境をお聞かせください。

レゴシ役 小林親弘さん(以下、小林):収録したのは1年以上前になります。『BEASTARS』はプレスコ方式(音声の収録後に作画をするシステム)がとられているので、収録してから絵になるまで時間がかかるんです。そして真っ白い画面の中、ボールドを頼りに芝居をしていたので収録している時にどんな映像になるのか、まったく想像はつきませんでした。

配信日の前日は「とうとう明日からなんだ」という気持ちと、収録したことを思い出して懐かしさを感じました。そして「どう演じたっけ?」と思い出せない部分もあったりして(笑)。でも、やっと皆さんにお届けできるのはやっぱり嬉しかったです。

メロン役 沖野晃司さん(以下、沖野):チカさんは長く『BEASTARS』でレゴシを演じてきた歴史があるけど、僕が演じるメロンは「FINAL SEASON」から登場したキャラなので、初めて収録に参加した時、ちょっとソワソワしたんです。長く続いていて、チームが出来上がっているところに、しかも終盤からの登場なので、「勇気を出して飛び込まなければ」とドキドキしました。

小林:本当に? だってメロンはラスボスみたいな立ち位置じゃないの? 「FINAL SEASON」で一番の重要キャラだし。

沖野:いやいや。収録が終わってからしばらく忘れていたけど、Part2の配信が近づくにつれて、またソワソワが始まりました(笑)。

小林:メロンのお芝居はすごく素敵でしたよ。

沖野:レゴシの人生に深く関わる役だからこそ、怖かったんですよね。だから原作ファンの方やここまでアニメを視聴してきた方がどう思われるのか、気になります。

──このPart2でのレゴシとメロンの掛け合いシーンが素晴らしかったです。特にメロンはこのPart2で解像度がぐぐっと上がってきて。

小林:メロンの過去の話が描かれたのは今回が初めてでしたっけ?

沖野:そうだと思います。

小林:沖野さんは『BEASTARS』の前に、別の作品で共演することはありましたが、これほどしっかり掛け合うのは初めてでした。でもすごく頼りにしていました。プレスコは特殊な録り方ですし、ガンマイクが4つ並んでいる中で横を向いて、目を合わせながら芝居をしました。

ちなみに1期の収録では、取っ組み合ったり、寝っ転がりながら録ったり、いろいろなアプローチで試行錯誤していて、第1期の第1話や第2話などは午後4時から収録して終わったのが11時半とめちゃくちゃ時間がかかりました。

沖野:始めた頃はシステムがまだ構築されていないから実験ですよね。

小林:全部「演じるままに体を動かしてみるか」という感じで。だからかなり苦労されている役者さんもいました。でも沖野さんはすぐに順応するどころか、プレスコの環境を抜群に使いこなしていて、一緒に舞台を作っている感覚で録ることができました。

沖野:「収録方法が特殊です」とお聞きした上で、Part1の収録に臨みましたが、僕は声優よりも舞台経験のほうが長いので、「この録り方は得意かも!?」と感じました。いつもならマイク前に立った時、「どうしようかな?」と迷うこともありましたが、『BEASTARS』ではいつもの自分のやり方が使えたので、やりやすい環境でした。しかもチカさんは長年演じられてきてレゴシの役が体に染みついていることもやりやすかったです。

小林:それは嬉しい!

沖野:実は僕、『BEASTARS』のアニメを観ていたので。

小林:本当ですか!?

沖野:だから僕の中にレゴシというキャラクターのイメージができていたので、最初から向き合ってお芝居した時も「あっ、このリアクションわかる! やっぱり本物だ」って。

このPart2ではより深いところで感情をぶつけ合いつつも、メロンはのらりくらりとかわしたりしますが、レゴシがストレートにぶつかってきてくれたので、やりやすかった印象があります。

 

ノイズもセリフかぶりも関係なく、いい芝居は即OK! だからこそ突出していた臨場感とエネルギー

──Part2では二匹の激しい格闘シーンがありますがその時も体ごとぶつかり合うくらいの激しさで?

