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中学で数学につまずき、高1で自閉症診断。就職は厳しいと言われ、何より後悔していることは【読者体験談】

LITALICO発達ナビ

中学で数学につまずき、高1で自閉症診断。就職は厳しいと言われ、何より後悔していることは【読者体験談】

監修:鈴木直光

筑波こどものこころクリニック院長

3歳で発達相談を受けるも様子見に。小学校の担任へは「問題がありそうなら教えて」と必ず伝えた小学校時代

現在高校3年生の息子は高校1年のときにASD(自閉スペクトラム症)と診断されました。ADHD(注意欠如多動症)の傾向も平均より高いとのことです。診断は遅くなってしまいましたが、小さい頃から「もしかしたら特性があるのかも?」と感じる場面はありました。

物音に敏感で騒がしいところが苦手だったり、指先にのりや食べ物などがつくのを嫌がったりなど、少し気になるところがあったため、3歳のとき、保育園から「発達相談を受ませんか?」と促されました。過敏さのほかにも、ミニカーを縦に整列させたり、ペットボトル風車が回るのをずっと眺めていたりと、私自身、薄々息子には特性があるかもと感じていたのもあり、発達相談を受けることにしました。

発達相談では、想定外の事柄への不安があることや、手先も不器用で発達も遅めだということを指摘されました。ただ、環境には順応できるのではとの見解で、少し安心した覚えがあります。以降、進級して担任が変わる度に、保育園で発達の指摘があったので先生から見て気になる点がありそうなら教えてくださいと必ず伝えました。

小学校でも行き渋ることはなく、発達はゆっくりめな印象でしたが、同級生とは「お世話される弟キャラ」的な立ち位置でうまくやっていたと思います。ただ特定の友達のからかい、学校生活の中でのストレスは感じていたようで、鼻をならすチックや頻尿などの症状は出ていました。また、小学3年の頃から算数への苦手さが出てきたと記憶しています。

数学が壊滅的に理解できていない! 家庭教師をつけ、高校受験へ

中学校入学以降はあれよあれよと成績が下がっていきました。中学1年の1学期の実力テストの順位は真ん中くらいで「次は頑張ろうね~」と軽く捉えていたのですが、2学期以降に、数学と英語の成績が落ちだし、家で勉強を教えても理解が遅い、教えても忘れる、数学で使うXとYの意味や、文章題の大問と小問の関係が理解できない……などなどが露呈。親が教えることに限界を感じて、中学2年から家庭教師をお願いしました。わが家は集団塾もないような地域だったので、家庭教師を探すのも大変でした。

中学3年の1学期、個人面談で、日中の居眠りがひどく、数学が壊滅的に理解できていないことを担任の先生から指摘されました。数学ができないことは多少は分かっていましたが、居眠りとは衝撃。このままではいけないと先生と相談し、高校受験対策を練りました。

まず、
・数学は計算問題だけで点数を稼ぐ。そのため中学1~3年の計算ドリルをくり返し解く。
・他教科は応用問題は捨て、基礎問題だけともかく繰り返して解く。
それに加え、家庭教師にも高校受験が終わるまで来てもらいました。
そして何とか定員割れの地元高校に入学。ホッとしたところで高校でもトラブルが噴出したのです。

「合理的配慮が必要」と学校から言われ、急いで精神科を受診、高校1年でASD(自閉スペクトラム症)の診断が

高校へ入ってからのことです。朝礼で移動教室について指示したそうですが、一人だけ違う教室に行ってしまった息子。先生が探し回ったそうです。
テストを受けても、解答用紙が裏面にもあることに気づかなかったり、論理的思考が必要な問題はお手上げ状態。息子は社会など暗記科目は得意で、英語も単語は書けるのですが、文法が理解できていないことが分かりました……。

そして学校から、これは合理的配慮が必要だと判断され、早急に病院で診断をもらうようにと指示されました。診断を受けるにしても県の発達専門の病院の予約は1年先になると言われ、ともかく早く受けるために家から遠く離れた精神科を受診しました。私は精神科を受診するということに、本人がショックを受けないかが一番心配でした。

診断は「ASD(自閉スペクトラム症)傾向が高い。ADHDについても、不注意の傾向が平均より高い」でした。このとき息子は高校1年生、16歳でした。
私は小さい頃から息子を見ていて「なにか特性があるかも」と思い続けていたので覚悟はできていましたが、本人はショックだったと思います。荒れたり、泣いたりもしませんでしたが、「オレって障害があるんだ」とつぶやいていました。

精神障害者保健福祉手帳を取得するか息子と話し合ったのですが、高校卒業後に必要になること、困った時に助けてもらえるなどメリットを前面に出して説明をしました。今思えば、取得しないという選択肢はないような伝え方をしてしまったかもしれません……。その後、息子は精神障害者保健福祉手帳を取得しました。

高校での合理的配慮は? 就労支援体験実習で自信をつけてほしい

診断後、高校では5つの合理的配慮を受けました。
1.具体的表現、説明
2.作業手順、指示の視覚化、ルーティン化
3.十分な作業時間の確保
4.次回、次週の予定の伝達
5.座席位置の前方固定
これによって、以前よりずいぶんと過ごしやすくなったと思います。
ですがその後、高校の先生からは進学も就労も厳しいと言われ、友達からもからかわれと傷つくことの多い3年間でした。友達から「おまえ、障害があるんだって?」と言われたから言い返したとは聞いています。

今何よりも後悔していることは、息子の診断が16歳と遅れてしまったことです。
早く診断がついて適切な対応が取れていれば、違う方法や進路があったのではないかと思うのです。子どもに関わった先生方も、気づいていたら言ってほしかった……できれば助けてほしかった。息子へは申し訳ない気持ちでいっぱいです。

息子は高3なので卒業後の進路が目下の悩みでした。しかし、先日就労移行支援事業所へ相談、ある企業で体験実習を行い、「働く力がある」と言われ就職先が決まり、胸をなで下ろしているところです。施設の方からは、自分の弱点、苦手を知り対処方法を考え、経験を積み、働き続ける力をつけることが目標と言われています。

卒業後はできることを増やし、息子には自信をつけていってほしいです。そして楽しく働くことができたらいいねと話しています。

イラスト/ネコ山
エピソード参考/やぎ母

(監修:鈴木先生より)
「早期介入の重要性」は元サウスカロライナ医科大学のバークレー教授が常に言っていた言葉です。就学前では1歳半・3歳児・地域によっては5歳児健診が早期介入のきっかけになっています。それらの健診で「様子を見ましょう」と言われ、その後の就学時健診もすり抜けるとあとは、学校の先生が気づいて保護者に相談するほかは専門医に相談するきっかけがあまりありません。たとえ就学前の健診で指摘されてかかりつけ医に相談してもそこで「様子を見ましょう」と言われたら道は途絶えるのです。
健診での保健師さんや医師、かかりつけ医、担任の先生、習い事のコーチなど子どもと触れ合う大人に神経発達症の知識が少しでもあれば専門医へ相談するという道はあったはずです。ADHDは6歳から治療できます。お子さんの自尊心を高めるためにも早期介入・診断・治療が重要なのです。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

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