ラストシーンまで犯人が分からない、どんでん返しの連続。〝演劇界のヒッチコック〟と呼ばれたロベール・トマ屈指の推理劇が上川隆也、藤原紀香ら6人の俳優により待望の再演『罠』
〝演劇界のヒッチコック〟と呼ばれたフランスの劇作家ロベール・トマが1960年に発表し、パリで初演された傑作サスペンス劇『罠』の東京公演がよみうり大手町ホールで上演中だ。2024年秋に「読売新聞創刊150周年記念舞台」として上演され、ミステリアスな演出が評判を呼び、2025年12月にははやくも再演のオファーが出演者にはなされたという。物語の鍵を握る主役のカンタン警部を、前回に続き演じる上川隆也は、とんでもないスピードで再演が決まったときに驚きとともに、オファーをいただいたことがありがたかった、と初日前の囲み取材で語った。
登場人物は全部でわずか6人で、上川はじめ、エリザベート役の藤原紀香、エリザベートの夫ダニエル役の渡辺大、マクシマン神父役の財木琢磨、絵描きのメルルーシュ役の藤本隆宏は前回に引き続き出演で、今回新たに看護師のベルトン役で須藤理彩が加わった。上川と藤原は2025年12月から2026年1月にかけての舞台『忠臣蔵』で、大石内蔵助、大石りく役で、息の合ったところをみせたばかりだ。
演出を手がけるのは前回に続き深作健太。深作は2003年に映画『バトル・ロワイアルⅡ【鎮魂歌】』を、父・深作欣二を引き継ぎ完成させ、映画監督デビューを果たし、同作で毎日映画コンクール脚本賞を受賞した。演劇のデビューを果たしたのは2010年の『罠』の演出だった。2017年にも上演され、2024年にはキャストを一新し上川隆也主演の『罠』の演出を手がけた。上川とは2013年の上川、浅丘ルリ子主演の舞台テネシー・ウィリアムズの『渇いた太陽』でもコンビを組んだ仲である。
「前回をなぞるのではなく、全く新しい作品として演出できることは、スリリングかつ幸福な作品との出合いだ」と意気込みを感じさせた。
撮影:阿久津知宏
出演者一同も異口同音に今回の舞台が再演と言っていいのかと思えるほど、もちろん筋書きは変わらないが、新たな作品になっていると言う。
2025年の舞台『酔いどれ天使』でも、深作演出を体験した渡辺大は、「40代になって最初の舞台が『罠』で、多くのことを吸収した舞台だった」と言い、舞台出演は今回が7回目、再演に関わるのは今回が初めてだというが、再演に臨み「この作品は重ねた年齢によっても変わる奥深さがあり、前回とは演じ方が全く違う。ちょっとした変化でこれだけ作品の色彩が変わるのも珍しいのでは」と作品の魅力を語る。
2019年の『里見八犬伝』の犬山道節役で深作演出を体験した財木琢磨は「初演のときは物語の展開の速さを追いかけるのに緊張感でいっぱいでしたが、今回は作品をさらに深堀りする楽しみを体験しています」と作品を楽しむ。
今回唯一の新加入となる須藤理彩は「ただ一人初参加ということで、しかも2週間という短い稽古期間で緊張していましたが、前回をなぞるのではなく新しい作品ということで、出演者のみなさんと一緒にゼロから創り上げていけるという稽古場だったので、緊張もほぐれました」と現場のチームワークの良さが伝わってくる。
6人の登場人物たちのだまし合いが最後まで観客を惹きつける推理劇。まさに6人の俳優たちの魂がぶつかり合う芝居。
上川隆也は「一回務めた作品から一年ではあれ離れ、その距離感を持つことができたことが大きく、作品を俯瞰で見る時間があったというのは、出演者が前回を踏まえた上でワンステップ、ツーステップ前に進んで行こうという気持ちで作品に臨めたことが、この作品を新たなものにしてくれているような気がします。さらに、前回と同じ5人の出演者に、新たに須藤さんが加わったことも大きかったですね。前回とはまったく違う作品として全員が作品に臨んでいるように感じました。前回も全員が一つになって創り上げたという達成感がありましたが、そんな機会を再び得られたのはギフトのような感じです」と作品の仕上がりへの大きな手応えを感じているようだ。
登場人物が少ないだけに、一人ひとりのセリフが際立つのもまさに演劇ならではの魅力で、濃密でスリリングな空気感を楽しむことが出来る。
▲左から演出の深作健太、須藤理彩、渡辺大、上川隆也、藤原紀香、藤本隆宏、財木琢磨
『罠』
作:ロベール・トマ
翻訳:平田綾子
演出:深作健太
出演:上川隆也 藤原紀香 渡辺大 財木琢磨 須藤理彩 藤本隆宏
<東京公演>
〔公演日程〕6月6日(土)~6月26日(金)
〔会場〕よみうり大手町ホール
〔問〕Mitt03-6265-3201(平日12:00~17:00)
<大分(中津)公演>
〔公演日程〕6月28日(日)
〔会場〕中津文化会館
〔問〕インプレサリオ092-600-9238(平日11:00~15:00)
<福岡公演>
〔公演日程〕6月29日(月)
〔会場〕福岡市民ホール 大ホール
〔問〕インプレサリオ092-600-9238(平日11:00~15:00)
<高松公演>
〔公演日程〕7月1日(水)
〔会場〕レクザムホール(香川県民ホール)小ホール
〔問〕香川県県民ホールサービスセンター087-823-5023(10:00~18:00)
<徳島公演>
〔公演日程〕7月2日(木)
〔会場〕あわぎんホール(徳島県郷土文化会館)
〔問〕香川県県民ホールサービスセンター087-823-5023(10:00~18:00)
<大阪公演>
〔公演日程〕7月4日(土)~7月5日(日)
〔会場〕森ノ宮ピロティホール
〔問〕梅田芸術劇場0570-077-039(10:00~13:00/14:00~18:00)
<水戸公演>
〔公演日程〕7月7日(火)
〔会場〕水戸芸術館 ACM劇場
〔問〕水戸芸術館 ACM劇場029-227-8123(10:00~18:00)
<新潟公演>
〔公演日程〕7月9日(木)
〔会場〕新潟県民会館 大ホール
〔問〕TeNYチケット専用ダイヤル025-281-8000(平日10:00~17:30)
取材・文=二見屋良樹