「ディーン・フジオカ VS 最恐の半魚人」をバイオレンス満載で描くモンスター映画『オラン・イカン』見どころ解説
ディーン・フジオカ主演『オラン・イカン』日本上陸
ディーン・フジオカ主演のクリーチャー系ホラーと聞いて、一体どんな作品なのかと気になっていた映画ファンは少なくないだろう。シンガポール、インドネシア、日本、イギリス合作による『オラン・イカン』は、逆輸入的にブレイクしたマルチリンガルなイケメン俳優というディーンの偏ったイメージを覆すのに十分な、骨太なホラー作品に仕上がっている。
『太平洋の地獄』×『プレデター』×『大アマゾンの半魚人』
物語の主な舞台は、第二次世界大戦下のインドネシア近海。日本兵の斎藤(ディーン・フジオカ)とイギリス人捕虜のブロンソン(カラム・ウッドハウス)は鎖で足を繋がれ、日本へ向かう船内に拘束されていた。そこへ連合軍が奇襲攻撃を仕掛け、二人は命からがら無人島へと流れ着く。案の定いがみ合う両者だったが、海中に潜んでいた異形のモンスターに襲われ……。
兵士たちが密林で謎のクリーチャーに襲われるという設定は、誰もが『プレデター』(1987年)を想起するだろう。そして敵対する国の兵士の対立は三船敏郎とリー・マーヴィンの『太平洋の地獄』(1968年)を、UMA(半魚人)との接触という設定は『大アマゾンの半魚人』(1954年)をストレートに踏襲。過去に何度か映画化された「モロー博士の島」の設定を彷彿とさせる部分もある。
『プレデター』ではベトナム戦争の記憶が語られるが、本作は第二次世界大戦が時代背景にあるので、旧日本軍による植民地支配、非道な侵略行為など我々が顧みるべき暗い歴史も重要なテーマの一つだ。そして戦争という究極の矛盾・不合理の縮図であるはずの斎藤とブロンソンは、半魚人という未知の敵を前に共闘不可避となり、生き延びるための戦いを通して不可思議な体験をすることになる。
東南アジアのモンスター伝説をゴア描写満載のスラッシャー映画に
東南アジアのホラー作品には口承による民話や謎の動物が登場する寓話をベースにしたものも多いが、本作のタイトルにもなっている半魚人“オラン・イカン”はマレーの民間伝承がアイデアソースになっているそうで、実際に戦時中に日本兵がオラン・イカンを目撃したという報告もあったという。
監督のマイク・ウィルアンは東南アジアの文化をベースにした『大アマゾンの半魚人』を作るべく、戦争の悲劇や人間同士の絆、種を超えた家族愛、雄大な自然などをジャンル映画の枠に詰め込み、民話や神話といった人間が紡いできた物語をクリーチャーホラーとして描き直してみせた。
とはいえ堅苦しい作品というわけではなく、シンプルにUMAが大暴れするスラッシャー映画として十分に楽しめる内容。特殊メイクに安っぽいところはなく、あえてCGではなくボディスーツで演じられた半魚人が恐ろしさを増強している。なによりその殺しっぷりが秀逸で、いとも簡単に人体が破壊されるゴア描写は爽快感すらあり、凶暴ぶりを披露する中盤過ぎのあるシーンには思わず苦笑してしまう。
撮影の苦労が偲ばれる壮大なロケーションのおかげで、非常にバイオレントながらマイナスイオンすら放っていそうな本作。ディーンが日本刀アクションも披露するので、サクッと90分未満のモンスター~スラッシャー映画を浴びたい人はぜひ劇場に足を運んでみてはいかがだろう。
『オラン・イカン』は5月22日(金)よりシネマート新宿、池袋シネマ・ロサほか全国公開