『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ 各駅停車劇場行き』マックス役:山谷祥生さんインタビュー|「飄々としてドライな一面がありつつ、根っこは真面目で誠実」
2025年7月より放送・配信された、1話3分半のショートアニメ『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』。アニメ全12話を再編集し、新作パートを加えた劇場版『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ 各駅停車劇場行き』が、2026年2月6日(金)に公開されます。
本稿では、劇場版の公開を記念してマックス役を務める山谷祥生さんにインタビューを実施。マックスというキャラクターへの向き合い方や、相棒であるカートとの関係性について詳しく伺いました。
さらに、自然な会話劇を成立させるために意識した芝居のアプローチや、収録現場でのエピソードなど、作品づくりの裏側にも迫ります。
【写真】『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』マックス役:山谷祥生インタビュー
「マックスは顔がないキャラクターなんです(笑)」
──劇場版の制作が決定したと聞いたときのお気持ちをお聞かせください。
マックス役・山谷祥生さん(以下、山谷):正直に言うと、「するだろうな」と思っていました(笑)。それくらい完成されていて、非の打ちどころのない素晴らしい作品だと感じていましたね。
テンポ感やツッコミとボケの間、監督のディレクションなどすべてを含めて、似た作品が思い浮かばないくらい、オリジナリティに溢れている作品だと思います。だからこそ「劇場化してほしい」という気持ちはいち声優としても、いちアニメファンとしてもありましたし、実際に決まったと聞いたときはとても嬉しかったですね。
──完成映像をご覧になったご感想をお聞かせください。
山谷:とにかく動きが滑らかで、「こんなにぬるぬる動くんだ!」と驚きました。キャラクターたちの表情もとても豊かですよね。キャラクターの動きに監督の意図がしっかり乗っているのが伝わってきて、芝居を組み立てる上でも大きなヒントになりました。
その一方、マックスは顔がないキャラクターなんです(笑)。他のキャラクターの表情が豊かな分、「いいなあ」と羨ましくも思いましたね。(マックスは)目は描かれていますが表情そのものではないので、言い回しや心情などのニュアンスをどう出すかは常に考えていました。
──オーディションに受かったときのお気持ちはいかがでしたか?
山谷:正直に言うと、オーディションの手応えはまったくなかったです(笑)。オーディションへ行って、いただいたディレクションにその都度一生懸命対応はしたのですが、監督の意図に応えられたという実感はなくて。スタジオを出るときには「これは落ちたな」と思っていました。
それだけに、後日マネージャーから「受かりました」と聞いたときは「なんで?」って(笑)。嬉しさはもちろんありましたが、どの演技が刺さったのか分からない不安も大きくて、本番収録に向けてどうキャラクターを作っていけばいいのかマネージャーと相談したりもしました。
──最初の収録では、オーディション時のお芝居をベースにされたのでしょうか。
山谷:そのままいくパターンも、変えるパターンも両方考えました。結果的には、オーディションに近い形で演じさせていただきましたね。
ただ、本編の台本はすべて読んでみると「思っていたのと違うな」という部分もあれば、「想像通りだな」という部分もあって。その都度アップデートしながら、ブラッシュアップを繰り返して現場に臨みました。
「目の前の人ではなく、基本的にはカートと手元のゲームしか見えていない」
──マックスを演じていく中で、手ごたえを感じた瞬間はありましたか?
山谷:はっきりとした瞬間があったわけではないのですが、収録を重ねる中で少しずつセリフが言いやすくなっていく感覚はありました。全話を2日間かけて収録したのですが、回を重ねるごとにマックスのセリフが自然に口から出てくるようになってきて。少しずつマックスというキャラクター像を捉えていけていたのかな、と思います。
──アドリブを入れる場面もあったのでしょうか。
山谷:プレスコ時点でVコンテが上がっている状態だったので、アドリブというアドリブはあまりなかったと思います。アドリブだったか台本通りだったか記憶があいまいですが、カートと車両で並んでゲームをしていて、ちょっと揉めていたシーンにアドリブを入れていたかもしれません。ただ、全体を通して「アドリブをたくさん入れた」という感覚はないですね。
──実際に演じてみて、マックスはどのような人物だと思いますか?
山谷:基本的には飄々としていて、おちゃらけた印象のキャラクターだと思っています。根っから軽いというよりは、良い意味で浮ついている感じです。若干ですけれども、マックスがなぜそうなったのかという背景も作品を通して描かれていますよね。
マックスは、元々はすごく真面目で誠実に仕事をしていた人だったのではないかなと思うんです。でも「ありがとう」という感謝の言葉をもらえなかったことで、少し擦れてしまったというか、グレてしまったのではないかなと。
──そんなマックスを演じる上で、どのようなことを意識されていましたか?
山谷:取り調べのシーンに至るまでは人に興味がないと言いますか、「その場にいるけれど、いない」ような雰囲気を意識して演じていました。目の前の人ではなく、基本的にはカートと手元のゲームしか見えていない。人と会話していても相手の目や顔を見ずに、液晶ばかり見ているようなイメージですね。
飄々としてドライな一面がありつつ、根っこは真面目で誠実。もし過去にきちんと感謝されていたIF(イフ)があったなら、もっとクリアな人間性になっていたのかもしれない、と思ったりもしました。
──作中でチハルやマキナから「ありがとう」と言われたことが、変化のきっかけになったようにも見えます。
山谷:そうですね。あの場面で、過去に持っていた一面が少し垣間見えたのかなと思います。
「その気楽さや楽しさが、カートにとって心地いいのかもしれません」
──マックスを語る上で、コンビであるカートの存在は欠かせません。カート役の内山昂輝さんの演技について、どんな印象を持たれましたか?
