森口博子「ANISON COVERS 2」懐かしくも新しい!大人のためのアニソンカバー第2弾
懐かしくも新しいアニソンカバー集
2024年8月7日、森口博子のアルバム『ANISON COVERS 2』がリリースされた。本作は、前年の『ANISON COVERS』同様に80年代から90年を中心としたアニソンをカバーしたアルバムの第2弾で、様々なゲストミュージシャンを迎えて森口の進化した歌声を乗せるという、いわば “懐かしくも新しい” カバーという『GUNDAM SONG COVERS』シリーズから続くポリシーは今回にも受け継がれている。
本作では、34年ぶりの披露というビキニのジャケットや、その袋とじブックレットが、発売前から大きな話題となってきたが、肝心の楽曲の方も、森口博子がこれまで培った40年近いキャリアを存分に感じさせる傑作集となっている。以下、特に印象に残ったものを何曲か紹介してみたい。
演奏に身をゆだねるように柔らかな歌声で歌う「想い出がいっぱい」
想い出がいっぱい / with 鳥山雄司&神保彰
▶ オリジナル:H2O
▶ 作詞:阿木燿子
▶ 作曲:鈴木キサブロー
▶ 編曲:萩田光雄
▶ オリコン最高位:6位
▶ TOP100内累計売上:43.0万枚
オリジナルは、1983年のアニメ『みゆき』のエンディングテーマで、当時はそのタイアップ曲として、そして近年は卒業ソングの定番として、幅広い世代に人気のあるバラード。それぞれに思い入れが強いためか、ある人はフェイクを入れて熱唱し、またある人はクラシカルに壮大に歌い上げ、さらに別のある人はアニメのキャラクターを演じるように歌うなど、それぞれに力がこもっている。
その中で、森口は、「♪大人の階段昇る」というサビを、80年代アイドル風にタメて表現しているものの、基本的には力みすぎることなく、演奏に身をゆだねるように柔らかな歌声で歌っている。だからこそ、心にしみわたり、こちらの想い出も自然に引き出されたのか、思わず目頭が熱くなった。本作品の1曲目をさりげない感じで始めるのもコンサートでそのまま使えそうなほど、全体の曲順も上手い。
カラオケの定番曲「おジャ魔女カーニバル!! 」
おジャ魔女カーニバル!! / with 百田夏菜子(ももいろクローバーZ)
▶ オリジナル:MAHO堂
▶ 作詞:大森祥子
▶ 作曲:池毅
▶ 編曲:坂本昌之
▶ オリコン最高位:89位
▶ TOP100内累計売上:0.2万枚
1999年当時のオリコン順位は決して高くはないが、20年以上経った今でもJOYSOUNDの年間TOP100前後に入るほどカラオケの定番曲となっているまさに “記憶のヒット曲” 。「♪大きな声で ピリカピリララ」などのコミカルな歌詞や弾むようなメロディーを活かすべく、本作でレーベルの後輩でもある百田夏菜子をコラボ相手に選ぶのも絶妙なディレクションだ。前半部分は、森口が百田に引っ張られて、一緒に元気に歌っているのが聴いていて楽しいし、後半部分は、今度は森口が百田を引っ張っているかのように、楽しさがぐんぐん加速するようにエンディングを迎えるのも圧巻だ。
ファルセットで夏の涼しさを美しく歌い上げた「鳥の詩」
鳥の詩
▶ オリジナル:Lia
▶ 作詞:麻枝准
▶ 作曲:折戸伸治
▶ 編曲:高瀬一矢
▶ オリコン最高位:圏外
2000年に発表された原曲は、透明感のある歌声とダンスビートで夏の爽快感を体現している傑作だが、本カバーは、和のテイストでスローに始まりつつ、メインをシティポップ風に奏でるというアレンジ自体が、より懐かしい邦楽風となっていて、大いに刺激されるおとな世代のリスナーも多いことだろう。その上で、森口が、ファルセットで夏の涼しさを美しく表しつつも、地声では夏の灼けるような暑さと過ぎゆく切なさを熱く歌っており、その対比が実に上手い。2曲目の「微笑みの爆弾」ではファンキーに、3曲目の「おジャ魔女カーニバル!!」はコミカルに歌っていた人と同じ人とは思えないほど、今回は楽曲ごとにその世界観に合った歌声が乗せられていることも大きなポイントだろう。
「ちびまる子ちゃん」のオープニングを飾った名曲「ゆめいっぱい」
