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この棒、何に使うかわかる?『ゴールデンカムイ』でも大注目!アイヌ文化について学べる「函館市北方民族資料館」に行ってみた

Sitakke

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2024年1月に公開され、全国東宝系で大ヒット上映中の映画『ゴールデンカムイ』。
原作は、既刊全31巻で累計2600万部(2023年11月時点)を突破する、北海道出身の漫画家・野田サトルによる大人気コミックス。

厳しい北海道の大自然を舞台に、莫大なアイヌの埋蔵金を巡って繰り広げられる冒険サバイバル・バトルアクションです。

物語において、重要な要素のひとつになるのが、アイヌの文化。
作品をきっかけに、アイヌ文化に興味を持ったという方も多いのではないのでしょうか?

今回は、アイヌ文化の世界を学べる施設「北方民族資料館」(函館市)に注目します。

函館市にある「北方民族資料館」って?

北海道内にはアイヌ文化について学べる施設がいくつもありますが、その一つが「北方民族資料館」です。

「北方民族資料館」は函館市にありますが、よく似た名前の「北方民族博物館」が網走市にもあります。

網走市にある「北方民族博物館」はグリーンランドから北欧まで、アイヌ文化を含めた北方民族の文化とオホーツク文化を紹介する日本唯一の施設です。

対して、函館市にある「北方民族資料館」はアイヌやウィルタなど北方民族の衣装や生活用品を展示していますが、展示品のほぼ半数以上は、アイヌ文化に関係する展示です。名前がそっくりなので、間違えて問い合わせがくることも多いんだそうですよ。

築90年以上!歴史的建造物としても魅力のある資料館

資料館の建物は「日本銀行函館支店」として、大正15年(1926年)に建築され、昭和63年まで使用されていました。築90年以上を誇る建物です。

その名残は館内の各所に見られ、歴史的建造物としても魅力のある施設です。
1989年に「函館市北方民族資料・石川啄木資料館」の併設館として開館しましたが、その後、石川啄木資料館が、すぐそば(徒歩2分)に「函館市文学館」としてオープン。

そちらに石川啄木の資料が移され、現在の「函館市北方民族資料館」として1993年に再オープンしました。

アイヌ民族の生活用品やアイヌ文化に関する資料を中心に、収蔵数が約1万点でそのうち、展示数は400点ほど。毎年11月頃に展示替えをされています。
保管されている資料は損傷が激しく修復しないと展示できないものも多くありますが、歴史的にはとても価値があるもので、東京理科大学や弘前大学からも定期的に調査に来るほどです。


『ゴールデンカムイ』ファンの木戸館長にお話を聞きました!

館長の木戸さんにお話を聞きました。木戸さんは函館のご出身で、東京や帯広での経験を経てUターンしました。

公益財団法人の「函館市文化・スポーツ振興財団」にお勤めで「北方民族資料館」の館長に就任したのは2018年のこと。それまでは函館市内のスポーツ施設などの管理をされていました。「館長になるまでは歴史に全く興味がありませんでした」と話します。

館長になってから独学で北方民族やアイヌ文化について勉強し、その中で漫画『ゴールデンカムイ』と出会いました。
「最初は勉強のために拾い読み程度でしたが、読み進めていくうちにどんどん惹かれていって、最終的には全巻読破しました。アニメ版も見ていますよ」と木戸さん。

休憩室には『ゴールデンカムイ』の単行本や関連書籍も置かれています。
「館長談」として自ら展示品の紹介文を書いていますが、その中には漫画『ゴールデンカムイ』にまつわるものがいくつか見られます。


こちらは「ストゥ(制裁棒)」です。映画『ゴールデンカムイ』の作中にも登場していました。

「ストゥ(制裁棒)」とは、アイヌのコタン(村)で殺人、傷害、窃盗、不義密通などの犯罪が行われたとき、罪人を罰するために使われる棒で乱用は許されません。
「自分も素人だったので素人なりに、難しいことをかみ砕いてわかりやすく解説したいと考えて書きました。小学生でも読めるようにふりがなをふったり、専門用語を入れないように気を遣いましたね」と話します。

