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親なきあと、重度自閉症の兄のいま。5年ぶりの面会での老いた姿に感じた切なさ、でも実は…障害者支援施設での暮らしぶり

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親なきあと、重度自閉症の兄のいま。5年ぶりの面会での老いた姿に感じた切なさ、でも実は…障害者支援施設での暮らしぶり

監修:井上雅彦

鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 客員研究員

5年ぶりに再会した兄が、痩せて小さくなったことが少し切なくて…

重度の自閉スペクトラム症と知的障害がある私の兄は、現在40代後半です。

昨年、オンラインの面会で久しぶりに兄の顔を見ることができたのですが、以前会ったとき(5年前)よりも痩せて小さくなっていました。私が子どものときは、7歳上の兄をとても大きく感じていたのですが…改めて年月の経過と老化を感じ、なんとも言えず切ない気もちになりました。

ですが、面会した日に兄のケース担当の方から現在の生活について、詳しくうかがえたので、私の感情が変化しました。なぜなら「入居する前よりも、兄は健康的な人生を送ることができている」と改めて感じたからです。

昔から偏食傾向がある兄。妹としては心配だけど私の母の考えは…?

というのも、兄は昔から偏食傾向があり、口にする料理の種類は限られていましたし、例えばフライドチキンは衣しか食べないなど、食べ方も独特でした。

当時そんな兄の食事事情を「仕方ない」とは感じつつも、(母はこれでよいと思っているのだろうか)(このままで大丈夫なのだろうか)と、妹として少し不安に思っていました。

しかし現在、私自身が親という立場になったので、偏食のある子どもの食事がどれだけ大変か、痛いほど分かります。

偏食のある子を見ていると、「食べない理由は味なのか食感なのか匂いなのか?」「年を重ねるうちに食べない理由が変化しているのでは?」「共に過ごす親に対して多少の甘えがあるのでは?」と、いろいろと考え込んでしまいます。

施設での生活が、健康に年を重ねていくことにつながっている。痩せたことは悲しむことではない!

現在、兄が入居している障害者支援施設では、障害のある利用者が快適な日常生活を送るためにさまざまな工夫がなされています。

そのうちの一つに、利用者の栄養管理があります。利用者は栄養士の管理のもと、個々の状態に合った食事の管理がされています。
昔は偏食があった兄。施設で暮らすようになり、施設での食事に変わると、偏食はかなり改善されたようで、食べられるものの幅が変わったと聞いています。もしかすると決まった時間に、施設のみんなで食事をするという生活への変化が影響しているのかもしれません。あのときの偏食は何だったのか?と拍子抜けします。

そんな生活の中でも楽しみはたまにあったほうが良いのではと思い、ときどき家族から施設に予め連絡をして、差し入れ(お菓子)を送るのですが、受け取ったときに満面の笑みで、周りに気づかれないように自分の部屋に持って行ったりするのだそうです(大袋よりも小分けのお菓子の方が、健康に影響もなさそうだし、職員から少しずつ本人に渡せるので良いのではと施設の方から助言があるため、そのようにしています)。

施設での生活についてケース担当の方から話を聞いているうちに、「施設にお世話になる前よりも食生活が改善し、健康に年を重ねていくことにつながっている。痩せたことは悲しむことではないのだ」と思いました。医療機関との連携や、食事の管理など福祉を受けられているお陰で、兄はここ最近大きな病気もなく、元気に過ごせています。

ほかにも、日常生活や、ときどき行われるイベントについても聞けました。
兄は毎日規則正しい生活を送ることができているようです。

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7時半に起床、はみがき、朝ごはん
9時に身支度(作業着に着替える)
10時から15時まで共同作業所で仕事
15時半に施設へ帰り、お風呂、普段着に着替えて自由時間
18時に夕食
19時半から20時に集まってティータイム
22時に就寝
(支援員さんが見回りをしているが、25時には必ず寝ているそうです)
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施設の方に、日常生活以外で行われるイベントについても聞くことができました。

茶話会を開くために利用者みんなでお菓子をつくったり、料理を楽しむ機会もときどきあるそうです。また、月に1回は必ずハイキングに出かけるなど、外の世界とのふれあいも大事にしていると教えてくださいました。

親なきあとの現在。「人が人らしく生きていけるありがたみ」を感じて

私の父と母は、想定していたよりも早くに亡くなりました。
母の持病が悪化してしまい、重度の知的障害のある兄を育てることが難しくなったときーーーー兄のこれからの人生を心配し、障害者支援施設に入所するための準備をしたわけですが、当時はまだ私は学生で、きょうだいとして「私も兄も、この先どんな生活が待っているんだ?」といった漠然とした不安は少なからずありました。

そんな時期を乗り越えて、兄が今の障害者支援施設に入所してから18年ほど経ちました。現在、それぞれ別の人生を歩んでいますが、お互いに合った環境で健康に過ごすことができ、久しぶりに会った際にはニコニコ笑って顔を合わせています。

母をはじめとする親戚が、ありのままの兄を受け入れて、陰でサポートし続けてきたお陰だと思います。
「人が人らしく生きていけるありがたみ」を感じ、自分の残りの人生を、「兄を支えてくれている方たちのお陰だ」と感じ、がんばって生きていこうと思えました。

執筆/スガカズ

(監修:井上先生より)
親と同様きょうだいも同じ家族としての支援ニーズを持っています。きょうだいのニーズは、障害種や程度によっても異なりますが、年齢によっても変化していきます。

きょうだいの立場からは、親なきあとに親と全く同じことをしてあげられるわけではないので、さまざまな悩みや葛藤も生じると思います。介護をされておられる方もいらっしゃいますが、互いに年齢を重ねる中で利用可能な支援サービスを活用し、無理のない距離感や生活のスタイルを考えていくことも大切かと思います。

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