ゆめいっぱい / with 鳥山雄司&柏木広樹
▶ オリジナル:関ゆみ子
▶ 作詞:亜蘭知子
▶ 作曲・編曲:織田哲郎
▶ オリコン最高位:50位
▶ TOP100内累計売上:8.3万枚
オリジナルは、1990年の『ちびまる子ちゃん』のオープニングを飾ったまさに元気いっぱいのポップなナンバー。これを、ギターとチェロによるアコースティックな演奏で、夢でまどろむようなミディアム曲にするという解釈にまず膝を打つ。そこに、やさしく語りかけるような森口の歌声が乗ることで、殺伐とした日々の中でも、“楽しいこと” や “夢見ること” は、今でもいっぱいあるんだよ、とそっと教えられる。この辺りの絶妙なさじ加減にも唸らされる。
スローなテンポのアイリッシュ風の演奏に乗せたセルフカバー「BE FREE」
BE FREE
▶ オリジナル:森口博子
▶ 作詞:三浦徳子
▶ 作曲:茂村泰彦
▶ 編曲:戸塚修
▶ オリコン最高位:88位(シングル「サムライハート」カップリング)
▶ TOP100内累計売上:0.2万枚
オリジナルは、1988年のアニメ『鎧伝サムライトルーパー』のエンディングテーマだった煌めくようなサウンドのポップス。当時の森口は、やや過剰なまでにキュートに振り切って歌っており、ブレイクしようと懸命だったのだろうか。これに対し、セルフカバー版では、スローなテンポのアイリッシュ風の演奏に乗せて、相手を救いたいという一途なメッセージが伝わってくる。つまり、36年の時を経て、自分を見せるための歌から、相手に届けたい歌に生まれ変わっているのだ。これも長年のキャリアゆえの賜物と言えるだろう。
大好きな気持ちが森口の歌声に満ち溢れている「ブルーウォーター」
ブルーウォーター / with 田ノ岡三郎
▶ オリジナル:森川美穂
▶ 作詞:来生えつこ
▶ 作曲:井上ヨシマサ
▶ 編曲:ジョー・リノイエ、鈴川真樹
▶ オリコン最高位:17位
▶ TOP100内累計売上:8.0万枚
「ブルーウォーター」は、タイアップのアニメ『ふしぎの海のナディア』さながらに大海原が想起されるパワフルな森川のボーカルありきの楽曲と長年思っていたので、本作をカバーすると知った時は、大丈夫だろうか… と少し心配してしまったが、聴いてみて杞憂だと気づかされた。それは、アコーディオンの演奏が南国の海から欧州の港町に背景を変えてくれることや、全編に散りばめられた “勇気” や “未来”、“永遠” 、“輝き” といった前向きなキーワードが森口のキャラと相性が良いこともあるし、何より “だってイイ歌なんだから、歌いたいんだもん!” という、大好きな気持ちが森口の歌声に満ち溢れているからだ。森川、森口どちらのバージョンを聴いても “夢がMORI MORI” な気分になってくる。
楽曲のメッセージ性を存分に伝えている「ANISON COVERS 2」
そして、TM NETWORKの木根尚登が参加した10曲目「STILL LOVE HER(失われた風景)/ with 木根尚登 (TM NETWORK)」
」のゆっくりと始まる演奏や、終盤のラララ~というフレーズは、いかにもライブ会場で手拍子や大合唱が起こってフィナーレを迎えたような気分にさせられる。
今回の10曲を聴くと、彼女が曲に合わせて、様々な歌声を披露しており、それがアニメの世界を飛び出して、楽曲のメッセージ性を存分に伝えていることに驚かされる。これも、歌手の本業に繋がるならばと、モノマネ、バラエティー、司会業とどんな仕事も前向きにこなしてきた森口博子だからこそなせる業なのだろうか。正直、歌手活動39年目なのに、まったく守りに入っていないのだ。この後も、また新たなる挑戦があるのかとワクワクさせられるし、また本作を聴いていると、それを励みに日々を明るく乗り越えようと元気が湧いてくる。
Information
▶︎森口博子『ANISON COVERS 2』楽曲配信中
https://bio.to/anisoncovers2_pre
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