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MOROHA、延期、延期、そして三度目の正直ーー『MOROHA”再会”』中野サンプラザ公演をレポート

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MOROHA

『MOROHA”再会”』2021.1.14(THU)中野サンプラザ

ある日、渋谷のカフェに東京スカパラダイスオーケストラの谷中敦とMOROHAのアフロがいた。「この前、中野サンプラザのライブを延期にしたんです。国から「やっちゃダメだ」と言われたから延期にしたんじゃなくて、「こっちがやらないと決めたんだ」と思った方が前向きですよね。変な言い方だけど、今回の件はありがたかったと思いたいです。そう思わないとやっていけないっすね」。これはアフロがWEBサイトで連載している対談企画『逢いたい、相対。』のやりとりである。2020年2月28日。中野サンプラザにて、MOROHAは竹原ピストルを迎えた2マンライブ『MOROHA“座”』を開催するハズだった。しかし、コロナウイルスの感染拡大を防止するため、政府からスポーツ・文化イベントなどの開催を自粛するように要請があり、多くのアーティストが予定していたライブの中止・延期を発表したように、MOROHAもライブの延期を決めた。6月29日に再調整されたのだが、感染の被害が広まっていることにより、またもや延期を余儀なくされた。そして11月に、アフロはTwitter上で3度目となる開催の発表をした。「延期、延期、で三度目の正直。2021年1月14日(木)、中野サンプラザにて待つ。MOROHAと竹原ピストル、そしてあなた。正念場に似合う音楽を」

年が明けて、遂に迎えたライブ当日。一年越しの開催となった公演タイトルは『MOROHA”再会”』に変更された。17時15分、開演の30分前にも関わらず、場内は空席が目立った。安全のため1席ずつ間隔をあけて客席が用意されていたこともあるが、それよりも2度目の緊急事態宣言の発令を受け、政府がイベントの開催時間は20時までとするよう求めたことで、通常より開演時間を早めたのが原因だと思われる。「仕事終わりに来る人が多いはずだから、ほとんどのお客さんはギリギリに到着するかもね」と楽屋に設置されたモニターを見ながら、スタッフ同士が話していた。アフロとは「ライブに行ったことが会社にバレるとマズい人もいるだろうね」「うーん……そうですよね」というやり取りを交わした。

竹原ピストル

ようやく席が埋まり出したのは、本番直前。会場の明かりが消えると、暗闇の中から竹原ピストルが姿を現した。ギターの弦1本1本の振動が体に響く。竹原の野太く力強い歌声が鼓膜を刺激する。久しぶりに味わうライブの感覚だ。1曲目「オールドルーキー」から始まり、2曲目は「おーい!おーい!!」。<ぼくはここにいるけれど ぼくはどこにいるんだろ>。たった1灯だけ照らされたスポットライトの下で、真っ暗な客席に向かって呼びかけるように歌う。「おーい!おーい!!」。映画『アイデン&ティティ』で中島が彼女に向かって「大人の悩みに子供の涙」を歌うシーンのように、まるで自分にだけ歌ってくれている気がした。

薬漬けになったとしても生きてくれと訴える「LIVE IN 和歌山」、どんなに強い向かい風に吹かれても挑戦することを諦めるなと背中を押す「Gimme the mic !!」を歌うと「もう……1月14日になってしまいましたけど、私ごとを言うならば、今日が今年一発目の東京でのライブです。「今年もよろしくお願いします」の気持ちを込めて、元旦に書いたばっかしの「初詣」というタイトルのポエムをひとつ読んでみようと思います」と言って竹原は朗読を披露。

 

竹原ピストル

その後、「It's My Life」、「あ。っという間はあるさ」、「Amazing Grace」と続き「もう、ぼちぼち終盤です。今日はもう一個、新しく書いたポエムを読んでみようかなって用意してきたんですけど。歌唄いとして「生きることへの執着」のような内容かなと思います。僕、いわゆる韻を踏んだフレーズを書くと、MOROHAのアフロくんにメールで提出するという、若干気持ち悪い間柄なんですね。そうやって彼に色々と教えてもらいながら完成させたポエムなので、日頃の彼への感謝の気持ちを込めて「ギラギラのやつをまだ持ってる」というポエムを読んでみようと思います」。そう言って譜面台に目を移し、朗読を始めた。そこにはStill Going On(まだ続いてる)という言葉とともに、何年経ってもステージの上で戦い続ける男の生き様が綴られていた。「次、お会いする時には曲をつけておくんで、またライブに遊び来てください」と笑みを浮かべる竹原。

