家賃高騰で、トランクルーム市場は今後も拡大か 東京と地方では収益に異なる特徴も
東京都内をはじめとする都市部や郊外で高騰する家賃。その影響で、「子どもが生まれたので、本当は2LDKのマンションに引越しをしたいけれど、家賃が高いため1LDKの部屋に住み続けている」「同棲を始めるにあたって、都内は家賃が高いため仕方なく狭い家を借りた」といったケースが子育て世帯や若年層などで増えている。
この状況を背景に拡大しているのが、トランクルーム需要だ。子どもが使った思い出の品や季節ものなどの収納先として、トランクルームを選ぶ人が多くなっているというのだ。
トランクルーム市場の拡大を受け、トランクルームのためのスペースを貸し出すオーナーや、トランクルームに投資して収益を得る投資家も多い。
トランクルーム市場は今後どう変化していくことが予想されるか。トランクルーム投資を始めるうえでの注意点とは。株式会社UKGroup・ホールディングス(以下、UKGroup)のマネージャー、塩原和平氏(株式会社UKCapital所属)に話を聞いた。
住宅面積は縮小、収納ビジネス市場は拡大
まずはトランクルームを含む収納サービス市場の現状について確認したい。
矢野経済研究所の調査(2025年)によると、2024年度の収納サービス(レンタル収納・コンテナ収納)の国内市場規模は、前年度比6.2%増の878億7,000万円(見込み)。2025年度の国内市場規模についても、2024年度比4.4%増の917億8,000万円と予測し、「2025年度以降も大手事業者を中心に新規拠点開発のペースが加速するとみられる」と分析した。
同研究所の消費者アンケート調査でも、トランクルームを「現在、利用している」「過去、利用したことがある」と答えた人は、2023年には計6.4%だったのに対し、2025年には計7.8%になっており、徐々に利用者が増えていることが分かる。
こうしたトランクルーム需要の背景にあるとみられるのが、住宅面積の縮小だ。
国土交通省の建築着工統計調査によると、分譲住宅の戸あたり床面積は2000年度には97.5m2だったのに対し、2010年度は93.6m2、2025年度は88.2m2と徐々に減少。背景には少子化や単身世帯の増加があるが、住宅面積の縮小に伴い、収納スペースが不足する傾向も進んでいそうだ。
実際に、UKGroupが2025年、利用者698人に行ったアンケートによると、約7割が利用目的に「自宅の収納不足を解消するため」と答えたという。
【参考サイト】
・矢野経済研究所「収納サービス(レンタル収納・コンテナ収納)市場に関する調査を実施(2025年)」
・矢野経済研究所「収納サービスに関する消費者アンケート調査を実施(2025年)」
・e-Stat「建築着工統計調査」
古く、駅から遠くても収益を得やすいトランクルーム投資
こうしたトランクルーム需要の拡大に伴い、トランクルーム投資も広がりを見せている。
UKGroupの出店数は、2021年には41店舗だったが、2026年は747店舗(開業予定を含む)にまで拡大した。
そして、同社を通じたトランクルーム投資の中で最も多いのが、投資家が数百万~2,000万円ほどを新規店舗や店舗の一部に投資し、売上から投資家自身が支払う運営・管理費用を引いた金額を利益として得ていく、という仕組みだ。例えば、初期に1,000万円を投資し、その後に月30万円の売り上げを得た場合、月14万円の運営費用を引いた残りの16万円が月々の利益になる。投資家は約3分の2が個人、残りが法人だといい、個人には専業投資家のほか、会社員や士業なども多い。
また、不動産オーナーの中には、所有するビルの一部をUKGroupに貸し出して賃貸収入を得て、トランクルーム運営自体はUKGroupに任せる人や、自身で初期投資をしたうえでトランクルームのオーナーになる人もいる。
いずれにしてもトランクルーム投資への注目は集まっているといえるが、他の不動産投資とはどう異なるのか。塩原さんは主に4つのメリットを指摘する。
(1)初期費用や修繕費を抑えられる
あくまでモノの収納に使われるため、リフォームや水回りの整備、定期的な修繕が最小限で済む。特にコスト高の昨今は大きな魅力だ。