小林:そんなシーンもあったと思います。

沖野:胸ぐらをつかみながら。

小林:そして片手で台本を持ちながら(笑)。でも何回かやってみるとセリフを覚えちゃうんですよね。あとミキサーの方がすごく上手で、「多少ノイズがのっても全然大丈夫です」とプレスコに慣れているのがわかりました。むしろ「今、結構ノイズが乗ってましたけど、大丈夫でしたか?」とこちらが不安になって尋ねたくらい(笑)。

また僕らは向かい合ったり、つかみ合っている時は台本を見られないので、細かい言い間違いがあったりしましたが、そんな時も(松見真一)監督は「今のは芝居が良かったからOKにしましょう」と言ってくれたりして。

沖野:そんなところも舞台っぽかったです。

小林:セリフのかぶりも気にせず、同じ場面の時はほとんど一緒に録りました。

沖野:5人同時に録ったこともあるし、シシ組のシーンはメンバー全員で同時にしゃべって。

小林:別に録ったのはモノローグくらいです。これが後で絵を付ける強みですね。

沖野:特殊な収録ならではの臨場感やエネルギーを発していた気がします。

小林:監督の言葉で印象に残っているのは「アフレコにすると間尺もカットも決まってしまうので、Aはしゃべっている途中でBがしゃべり出すような台本が書けないけど、『BEASTARS』は後で絵を描くから誰かがしゃべっている途中でしゃべってもいいですよ」と。

沖野:本当にやりやすかったし、おもしろかったですね。

 

 

レゴシの他者との関わり方が広がった「FINAL SEASON」。でもハルの出番は……。沖野さんの心に深く刻まれた作品に

──小林さん、ここで『BEASTARS FINAL SEASON』Part1で印象的なシーンを挙げていただけますか?

小林:レゴシが社会に出たところが一番印象的でした。学園ではクローズされた空間のお話でしたが、社会に出るといろいろな種族と会うし、いろいろな大人とも向き合うし。メロンみたいな獣もいれば、セブンさんみたいな方もいるし、レゴシの他者との関わり方がPart1で広がったなと。

だから「ハルが全然出てこない。ヒロインなんだけど!?」と千本木(彩花)ちゃんが嘆いていたのを聞きながら、申し訳ない気持ちでいっぱいでした(笑)。

 

──そして沖野さんは「FINAL SEASON」に参加する前からアニメをご覧になっていたということで、作品の印象をお聞かせください。

沖野:最初に観た時、少し言い方が悪いかもしれませんが「何だ!? これ?」って(笑)。アニメを観る前は「動物しかいない世界の中でどんな物語が構成されていくのかな?」と疑問と興味が湧きました。いざ観始めたらおもしろくて第1期を一気見してしまいました。

小林:ありがたい。

沖野:草食動物と肉食動物といわば捕食する側とされる側が、同じ学園で生活するという設定に驚いたし、ハルちゃんとレゴシの恋愛みたいなものが描かれているし、学園の中で事件が起きてサスペンスの要素もあって、更にアクションまで。「これはいったいどんなジャンルにあたるのだろう?」って。

小林:カテゴライズしにくいし、他の人にどんな作品なのか尋ねられても答えにくいですよね。

──本能と倫理観、異種族間の共存、自分は何者なのか、などいろいろな深いテーマを描かれていますね。

沖野:だからこそ観た後に記憶から抜けてしまう作品ではなく、心の中に残る、一生忘れられない作品だなという印象があります。

 

見どころはメロンに自分を重ねたレゴシと、無感覚ながらも心が揺れるメロン

──『BEASTARS』の最終章となる、このPart2の見どころのご紹介をお願いします。

小林:メロンはヒール側で、ヤフヤと結託してレゴシを捕まえようとするけど、レゴシにとってメロンは知れば知るほど、「もっと知りたい」と思うような存在で。たぶんメロンがレゴシと同じ(草食動物と肉食動物の)ハーフということで自分と重ねるところもあるのかもしれません。そしてもしレゴシが将来ハルちゃんと結ばれたとして子供がどうなるのかという不安がより大きくなったのがPart2なのかなと思います。

最終的にはメロンを自分たちの問題として捉えているのかなと。だからメロンに寄り添ったり、理解しようとするんですよね。トカゲやキツネ、みんなに対してもどういう存在なのか向き合おうとして。それはレゴシの生い立ち……おじいちゃんのゴーシャがコモドオオトカゲということもあるんでしょうけど。よく考えるとすごいお話ですよね(笑)。

