アナウンサーが語る”沖縄移住”Vol.02:不安ゼロで移住した植草アナが直面した「沖縄の食文化」の洗礼
沖縄テレビ放送(OTV)の植草凜(うえくさ りん)アナウンサーのリアルな体験談をお届けする連載企画。 第2回となる今回は、移住後に直面した「食文化のリアルな洗礼」に迫ります。 沖縄料理店でのバイト経験があり、移住への不安はゼロだったという植草アナ。しかし、いざ沖縄での生活が始まると、お馴染みのあの食材の価格差や、独特の食文化という「住んでみないと分からないギャップ」が待ち受けていました。
なぜ高い?「もやし」と「牛乳」への戸惑い
自炊のために地元のスーパーマーケットに行くようになると、食材の価格に大きな衝撃を受けました。 まず驚いたのは、スーパーの野菜コーナーに並んでいる野菜の値段の高さ。特に、もやしの価格でした。 今は全国的に物価高が進んでいるので事情が変わってきていますが、私が学生のころ、関西のスーパーでは、もやしは1袋5円とか10円。特売日だと、1円から9円の間という、信じられないような値段で手に入ることもあった食材です。 ところが、ここ沖縄のスーパーでは、もやしが50円未満で売られている姿を一度も見かけないのです。 さらに、もやしだけでなく、牛乳の値段の高さにもびっくりしたのを今でもよく覚えています。
今でも、もやしの金額には慣れません。スーパーに行って、ちょっと大きめの袋に入ったもやしをカゴに入れようとすると、大体100円ぐらいしますし、200円近くする時は、「まじか!」と思います(笑)。 一人暮らしを始めた当初、もやしがこんなに高いんだというのは、私にとっては結構な衝撃でした。
お昼時の絶対的な選択肢「食堂文化」の深さ
一方で、沖縄の食生活に触れるなかで魅了されたのが「食堂文化」です。 沖縄の街を歩いていると、とにかく食堂の店舗数が多いことに気づきます。どこの食堂に入っても、壁一面に貼られたメニューの選択肢が多いじゃないですか。何を食べようか迷ってしまうくらい、膨大なバラエティがあります。 これが、県外にいたころの感覚とは決定的に違っていました。たとえば、関西でランチ時間に、「今日のお昼どこ行く?何食べる?」という話になった時、出てくる選択肢というのは「ラーメンにしようか」「うどんを食べに行こうか」「洋食屋さんにしようか」といった、それぞれの専門ジャンルのお店が普通でした。日常の会話のなかで、「ちょっと近くの食堂に行こう」という言葉が出てくることは、ありませんでした。 ところが、沖縄にやってくると、ランチの選択肢のなかに、定番として食堂が入っているのです。「今日何を食べる?じゃあ、あそこの食堂行こうか」という会話が、サラリーマンの間でも普通に交わされている。 街中に当たり前のように食堂があって、それが地域の人たちの「おなじみ」として、ランチの選択肢の一つとして深く根づき、地域に愛されている。こうした食堂文化というのは、県外にはなかなかなくて、沖縄にこそ色濃く存在しているものだな、という違いを強く感じました。
那覇のようなこれだけ都会の街並みであっても、ビルのなかに食堂が残って息づいていることが面白いなと感じています。そして、少し離れた田舎の地域へ行ったとしても、やっぱりそこに食堂がある。どんな場所であっても、地域コミュニティのなかにしっかりと食堂が存在し続けているというのは、沖縄ならではの特徴だなと思います。
沖縄そばとポーク、気付けば大好物に
沖縄に移住してきてから、沖縄そばを食べる頻度がとても増えました。 今では大好きな沖縄そばですが、実は、観光客として年に一回旅行で来ていた頃は、沖縄そば独特の麺の食感にあまりなじめませんでした。 ラーメンのようなツルツル感とも違い、うどんのような強いコシとも違う、あの独特の歯切れというか、最初の頃はその食感がどうしても口に合わなかったのです。 ところが、沖縄に住むようになって、いろいろなお店に行くようになると、その認識が大きく変わっていきました。ツルツルとした喉越しが美味しい生麺を出すお店に出会ってその美味しさに驚いたり、お店ごとに違う味を何度も経験していくうちに、今ではすっかり大好物になってしまったのです。 沖縄そばは県民食としてしっかり根付いていて、何を食べようか困ったら「とりあえずそば食べに行こう」となる。これほどまでに地域の人々の生活に密着した県民食というのは、県外を探してもなかなか見当たらないと思います。