(2)築年数が古い、駅から遠いといった物件でも収益を上げやすい
住宅やオフィスは築浅・駅近の物件であれば埋まりやすく、高い家賃収入を期待できるが、トランクルームは古くても契約されやすく、駅から遠くても「自分の家に近い」といった理由で選ばれることが多い。
(3)空室リスクを軽減できる
賃貸の住宅やオフィス、テナントは空きが出た際の損失が大きいが、トランクルームであれば1店舗あたりの利用者が多く、全体のうちの一部の区画が空いたとしても、収益が安定しやすい。
(4)投資金額を即時に償却できるため、節税効果が高い
一般的な不動産は初期費用を長期間かけて償却するが、トランクルームの場合は投資金額を開業のための資金として初年度に一括償却しやすく、節税につながる。
初期投資の回収が早い東京23区、安定して収益を得やすい地方都市
一口にトランクルーム投資といっても、立地によって収益の得方には差もあるという。塩原さんによると、UKGroupがトランクルーム店舗を出店しているのは、主に(1)人口が密集した都市部(例:東京23区)、(2)地方の主要都市(例:仙台市、広島市などの県庁所在地や県内第2、第3の都市)、(3)人口が密集した都市部の郊外(例:神奈川県、埼玉県、千葉県)だ。
この3パターンの収益の得方を見ていくと、以下のような特徴があるという。
(1)人口が密集した都市部(例:東京23区)
開業から区画が埋まるまで早く、初期費用を回収しやすい。ただし、引越しをする人が多いため、解約や利用者の入れ替わりも目立つ。
(2)地方の主要都市(例:仙台市、広島市などの県庁所在地や県内第2、第3の都市)
開業後の区画が埋まるペースはゆるやかだが、(1)と比べ引越しをする人が少ないため、一度埋まると安定した収益を得やすい。
(3)人口が密集した都市部の郊外(例:神奈川県、埼玉県、千葉県)
(2)と(3)の間くらいの初期費用回収ペースと安定性が特徴だ。
塩原さんは「(1)(2)(3)の地域であれば、程度の差はあっても家賃の上昇や、それに伴う居住・収納スペースの縮小という傾向はほぼ共通しています。今後もトランクルーム利用のニーズは高まっていくでしょうから、投資先として検討するのもひとつの選択肢でしょう。ただ、それぞれの収益の特徴を踏まえて投資先のトランクルームを決めることをおすすめします」と語る。
アメリカでは所有世帯が10% 1%の日本も、今後拡大か
それでは今後、日本のトランクルーム市場はどのように変化していくのだろうか。その変化のカギとは。
トランクルーム所有世帯が10%ほどとされるアメリカ、4%ほどとされるオーストラリアなどの海外に比べ、日本はトランクルームの普及率が低く1%程度とされる。しかし、良さが浸透していけば、今後トランクルームの市場は大きく伸びていくと塩原さんは分析する。
アメリカなどの海外は、大型の荷物やクリスマスツリーのように特定の季節にしか使わないものを持っている家庭が多いなど、日本とはライフスタイルが異なる。とはいえ、「日本でも『モノが多くて困る』と悩む家庭はめずらしくなく、トランクルームへの潜在需要はあると見ています」と塩原さん。
その潜在需要を喚起するのが、屋内型トランクルームだ。従来のトランクルームは価格の安さや設置のしやすさから屋外型コンテナタイプが主流だったが、近年は屋内型トランクルームが増加。日本人が重視する清潔感やセキュリティ面も改善しているため、屋内型トランクルームの認知が拡大していくにつれ、利用者が増えていくと考えられるという。
塩原さんは「数年後には、現在の2~3倍くらいの3,000億円程度に収納ビジネス市場が拡大していく可能性も高いと見ています」と見通しを語る。
読者の皆さんは、立地ごとのトランクルーム投資の特徴も踏まえたうえで、新たな不動産投資の選択肢として検討してみてもよいだろう。
吉川 まほ
ファイナンシャルプランナー
全国紙新聞記者として勤めた後、Webライター、校正者、FPとして活動。Webライターとして不動産や経済関連の記事を執筆するほか、FPとして依頼者の住宅購入・賃貸を含めたライフプランニングの相談にも応じている。