山谷:内山さんが演じられるカートが第1話から完全にカートで(笑)。ああいった役柄を演じられると、本当に天下一品ですよね。隣で演じさせていただいていて、すごくやりやすかったという印象が強いです。内山さんがカートというキャラクターを確立されていらっしゃったので、自然なお芝居ができました。
──カートはどのような人物だと思いますか?
山谷:マックスから見たカートは、いわゆる悪友ですね。ドライでダウナーな印象が強くて、表情もどちらかと言うとつまらなそう。でも、それがそのまま中身かというとそうではなくて、フロントには出ていないだけで実はすごくユーモアのあるキャラクターだと思っています。
例えば男子でトイレに行くシーン(第8話)で、マックスがカナタのパンツを見て「パンツ可愛いの履いてるね」と言った時に、カートも「思った」と返す場面があるんですよ。カナタのパンツを見て、カートもマックスと同じことを思っていたんだなと思うと面白くて(笑)。カートの面白い部分を感じられるので、すごく好きなシーンです。
──カートは言葉にしないだけで、色んなことを考えているのだろうなと感じます。
山谷:だからこそマックスとはウマが合うのだと思います。価値観が近くて、話していて楽しい相手なのではないでしょうか。
──傍目にはマックスとカートは正反対にも見えますが、二人の相性の良さはどこにあると思いますか?
山谷:カートは自分の中で思っていることがあっても、率先して前に出るタイプではないと思うんです。でもマックスが一歩前に立って、思ったことを好き放題言うことで、カートも思っていたことを言いやすくなっているのかなと。
カナタのパンツについても、マックスがいなければカートは「可愛いパンツ履いてるな」と思っただけで終わっていたと思います。でも、マックスは思ったことをすぐに口に出すタイプだから、カートも「それ思った」とマックスの発言に乗れる。
その気楽さや楽しさが、カートにとって心地いいのかもしれません。二人ともどこか達観している部分があって、似ているからこそ一緒にいられるのかなと思います。
「何かを足すのではなく、削っていく作業が必要だった」
──監督とのやり取りで、印象に残っている言葉はありますか?
山谷:印象的だったのは、やはり「ナチュラルに喋る」「素のトーンで芝居をする」というディレクションですね。オーディションの段階から「声を作らないでほしい」と監督に言われていたんです。いわゆる“アニメ芝居”をしないということですね。
──意識して素のトーンで喋るというお芝居は、とても難しそうに聞こえます。
山谷:そうですね。自分にとっては経験があまりなくて、かなり苦戦しました。でも監督が諦めずに何度も言葉をかけてくださって、少しずつ「こうすればいいのかな」と意図を理解できるようになったんです。その過程自体がとても印象に残っています。
普通に話している時の会話って、言葉に詰まったり考える間があったり、アニメとは違ってテンポ感がもっと不細工なんですよね。「確かにそうだな」とは思いますけれど、職業柄どうしても綺麗に喋ろうとしてしまう癖があって。
意識しなくても言葉の緩急や強弱をロジックで考えてしまいがちなのですが、それが全部余計だと。ですから何かを足すのではなく、削っていく作業が必要だったと思います。
──普段の自分に近づけていくような意識でしょうか。
山谷:そうですね。普段自分が喋っているテンポを意識しましたし、「声を張らなくていい」というディレクションもありました。一般的には腹式呼吸で声を出すのではなく、喉声で喋るのが普通ですから。“口先だけ”と言うとニュアンスが変わってしまいますが、良い意味でもっと雑に、適当に喋ってほしい、という解釈で臨んでいました。
「共演者としては完全に不意打ちでした(笑)」
──劇場版の公開にあたって、既存のアニメシーンの中で改めて注目してほしい場面を教えてください。
山谷:好きなシーンは本当にたくさんありますが、チハルちゃんの無垢さはすごく良いなとずっと思っています。チハルとマキナを演じるお二人に関しては、キャラクターを自分のものにしていて、完全にシンクロしているなと感じていました。
あとは、アカネさんのシーンもトップクラスに大好きです。自販機の前でマキナと喧嘩して、お互いにミナミちゃん推しだと気付く一連のやり取り(第4話)で、アカネさんが「あ、限定ステッカー」と言う場面。あの時の金元(寿子)さんのお芝居が本当に素晴らしくて、個人的にお気に入りのシーンです。
──キャストの中にもアカネが好きな方が結構いらっしゃる気がします。
山谷:やっぱり! ギャップも含めて、金元さんをキャスティングしたセンスは本当にすごいと思いますね。
──収録現場で何か印象的な出来事はありましたか?
山谷:ピンポイントで印象的だったのは、マックスとカートの取り調べで、小松さん(リョーコ役)がポッピーくんを演じた回(第6話)ですね。あの時は現場でもわかりやすく笑いが起きていて、「ふふふふ」って皆が笑いをこらえていました(笑)。
──ポッピーくんの声あては、実はアドリブだったとか。
山谷:そうなんです。「ポッピーってそういう感じなんだ!」って驚いて(笑)。特にディレクションがあったわけではなく、小松さんがいきなりあの演技を出してきたので、共演者としては完全に不意打ちでした(笑)。シャッターが下りてきてポッピーくんが潰されるシーンも含めて、とても記憶に残っています。
──最後に、劇場版を楽しみにしているファンの方へメッセージをお願いします。
山谷:すでにアニメをご覧になっている方も多いと思いますが、何度見ても笑えて楽しめる作品だと思うので、ぜひ何度でも見ていただきたいですね。また劇場版では、裏側でリョーコやその同僚たちがどんなことをしていたのかも描かれていますので、その部分も含めて楽しんでいただけたら嬉しいです。
[取材・文:柴山夕日]