 

竹原ピストル

計12曲を歌ってステージを去ると、客席に明かりがついた。息を止めていたかのように「……ぷはっー」と声を漏らす観客たち。みんな竹原のライブに引き込まれて、固唾を呑んで見守っていたことがうかがえた。

MOROHA

2番手はMOROHA。去年の緊急事態宣言中に発表した「スコールアンドレスポンス」で幕を開けた。続く「俺のがヤバイ」では、今日まで心に溜めていた思いを吐き出すかのように、熱を帯びた音と歌がダイレクトに手渡される。

「tomorrow」、「主題歌」、「GOLD」を歌い終えると、客席を見ながらアフロが口を開く。「大変な局面で(会場に)来てくださった方、ありがとうございます」と頭を下げて、今度は配信を観ている視聴者に向かってお礼をした。次は、竹原ピストルとの思い出話へ。2組が初めて共演したのは、15人で満員となるほど狭い渋谷のバーだった。「あの日から、ようやくサンプラザで2マンをすることになったけど、残念ながらキャパシティは半分ということで、悔しい気持ちはあるんです。それでも堂々と渡り合うライブが出来てることを嬉しく思います」。そこから話題はUKが考案したグッズについてや、古着屋でアフロが竹原に間違えられたことなど、笑い話へと展開していった。エピソードトークをしている最中、アフロがハッとする。「あ、20時までにお客さんを帰さなきゃいけないんだ! ヤバい!」。……この後、思わぬ出来事が起きた。

MC明けに歌った「スペシャル」でアフロが1サビへ入る直前、突然歌わなくなったのだ。珍しく歌詞が飛んだ。UKが演奏を続ける中、なんとか持ち直してそのまま歌い続けたかと思いきや、なんと即興で3番の歌詞を変えた。<上手にしないで 格好をつけないで 歌詞が飛んだって 思いっきり踊れ だって俺たちはフリーキー どこまでも行けると信じてる>。

MOROHA

終盤になり「ストロンガー」を歌って、いよいよ最後の曲を……と思ったら、アフロが胸ポケットから1枚の紙を取り出した。「ピストルさんがポエムを書いてくれたので、ライブが終わった後に、俺も急いでポエムでアンサーを書きました。最後の曲の前に読ませていただきます」。クラブ、バー、ライブハウス、どんな場所でも牙を剥き続ける。売れることや勝つことへのハングリーを絶やさないMOROHAの姿が映し出されていた。

MOROHA

最後の一節を読み終えたと同時に、UKのギターが静かに鳴り始める。「四文銭」だった。アウトロでアフロがマイクを握り直す。「5月に自分たちのライブをするために会場を押さえました。お金も払いました。これは俺のちっぽけな意地で、当然出来るかどうかなんて分からないんだけど、会場を押さえないと、自分がやるんだと予定を立てないと、悲しいかな中止にすることさえ出来ないんですよ。やるって、やってやるって。その気持ちがないと中止にさせることさえ出来ないんですよ。だから中止になることは、延期になることは、1つも恥ずかしいことじゃなくて……」。この時、UKのギターが速くなったと思ったら、自分の心臓の鼓動だった。「だから、絶対にやってやるって。そう決めたあの瞬間があったから、中止も延期も何度繰り返したって俺はやる」。そして竹原ピストルの「カウント10」の歌詞を交えて叫ぶ。「そういう姿以外に、心を動かされたことは一度たりともないよ。だから、俺は、俺はやる。お前はどうする! 命を懸けて命を描くとは何なのか! なんだ! 答えろ!」。

MOROHA

終演後、「チケットを買ったけど、今回は視聴することにしました。画面の向こうに私が座るはずだった座席がありました」というツイートを見つけた。こんな状況だからこそ、その人の決断を悪く捉えてはいけない。それでも、いつか、いつの日か満員の会場でもう一度、MOROHAと竹原ピストルの2マンを観たいと思った。中野サンプラザから駅へ向かう途中、商店街を通ると、21時前にも関わらずほとんどの飲食店が閉まっていた。あったはずの活気はどこへ。東京に明かりが戻るのはいつだろう。最後に、楽曲のパフォーマンスはもちろん、本公演で両者の発表したポエムの詳細が気になる人は1月20日(水)までに配信映像をチェックしてほしい。

文=真貝聡 撮影=MAYUMI-kiss it bitter-

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