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「ひたすらに迷い続けて、いまだに迷っている10年だったのではないかと思います」──「文豪ストレイドッグス -迷ヰ犬達ノ音奏-」開催記念 バンドマスター・岩﨑 琢さんインタビュー

アニメイトタイムズ

写真:アニメイトタイムズ編集部

アニメ化10周年を迎える『文豪ストレイドッグス』の超本格劇伴ライブである「文豪ストレイドッグス -迷ヰ犬達ノ音奏-」が開催! 2026年5月4日には大阪公演がオリックス劇場にて、同年5月23日には東京公演がTACHIKAWA STAGE GARDENにて開催されます。

本公演にはシリーズ劇伴を務めた岩﨑 琢さんをはじめとした実力派ミュージシャンたちが集結。今回のために編成された布陣での生パフォーマンスや巨大スクリーンへの名シーン投影などが注目を集めています。

今回は公開に先駆け、本公演のプレミアムチケット特典のオリジナルパンフレットに収録されている岩﨑 琢さんへのロングインタビューの一部を抜粋してお届けします!

 

【写真】「文豪ストレイドッグス -迷ヰ犬達ノ音奏-」岩﨑 琢インタビュー

「そういう意味では、僕自身が“迷ヰ犬”だったんでしょうね」

──まずは「文豪ストレイドッグス」が10周年を迎え、これまでを振り返ってみてのお気持ちはいかがでしょうか?

岩﨑 琢さん(以下、岩﨑):10年は早いなぁ……と。もう10年なんですね。作業的な関わりで言えば11年。

いずれにせよ、10年といえば、子どもが生まれて小学生になるくらいの期間ですから……とにかく時間が経つのは早い、というのが正直な感想です。アニメ以外にも、舞台やゲーム、実写映画だったり……。「文豪ストレイドッグス」に関しては、その名がつく作品に様々な形で常々関わっているので……その意味では、あっという間の10年でした。

──10周年の節目に、シリーズ初の劇伴ライブ「文豪ストレイドッグス -迷ヰ犬達ノ音奏-」を開催することとなりました。この企画を最初に聞いたときはどのような思いでしたか?

岩﨑:「本当にお客さん来てくれるの?」というのが率直な感想でした。自分がプレイヤーとして出演することを考えると、あまりポジティヴになれず……お情けでやらせていただけるのかな、とか考えていました(笑)。

──劇伴制作について、数々の作品を手掛けている中で、「文豪ストレイドッグス」ならではのアプローチや、他作品との違いのようなものはあるのでしょうか?

岩﨑:そこを聞かれるのが一番つらいところなんですが、正直なところ、どうしても自分の中で未消化な部分もあって、他作品との違いがよくわかっていないところがあるんです。もちろん音楽としてですけど。

ちょうど第1シーズンの頃は“何をやっても良い”という感じで、オーダーも日常系やギャグ系の音楽ばかりという状態で……。「ああ、こういうアニメなんだ」と感じる一方で、「これは一体どこにどんな特徴をつけていけばよいのか」ということをずっと考え続けていましたね。

実のところ考えているうちに終わってしまったのが第1シーズンなのですが。そういう意味では、僕自身が“迷ヰ犬”だったんでしょうね。それからの10年間、今もなお迷い続けてフラフラしていますが(笑)。

──音響監督の若林(和弘)さん曰く「あまり枠を決めすぎると逆にやりづらくなってしまうので、比較的好き勝手にやっていただくことを意識した」といったことも伺っております。これについて岩﨑さんはどのように受け止めていらっしゃったのでしょうか?

岩﨑:実際、若林さんの気持ちはその通りだと思いますし、すごくわかります。そして僕自身、ものすごく尊敬している音響監督の一人なんですよ。しかし、こと音楽メニューということに限れば、やりにくい音響監督でもある(笑)。劇伴を発注するメニューシートに、すごく色々なことをびっしりと書き込んでくるんですよ。

さらにその内容も抽象的であるケースが多くて……シーンの説明やご自身の気持ちといった、思い入れや感情的な部分がすごく強くて、音楽としてどうして欲しいのかはまったく書かれていない(笑)。

本当であれば、それをしっかりと受け止めて、自分の中で咀嚼して、音楽のメニューとして落とし込まないといけないものなのですが、若林さんの頭の中で蠢いているものがそのまま僕のところに直接やってきてしまうから、「さあどうしたものか」とこちらも非常に悩むんです。

音楽メニューというのは、音響監督によってそれぞれ特色があるのは当然なんですけど、若林さんはとにかく文学的で右脳的。「これは音楽のメニューじゃなくて、小説のプロットです」と言ったこともありますね (笑)。

──お互いにリスペクトがありながらも、作品やものづくりへのアプローチが異なることに対し、様々な葛藤があったかと思いますが、岩﨑さんはそれを踏まえどのように「文豪ストレイドッグス」の音楽を作ってきたのでしょうか?