たとえば、私の生まれ故郷である関西にも、お好み焼きをはじめとする「粉もん文化」だったり、出汁の効いた「うどん文化」といった素晴らしい食文化があります。でも、関西の人間が粉もんやうどんを「毎週1回は食べているか?」と言われたら、そこまでの頻度ではない人も多いと思います。 しかし、沖縄における沖縄そばの密着度は、私自身、週に1回ぐらいのペースで食べていますし、私の子どもも沖縄そばが本当に大好きで、我が家の定番の食事になっています。それくらい、生活に根ざしたものだなと感じます。 そして、沖縄そばと並んで、日々の食事のなかで大きな存在になったのが「ポーク(ポークランチョンミート)」です。 実は、沖縄の定番であるポークも、最初は苦手意識があって自ら進んで食べることはありませんでした。
しかし、沖縄の食堂に行って野菜炒めやチャンプルーを頼むと、具材の中に大体ポークが入っているんですよね(笑)。あるいは、定食セットを頼むと、お皿の端にポークが卵焼きと一緒についてくることも。 そうやって、日々の暮らしのなかで、ポークを口にする機会が自然と増えていくうちに、私の舌もいつの間にか慣れていき、自然と食べられるようになっていきました。気がつけば苦手意識は完全に消え去り、今では子どもも含めて家族みんなが大好きな食材になっています。
みんなの定番「ポークカレー」との出会い
このポークにまつわる、私のなかで「これが沖縄の日常のリアルなんだな」と深く実感させられた、忘れられない印象的なエピソードがあります。 それは昨年、子どもが通っていたこども園で、親子イベントが開催された時のことです。こども園のみんなで集まって、「お昼ご飯に、みんなで一緒にカレーを作りましょう!」という企画がありました。 県外出身の私の感覚からすれば、カレーのお肉は豚肉や牛肉、鶏肉でした。カレーにポークを入れるという発想はありませんでした。 ところが、こども園のイベントで、みんなでカレーを作り始めた時に出てきたお肉は、精肉パックの肉ではなく、なんとあの四角いポークだったのです。肉の代わりに、カットされたポークがゴロゴロとカレーの鍋の中に投入されていく。「へえ、カレーにポークを入れるんだ!」と、私はその光景を見て、これが沖縄の日常、食文化のリアルなんだろうなと、新鮮さを感じました。
さらに面白いことに、このポークカレーは、一度きりではありませんでした。 つい先日、こども園時代から仲良くしている地元の友人家族たち総勢5家族ほどで、北部のコテージへ2泊3日の旅行に出かけたときの話です。みんな仕事終わりに集合だったので、到着時間がバラバラで夜遅くなってしまう予定でした。そのため、グループの中の一人が、「みんな着くのが遅くなるから、俺が一足先に全員分のカレーを作っておくよ!」と言って、現地で夕飯を用意しておいてくれたのです。 夜遅く、私たちが「遅くなってごめん!」とコテージに到着し、お腹を空かせて出されたカレーを覗き込んでみると――そこに入っていた具材のお肉も、あの四角いポークだったのです。 「ここでもポークカレーだ!」と、思わず心の中で笑ってしまいました。肉の代わりにポークを使う。それが、特別なことではなく、日常のなかでごく普通に、当たり前の選択肢として選ばれている。私にとっては驚きだった組み合わせが、この島の人たちにとっては、本当に馴染み深い日常の定番なんだなと、二度のカレーの思い出を通じて、深く実感させられた出来事でした。もちろん、そのポークカレーは、美味しく平らげることができました。 ちなみに、「沖縄には、さまざまな伝統食があると思いますが、その辺りを生活に取り入れていますか?」と聞かれることもありますが、豚の血を使った炒め物のチーイリチー(チーイリチャー)といったディープな伝統料理は、私にとってはまだ少しハードルが高く、日々の暮らしの中ではこれから開拓していく段階です。
ゴーヤーは、移住してきてから圧倒的に食べるようになりました。 というのも、ゴーヤーの畑をやっている地元のおじぃちゃんがいるんです。その方が、今年に入ってから時々、獲れたての新鮮なゴーヤーをくれるんですよね。 おかげさまで、スーパーでゴーヤーを買ったことが今年はまだ一度もないんです。これこそが、沖縄の地域コミュニティならではの、温かいエピソードだなと感じています。
関西出身夫婦の転機?次回は「子育て&ライフスタイル編」
訪れたスーパーで、もやしの価格差に驚いたという植草アナ。こうした物価のギャップは、実際に暮らして初めて分かるリアルな体験です。独特な食感になじめなかった沖縄そばやポークも、今では家族みんなが大好きな食材に。それも、この島で長く暮らしたからこその変化でした。 次回は、夫婦そろって関西出身、知り合いゼロからスタートした植草アナの沖縄ライフをガラリと変えてくれた「子ども」の存在にフォーカス! 人の輪を爆発的に広げてくれた子育て、移住者コミュニティ、さらには沖縄での休日の過ごし方までたっぷりお届けします。来週の配信もどうぞお楽しみに!