レゴシはメロンとどう向き合うのか。そしてハルちゃんとどう向き合うか、異種族とどう向き合うのか、それがPart2のすべてなのではないかと思います。

沖野:そう言っていただいてありがたいんですけど、メロンはまったくの真逆ですね(笑)。レゴシがこっちのことを知ろうとすればするほど、ムカついてきて。メロンがなぜ、味覚障害で食欲もなく性欲もなくなってしまったのか、などの生い立ちが少しずつ明かされていく中で、近づいてくるレゴシに最初は興味半分だったけど、どんどんわずらわしく感じるようになり怒りに変わっていきます。そこにハルちゃんが出てきて。Part2ではハルちゃんに襲い掛かるシーンがあって、「これは良くないぞ」と思いながら……。

小林:確かに良くはないですね(笑)。

沖野:でもそれは「食べたい」というメロンの中の純粋な欲求からで。メロンもPart2の中でしっかり心が揺れているし、考えていることがあるのがおもしろいなと思います。メロンがただの悪ではないところが原作者の板垣(巴留)先生のすごさですね。

──レゴシもメロンもハルにひかれているような。

小林:そうですね。

 

Part2のEDは、SEVENTEENの「Tiny Light」! 作品ファンのWOOZIさんが作詞作曲も!!

──Part2のEDは、SEVENTEENの「Tiny Light」ですが、ED映像を観たり、曲を聴いた感想をお聞かせください。

小林:メンバーのWOOZIさんが作詞・作曲されたそうで……原作の板垣先生とWOOZIさんが公式サイトで対談されていましたね(https://www.youtube.com/watch?v=DikuhcQq6eY)。

宣伝担当:WOOZIさんは『BEASTARS』のファンということもあって、レゴシのハルに向けての想いを書いたとおっしゃっていました。

小林:それは嬉しい。初めて聴いた時はとても良くて、鳥肌が立ちました。曲調は懐かしさを感じますね。映像にも『BEASTARS』の第1期からの流れがすべて凝縮されていて。

沖野:みんな、いましたね。

小林:思わずぐっときました。レゴシがどれほどハルのことを愛しているのか、そして「僕らが別々の世界に行ってしまっても、迷子になって彷徨っても必ず君を見つけ出す」という歌詞からもこの愛を絶対に手放さないという強い意志を感じます。

 

──板垣先生も「すごく希望に満ちあふれた曲ですね」とおっしゃっていました。

小林:振り返ってみると1期の1話から本当にいろいろなことがありましたが、レゴシは孤独ではなかったですね。それはレゴシが接してきた一匹一匹としっかり向き合ってきたからなんでしょうね。映像に加えて、曲調がさわやかなこともあって、いろいろなことが頭に浮かんできます。そして『BEASTARS』のアニメもこれで終わりなんだなと寂しい気持ちが湧いてきました。

沖野:映像のレゴシがみんなに背中を押してもらって、支えられている感じもいいですね。

小林:改めて、いい作品ですね。

沖野:でもメロンとしては、このEDを想像させない方向に持っていかないといけないので(笑)。

小林:確かに立ちはだかってますもんね。「何、さわやかに歌っているんだ!?」という感じでしょう(笑)。

沖野:まだまだレゴシとメロンは邂逅していないから。楽曲から少し離れますが、レゴシとハルちゃんが手をつなぐより先に指を握るのが好きなんです。

小林:わかる~! いいっすよね。

沖野:二匹のサイズの違いだからこそ、できる表現というか。『BEASTARS』っていいですね。

小林:EDから出た結論は二人共、『BEASTARS』はやっぱりいい! ということで(笑)。

 

 

モノローグは閉鎖され、専用マイクで収録! ゲストは特殊な収録にきょとん!?

──収録中や休憩中などで印象的だった、あるいはおもしろかった出来事を教えてください。

沖野:僕はモノローグを収録する時の小屋みたいなボックスがおもしろかったです。他の収録ではなかなか見ることがないものだったので。本当に閉鎖してくださっていて。

小林:マイクも違うんですよね。モノローグの時だけ、わざとガサつくような古いマイクを使ってました。

沖野:あの部屋に入ると、自分の中で閉ざされている心の声を言いやすかったです(笑)。

小林:休憩中も作品の話で盛り上がっていました。

沖野:あと動き方の確認もよくしてましたよね。例えば「僕はこっち側で見ていてもいいですか?」とマイクに対してどんな位置に立てばいいかとか……。

小林:「ここは距離を取って、1つ奥のマイクでやったほうがいいよね」とか。

──プレスコ方式の収録の中でもかなり特殊ですね。

小林:特殊ですね。普通はみんな、ボールドが出る画面を見ながらやるじゃないですか? 『BEASTARS』は画面どころか台本さえも見ずに、相手を見ながらやって、反応をもらうという。