岩﨑:繰り返しになりますが、ずっと迷ってきたんです。ありがたいことに五十嵐監督も「岩﨑さんの好きなように作ってください」と仰るので、もう本当に好きに作るしかないのだけど、ただそれでもどこかにちゃんとした軸を持たないといけない……。完全フリーで好き勝手作ってしまうと、まったく当てようのない音楽しかできないので……。

そして、基本的には、その軸となり、強い強制力を持つものが音響監督のメニューであり、それに対して音楽家は、「すべて乗っかるか」「片足だけ乗っけるか」「指先だけ、いや、まったく無視するか」といったようなスタンスを決めないといけないんです。

そのスタンスがあまり定まらないまま第3シーズンまで来たのですが、シリーズを重ねてきたこともあり「よし、今度はとことん向き合ってみよう」と決めた第4シーズン、第5シーズンは……すっかり泥沼にハマってしまい……もがきましたね……。

──「文豪ストレイドッグス」の劇伴には、インストゥルメンタルの楽曲が多い一方で、特徴的なボーカル楽曲も印象的なものが多いと感じますが、これらボーカルの有無も音響監督である若林さんからの指示なのでしょうか?

岩﨑:実はそこは本当に好き勝手にやらせてもらった部分になります。メニューで指示されている場合もあれば、指示されていないのに歌をつけたのもあります。逆に歌ありの指示に対して歌を付けなかったものもあります。

例えば「Scarlet Sky」。当たり障りのなく流れるジャズでいいじゃない、という話になるのですが、僕としては「太宰はきっと織田作や安吾と語らっていた日々を幸せに感じていて、おそらく織田作のこともずっと考えているんだろうな」と感じていて、“太宰の頭の中で流れ続けている音楽”として作ったのがこの「Scarlet Sky」です。

劇伴の立場で何を言っているんだと一部思われてしまうかもしれませんが、「音楽でどこまでストーリーにコミットできるか」というのをずっと考えて音楽を作ってきました。しかし、それがなかなか難しかったのが本作でもあったんですけど、その中でも「Scarlet Sky」は、それでも少しはコミットできた曲なのではないかと思っています。

あと、コミットできたという意味では、インストゥルメンタル楽曲ですが、映画「DEAD APPLE」の音楽として作った、「The Door」。この曲は元々メニューになかったんですけど、映画の中で描かれている「敦が自分の心の扉を開く」ということについて、このときはまだ開ききってはいないんだけど、その扉が開くときには、やはり音楽があったほうが良いんじゃないということで、勝手に作ったんです。

別に演出として使われないのであれば、それはそれで良いと考えていたのですが、ありがたいことに作品内でも印象的に使ってもらって、こうして今回のライブでも選曲して取り上げられていただいております。

──今回のライブの見どころなどを教えてください。

岩﨑:TVアニメだけでなく、映画も含めたラインナップから選んだ感じですが、ボーカルのくくりでまとめたところもあったりしますね。基本的には映像があるので、感覚としてはライブと言うより、サイレント映画と楽団みたいなイメージになると思います。特にゲストミュージシャンの見せ場が多い楽曲も少し意識しているところがありますね。呼んだからには働いてもらわないといけないので(笑)。

全体的に、アレンジはこれからみたいなところがあるので、詳しいことは現時点ではまだお話できないのですが、「Scarlet Sky」とか難しいんだよね。ストリングスには頑張ってもらわないと。あと「走れ敦!」も、もともとはジャズピアニストの松本圭司君に弾いてもらっていたのだけど、これ僕が弾くの?って感じで。

どうやって乗り切ろうか今から悩んでいます(笑)。あとはアレンジ次第ではありますが、バンド的な楽曲として「OP.19 No.3」とかは、どんな仕上がりになるか非常に楽しみです。

もちろん、すべての楽曲を全力で頑張りますし、頑張らないといけないのです。が……全曲難しいのもまた事実という……。

──最後に、会場に来ていただいた皆様に、バンドマスターからメッセージをお願いします。

あらためて10年を振り返ると、ひたすらに迷い続けて、いまだに迷っている10年だったのではないかと思います。だからこそ、舞台の上では迷わないように頑張りたいと思っていますが、やはり“迷ヰ中年達ノ音奏”ということで、舞台上でも迷い続ける中年の姿を見て、笑いながら、アニメ映像では奮闘する敦や仲間たちに熱く胸を打たれながら、生演奏による“文豪ストレイドッグスの音楽”を全力で楽しんでいただけると幸いです。

☆インタビュー全文はプレミアムチケット特典のオリジナルパンフレットでチェック

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