この「館長談」がきっかけでSNSやメールを通じて交流が生まれたことも。

館内に飾られているシマエナガの人形も、木戸さんや職員さんの手作りなのだそう。

「北海道観光振興機構」が主催する「北海道はゴールデンカムイを応援しています。ARスタンプラリー」や2023年に函館で開催された『ゴールデンカムイ展』をきっかけに、20代、30代の来館者が急激に増えました。大学の卒業旅行や、カップルで訪れる来館者もいるのだとか。

中には主人公の「アシㇼパ」や登場人物の一人「尾形百之助」のコスプレをして訪れた来館者もいて、その完成度の高さに驚いたと言う木戸さん。
模造銃や弓矢は飛行機に乗せられないので、函館に来たから作ったのだそうです。


提供写真:北方民族資料館

『ゴールデンカムイ展』の開催中は「自分の持っているマキリをぜひ展示してほしい」と東京の方から連絡があり、実際に展示していました。
「マキリ」というのはアイヌ民族が日常的に使う小刀で、漫画『ゴールデンカムイ』にも登場します。展示していたのは登場人物の一人「キロランケ」が持っているマキリのモデルを作った二風谷(にぶたに)在住の作家・貝澤徹さんの作品で、東京のデパートで開催された北海道物産展で購入されたものです。貝澤さんの作品は札幌のチカホ、白老のウポポイ、大阪の国立民族学博物館などにも展示されています。

観光のついでに立ち寄って、アイヌ文化を知るきっかけになれれば「これからはSNSやウェブサイトを活用して、どんどん情報発信していきたい。北方民族やアイヌ文化に興味を持ってもらうきっかけになれれば。館長の色をどんどん出していきたい」と木戸さんは言います。

北方民族やアイヌ文化について学びたい人や、観光のついでに立ち寄ってくれる人、どちらにも楽しんでもらえる施設にするのが目標だそう。
2024年度からは年1回行っていたアイヌの木彫りや刺繍のワークショップも、年2回に増やす予定です。特に刺繍のワークショップは大人気で、受付開始から10分程度で満員になってしまったほど。

来館時にお願いすれば、職員さんが無料で館内を案内してくれます(施設の都合によりできない場合もあり)。

お子さん向けに切り紙細工体験や、ムックリ(アイヌの伝統的な楽器)製作体験なども実施されています(ムックリ制作体験は、1週間前までに申し込みが必要です。有料)。

お土産用として、アイヌ民族に古くから伝わる文様の刺繍を施した商品、木彫りのお盆やキーホルダー、アイヌ民族の伝統技法で編んだストラップなども販売されていますよ。

アイヌ民族衣装のレプリカも販売中です。資料館に保存されている現物から採寸したり、図録の写真を拡大して採寸し、大きさや文様を忠実に再現したこだわりの一点もの。切伏せや刺繍の技法はアイヌ民族の伝統的技法を再現しています。

アイヌ文化についてもっと知りたいという方はもちろん、『ゴールデンカムイ』ファンの方もぜひ「北方民族資料館」を訪れてみてはいかがでしょうか。

※2024年1月時点の情報です。

***

文・取材:カンベ アキラ
編集:Sitakke編集部ナベ子

<カンベ アキラ PROFILE>
北海道が大好きすぎて、2014年に関西から移住したアラフィフ。現在は十勝在住の旅好き。「北海道観光マスター」「十勝の観光文化検定」の資格所持。「北海道コンシェルジュ」「北海道旅行モデルプランナビ」の2サイトを運営。自ら体験して確かめた北海道の観光スポットやグルメ、お土産やお取り寄せ情報を発信しています。北海道旅行のプランニング相談も「ココナラ」で随時受付中。ゴールデンカムイにドハマりしていて、道内各地を聖地巡礼しています。(スタンプラリーも全制覇)Web情報サイト「北海道Likers」でも執筆中。ライターのお仕事も募集しています。インタビュー、取材、レビュー記事が得意。

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