沖野:僕と同じく「FINAL SEASON」から参加されるゲストの方々の、きょとんとした顔は毎回印象的でした(笑)。

小林:みんな、そうなりますよね。

沖野:役者さんによっては「私はここで大丈夫なので」と控えめに遠慮される方もいて。その戸惑いもすごくわかります。

小林:それも含めて、多種多様な作品でしたね。

──初めて参加するキャストの方には小林さんが説明する立場だったんですか?

小林:最初に説明します。「横を向いても大丈夫ですし、しゃがんでも大丈夫です。ただマイクの直線上にいればいいので」と僕が言ったら、皆さん、「えっ!?」と驚かれるし、不安がりますね。普段はマイクを目の前にしてお芝居することで安心するらしくて。でも舞台畑出身としてはむしろマイクが前にないほうがやりやすいんです。

沖野:そのほうが自由にできますから。

小林:尺も気にしなくていいし。収録で一番大きな制約はしゃべる時の尺通りにやらなくていけないことなので。尺の制約がなければ、自分の間でやれるので大きいです。この収録のように相手の反応を目や耳で感じながらやれるのはありがたかったです。こちらも用意してきたものをどんどん崩せますから。

この作品でこの録り方でやれて本当に良かったです。この収録の仕方でやったらもっと膨らむ作品は他にもある気がして。日常ものやファンタジーでこのやり方で録ったらどうなるのかな? と夢が膨らみますね。

──この収録方法だからこそ、目に見えない空気感や臨場感、リアルさが感じられて、まるで実写のドラマや映画を観ている感覚になれたのかもしれません。

小林:そうでしたか。

沖野:僕は毎回収録スタジオに行く時、ドラマや映画の撮影に来ている気分でした。テストでは台本を持って、映画のリハーサルをしている気分で、本番ではガンマイクに向かってしゃべって。僕は舞台で相手の目を見ながらお芝居するタイプだったので、今回も心が自然に動くというか、気持ちを事前にアイドリングしなくてもすぐに入れました。

小林:今後、このやり方でどんどん録ってほしいです。そうなったら更におもしろくなりそう。

──『BEASTARS』はアニメ界に新たな可能性を提示できたのではないでしょうか。

小林:今までも「あの作品をこのやり方で試したらもっとおもしろくなったかも」と思うものも結構ありました。でも『BEASTARS』の収録以降、ガンマイクを使って、横を向きながら録る作品も増えて嬉しかったです。

沖野:このやり方でもできるということですからね。

小林:『BEASTARS』でこの収録方法で録り始めた頃は7時間とかすごく時間がかかったけど、最後のほうは1~2時間で終わってましたから。

 

二人の好きなキャラ、そして小林さんと似ていると思うキャラは?

──『BEASTARS』のキャラクターの中で一番好きなキャラクターや自分に近いなと思ったキャラクターを教えてください。

小林:たくさんいますが、ジャックとセブンさんですね。マニアックかもしれないけど。そして自分と似ているキャラといえば……難しい。

沖野:もしメロンって言ったら「あの人、ヤバッ!?」ってなりますよね(笑)。僕が好きなのはゴーシャです。「いいよな、ああいうのって」と思います。

小林:素敵ですよね。

沖野:似ているキャラは、僕はのんびり屋さんなので、レゴシがバイトしているうどん屋さんの店長(スナガ)です。

小林:ああ~っ! あんな感じ……そうか、へえ。めっちゃ優しいですよね。

宣伝担当:実はSEVENTEENのWOOZIさんもスナガをお気に入りキャラに挙げていました。

小林・沖野:そうなんだ!?

小林:俺は誰と似ているかなあ?

沖野:やっぱりレゴシでは? 自分はレゴシのチカさんを見すぎているのもあるかもしれないけど。

小林:(ゴウヒン役の大塚)明夫さんにも言われたんです。「お前、レゴシっぽいよな」って。

沖野:チカさんもイメージが優しくて、大らかだけど、声も含めて芯が強く見えるんですよね。だからレゴシそのままです。

小林:そうなんだ!? でも自分以外の方からそう言ってもらえるということはそうなのかもしれませんね。

 

小林さんが感じた『BEASTARS』が発していたメッセージとは?

