物価高で小売の閉店相次ぐ お弁当も大変
7月に入っても値上げ、値上げということで、7月は去年の同じ月と比べておよそ5倍の2100品目以上の食品が値上げというニュースがありました。物価高が続いて小売の閉店も相次ぐなか、帝国データバンクによると、「弁当店」の倒産が過去最多のペースで推移していることが分かりました。
中華弁当店も泣く泣く値上げ
オープンから40年という杉並区の本格中華弁当店「喜山飯店」も、泣く泣く値上げに踏み切っています。店長の齋藤主一さんのお話です。
喜山飯店 店長 齋藤主一さん
直近ですと2025年4月21日ですね。お弁当1つ当たり税込みで108円の値上げですね。エビチリを中心として麻婆茄子、ピーマンと豚肉の細切り炒め、キクラゲたまご、他に鶏の甘酢とか酢豚とかたくさんあるんですけれども、基本的にはエビチリで好評いただいているお弁当となっています。容器の高騰、人件費、今回で言うとやっぱりお米の値上げ、それに伴って、弊社のお弁当も値上げしていかなくてはいけない状況。お客様にご理解いただくことは、かなり難しい部分ではあるんですけれども、でもやはり値上げしていかないと会社として続けていくことが困難になっていく可能性もでてきてしまいますので、やっぱり値上げをせざるを得ない。
この弁当店では、2022年ごろから何度か値上げをしていて、今回は108円の値上げとなりました。
これで、12種類ほどあるお弁当の中で、1000円以下のお弁当は1種類に。4種類のお惣菜と白米が入った一番人気のお弁当は値上げ後、税込みで1296円になりました。
お弁当に欠かせない米の価格高騰の影響
齋藤さんのお話でも、やはり米の価格高騰が大きかったという言葉がありましたが、いつ頃からどう影響しているのか、値上げへの思いや、閉店する弁当店も増えているなか営業を続ける思いなど、再び、喜山飯店 店長の齋藤主一さんに伺いました。
喜山飯店 店長 齋藤主一さん
お客様に美味しいお弁当を届け続けることを頑張るっていうことで、今回値上げさせていただくことになりました。去年の新米ぐらいからですよね。もうその時点で、お米業者さんから「値上げせざるを得ない」という情報が入ってきていましたので。弊社のお弁当、ご飯が240~260グラムぐらい入っているので、ここの値上げはどうしても阻止したい部分ではあったんですけれども、ご飯を減らすっていうことは、お弁当を作っている上ではどうしてもできない選択の1つなので、それはしていませんね。お客様に対して「値上げ」っていう言葉を伝えなくちゃいけないっていうのは、やはりこれは心苦しいですね、本当に。それでも、弊社のお弁当がいいって言ってくださっているお客様に全力を尽くして美味しいお弁当を作っていくっていう形ですかね。
お弁当にお米は欠かせないからこそ、お米の量を減らすことはしたくなかったそう。また、この喜山飯店では、お惣菜を濃い目の味付けにしているため、ご飯が進むお弁当になっています。お米もメインとしてとても大事にしているということでした。
対策と言っても、お米の量を減らすわけにも、水の量を増やして炊くわけにもいかないので、ロスを減らすことくらいしか手の打ちようがなかったそう。
値上げ以降、どうしてもお客さんの分母、全体の数は減ってしまったそうですが、近くに住む方をはじめ、病院の医師、学校の教員、近くの建設現場で働く方々、あとはテレビ局のロケ弁としても需要があるということです。
お弁当を買いに来た人は
お弁当を買いに来た方に、値上げへの思いなど話を聞いてみました。
「週に多いと2回、3回ですね。チャーハン弁当を目当てに来るんですけど。子どもがいるんですけど、みんなでシェアして食べたりして、結構食卓を囲んでお世話になっているので、それで買いに来ます。少しでもお安くなればなと思うんですけど、これだけの商品ですから、多少高くなっても買っちゃいますね。引き続き、頑張っていただきたいなと思います。」
「個人タクシーに今日なりました。タクシーでここ通っていて、美味しいっていうことだったので、ちょっと食べてみようかなと思って。初めてです。チャーハンの3種弁当っていうの。大変でしょうね。でもね、お弁当屋さんって我々にとってはすごくありがたいところなので、潰れないように、なんとかやってもらいたいですね。今日食べてたぶん美味しいと思うので、また来たいと思います。」
2人目の60代の男性は、たまたまこの日、個人タクシーの運転手として働き始めたそうですが「職業柄、お弁当はありがたい。これからも頑張ってほしい」と話していました。
店長の齋藤さんは「決して私利私欲のための値上げではない。値上げしてでも、閉店せずに営業を続けて喜んでもらうことを選んだ」と何度も話していたのが印象的でした。
(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』取材・レポート:西村志野)