──アニメ『BEASTARS』を最後まで演じ切った心境をお聞かせください。

小林:巴留先生が社会をどう捉えているのかが色濃く反映されている作品だと思います。現在のように多様性という言葉がまだ一般的ではない頃に「多様性の話です」とおっしゃっていたことを今でも覚えています。

アニメもマンガの連載をリアルタイムで追っていたので、収録中も「この物語はどんな結末になるんだろう?」と考察したり、ワクワクしながら演じていました。そして今回、ラストシーンを迎えた時、「ああ、これが一つの答えなんだな」と。レゴシがしゃがもうとしたらハルちゃんが「そのままでいい」と言ったセリフがすべてなのかなと思いました。

どういう相手に対しても、それぞれの違う生き方を肯定してくれるんですよね。メロンに対してもそうだし、リズやピナなどに対してもそうだったように。ダメなことはダメだけど、そうしてしまった理由もちゃんと描かれているし、表層的でもなく、浅くもない多様性を描写されていて。

少し話題が逸れますが、僕は作家の朝井リョウさんの『正欲』が好きで、多様性を描いている作品です。いろいろな人が「多様性」と口にするけど、結局は自分たちが理解できる、許せる範囲でしか認めないんだと。例えば水に性欲を覚えるエピソードがありますが、誰にも理解されないわけです。それを果たして多様性と言ってもいいのだろうかと問題提起されていましたが、『正欲』を読んだ時と同じ感覚になりました。

ハルが大学生になった時、ライオンとウサギが付き合っているカップルを見て、ハルに「これはファッションで付き合っているよね」と言わせるのはすごい毒だなと衝撃を受けました。

沖野:(笑)。

小林:社会のいびつさがこれでもかとリアルに描かれていて、もし百年後に読んでも色あせず、人の心に刺さるんじゃないかなと。マンガ界という枠の中だけではなく、古典として残る作品じゃないかなと思えるくらい、『BEASTARS』から大きな影響を受けました。

沖野:「人は変わるのか、変わらないのか」を描いている作品だなと思いました。物語が進むにつれて主人公や世界が変わって、途中で仲間が増えたりして、共感されて、応援される人に変わっていく作品がありますが、『BEASTARS』は「あれ? 変わらないのかな?」と思う作品です。メロンを演じていて、どんなに人に支えられても、どんなにひどい仕打ちを受けても「変えられないものってあるよね」と思ったんです。

レゴシやルイくんは成長して変わっていって、最後を迎えますが、ストーリーのポイントポイントに出てくるキャラクターたちはどんなに頑張っても変わってくれない。それは社会が悪いからなのか、それとも考え方が悪いのか、みたいな問題提起が随所になされるので、視聴者の方へ「結局、あのキャラクターは変わらなかったな」という教訓が残ればいいなと思いました(笑)。「いくら頑張っても変えられないものもこの世にはあるんだよ」ということが心に残る作品なのかなと演じ終わった今、思っています。

──では読者の皆さんへメッセージをお願いします。

沖野:「FINAL SEASON」もこのPart2で最後です。私、メロンとしてはレゴシや皆さんを絶望の淵に叩き落すつもりでやりました。なのでレゴシとハルちゃんのハッピーエンドを期待しないでください(笑)。

キャラクターたちの関係性が複雑に絡みあっていますが、特に1話からご覧になってくださっている方々にはとってもいいラストに走っていくと思いますので、楽しんでいただけるはずです。1話ずつ少しずつでも一気見でもお好きな観方で楽しんでください。

小林:50話前後のアニメを、約8年かけて、スタッフの皆さんも我々キャストも丁寧に作ってきたなと感じています。そして自分の声の仕事への向き合い方を変えてくれた作品でした。こんなに長い時間関わることができたのは奇跡であり、とても幸せでした。視聴者の方にも物語のおもしろさに加えて、お芝居のおもしろさが伝わったら役者冥利に尽きます。

このアニメは観た人によって感じ方や受け取り方が違ってもいい、懐が広い作品だと思うので、まず観ていただいたらSNS等でつぶやいたり、お友達に勧めていただいて、感動や想いを共有して、盛り上がってほしいなと思います。

ここまで応援してくださった方がいたからアニメも完走できたと思うので、本当に感謝しかありません。改めて8年間本当にありがとうございました。

 

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